151 アジャストメント (4+1=5点)

(2011年)

監督/ジョージ・ノルフィー、出演/マット・デイモン、エミリー・ブラント、アンソニー・マッキー

 主人公は上院選挙で当選確実と思われたときに恥ずかしい失態を演じて落選。失意の時に若手ダンサーと運命的な出会いをして一生を共にしようとすると、黒ずくめの男たちに邪魔をされる。彼らは人の運命を操る「アジャストメントビューロー」の配下。そのことを知った主人公はビューローが定めた人生を進むか、恋人を選ぶか?・・・。

 話は大仰だが、ビューローの男たちの行動はなんともショボくて笑っちゃうほどだし、なによりも肝心の主人公デイモンは未来の大統領はおろか若手有望政治家にすら全く見えないのが弱い。(ビューローはなんでこんな若造を、合衆国の運命を担う人物に選んだのか?・・・)但し、ヒロインのエミリー・ブラントは美人でモダンダンスも抜群で実に魅力的。これだけは大統領への道を捨てても一緒になりたい!というのを納得しちゃいます。

 ストーリーとキャラクター造形は弱いが、映像の美しさで+1点。

 

152 キング・オブ・エジプト(4+1=5点)

(2016年)

監督/アレックス・プロヤス、出演/ニコライ・コスター=ワルドー(ホルス)、ブレンドン・スウェッツ(ペック)、ジェラルド・バトラー(セト)、ジェフリー・ラッシュ(ラー)、コートニー・イートン(ザヤ)、チャドウィック・ボーズマン(トト)、エロディ・ユン(ハトホル)、ブライアン・ブラウン(オシリス)、レイチェル・ブレイク(イシス)

 遥かなる昔、エジプトで神々が人間を支配していた時代(!)・・・オシリスが息子のホルスに王座を譲ろうとした時に、突然、弟のトトが現れて、兄を殺害して王座を奪う・・・やがて、亡くなった恋人を生き返らそうとする若者がホルスに協力してトトに戦いを挑む。

 これはもう映画というよりスマホゲームの世界で、エジプトの神々が次々と登場してサクサクとストーリーが進む。神々の基本設定は概ね正しいのですが、この描き方ではどの神も好きになれないのが欠点。但し、美術デザインが素晴らしいのとCGの仕上がりの良さで+1点。

(蛇足)ザヤ役のコートニー・イートンのデカパイに注目。一方エロディ演ずるハトホルは“愛と美と豊穣と幸運の神”には相応しくなく、ミスキャスト。

 

153 96時間 リベンジ (6点)

(2013年)

製作/リュック・ベッソン、監督/オリヴィエ・メガトン、出演/リーアム・ニーソン、マギー・グレイス、ファムケ・ヤンセン、ラデ・シェルベッジア

 前作で息子を殺された犯罪組織のボスが復讐しようと国境を越え、イスタンブールを訪れた主人公一家に襲いかかる。前妻と共に捕らわれた主人公は絶体絶命の危機からどう脱するか?!・・・。

 ニーソンも最近はシリアス派からマッチョ派に転向した観があるが、アマチュア・ボクサーの経験があるので、結構アクションはさまになっている。前作の(予想外の)大ヒットで気を良くしたベッソンが今度は気心の知れたメガトンを起用して続編を製作。国家だの大義だのといったややこしいことは一切省いて、個人間の闘争に絞ったしたことで、スッキッリとした筋運びになっており、B級ながら意外と見応えのある出来栄えになっている。

(蛇足)可愛くない娘・マギーがここでは大活躍して少し見直しましたが、やせギスで華のないヤンセンはどうもいけません。ベッソンはなんでこんな魅力のない女優を起用するのか? なんとも根性悪の、別れた女房に未練たらたらでは、主人公の男が下がるではありませんか!

 

154 デビルクエスト  (5点)

(2011年)

監督/ドミニク・セナ、出演/ニコラス・ケイジ、ロン・パールマン、スティ−ヴン・キャンベル・ムーア、クレア・ホイ、クリストファー・リー

 十字軍に参加した騎士の二人は、戦いの実態に失望し、部隊を離れるが、帰路の途中で脱走兵として捕まり、魔女の疑いのある娘を人里離れた修道院へと送り届ける任務を命じられ向かうことになるが・・・。

 中世の城郭都市や教会の陰鬱で重苦しい雰囲気の描写はリアリティがあって秀逸であるが、ストーリーも又陰鬱で、 死人や悪魔などグロテスクな映像が多いのは観ていて不快感が増す。

 

155 エンド・オブ・キングダム (7点)

<2016年)

監督/ババク・ナジャフィー、出演/ジェラルド・バトラー、アーロン・エッカート、モーガン・フリーマン、アロン・モニ・アブトゥプール、アンジェラ・バセット、ロバート・フォスター

 英国首相が急死し、国葬に参列した各国首脳をテロが襲い、日・独・仏・伊・加5カ国首脳が犠牲となる。テロの黒幕は2年前米軍によって息子たちを暗殺された国際武器商人で、最終標的は合衆国大統領。超側近のSPは大統領を助けて懸命のサバイバルを図るが・・・。

  監督はイラン系、主役のバトラーは生粋の英国人ではあるが、これはアメリカのアメリカによるアメリカのための活劇映画。なにしろ、イギリスの王室(近衛連隊)、国防省、MI5,軍隊、警察までテロ組織に買収され、ロンドン中枢が破壊されるというからイギリス人はビックリであろう。(いくら映画の上とはいっても、こんな大規模なテロを仕掛けることが出来る武器商人なんているわけはないのですが!・・・)しかしロンドン中心部を俯瞰撮影し、そこで主要建築や橋が次々と破壊されるCGは映像的に見応えのある出来栄え。

 SPのバトラーは不死身でメチャクチャ強く、テロリストを片っ端から“粉砕”していく。大統領を助けて襲いかかる危機を次々と突破していくスピーディな展開は文句なしで、理屈抜きのスーパーアクション活劇として楽しめる。

 

156 リトルプリンス 星の王子さまと私 (8点)

<2015年)

監督/マーク・オズボーン、声の出演/ジェフ・ブリッジス(飛行士)、ポール・ラッド(王子)、ジェームズ・フランコ(キツネ)、ベニチオ・デル・トロ(ヘビ)、マッケンジー・フォイ(少女)

 誰もが知ってるサン=テグジュベリの「星の王子さま」であるが、果たしてプリンスは自分の星に帰ったのか?・・・これはその後日談を描いたファンタジー。

小説の世界はペーパークラフトの造形でストップ・モーション・アニメ、後日談の世界はCGアニメと使い分け、見事に融合させている。ペーパークラフトのプリンスはもちろん、CGアニメの少女と老いたる飛行士のキャラクター・デザインも秀逸で好感が持てる。

製作者や監督は原作を十二分にレスペクトすると共に、その一方で後日談は自由に物語を展開させて、大人でも見応えのある完成度の高さに仕上げている。画面が本当に美しいし、またハンス・ジマー(&リチャード・ハーヴェイ)の音楽がピュアで優しく美しい。

 

157 2ガンズ (6点)

(2013年)

監督/バラタザール・コルマウクル、出演/デンゼル・ワシントン、マーク・ウォールバーグ、ビル・パクストン、ポーラ・パットン、

 DEA潜入捜査官(デンゼル)と相棒(実は海軍情報部員=マーク)は麻薬組織の証拠固めの3百万ドルを奪うため銀行を襲うが、金庫にはなんと4千万ドルがあった。これはCIAの裏金で、麻薬組織とCIAから追われることになった二人は・・・。

 娯楽アクションと割り切れば、二人のキャラも立って、なかなか面白い作品に仕上がっています。近年のデンゼルはすっかりアクションスターに変身ですね。

 

158 64-ロクヨン 前編・後編 (6点―1点=5点)

〈2016年〉

原作/横山秀夫、監督/瀬々敬久、出演/佐藤浩市、永瀬正敏、三浦友和、綾野剛、榮倉奈々、夏川結衣、瑛太、吉岡秀隆、窪田正孝、緒方直人、坂口健太郎、柄本佑、芳根京子、烏丸せつこ、仲村トオル、小澤征悦、赤井英和、

鶴田真由、滝藤賢一、椎名桔平、奥田瑛二

 昭和64年、静岡県内で少女誘拐殺人事件が発生し、迷宮入りとなる。時効まであと1年となった平成14年、刑事部から転属し広報官となった主人公はマスコミとの対応に苦心するが、そのさ中、64年の誘拐事件を模倣した事件が発生する。そこに隠された意外な顛末とは・・・?

 人気ミステリー作家のベストセラー小説を映画化。映画をよく見れば本当の主人公は永瀬扮する被害者の父親なんでしょうが、佐藤扮する広報官が主人公となっているので、本省(警察庁)と現場の相克、現場トップの忖度主義と第一線の軋轢、現場の部署の縄張り争い〜〜といった警察内部の闘争や警察とマスコミの鬩ぎ合いがクローズアップされる。(原作でもそうなんでしょうか?)

 リアルに描いたつもりなんでしょうが、大いに疑問ありなのは、一つの県なのに、警察詰の記者クラブにあんなに多くの 記者がいるなんてありえない!しかも彼らは取材もせずにクラブの中に居座って警察に文句をたれるだけ。リーダー格の瑛太なんて完全に浮いてます。(まぁ最近の現実の記者たちの惨状を皮肉っているのか?)

従ってミステリーとしては事件解決の爽快感がない。すなわち主人公は真犯人に気づいても、それを証拠立てて立証できず、結局は暴力に訴えるしかない。これでは父親=永瀬に「あとは俺たちに任せろ」とタンカをきった示しがつかないではないか!(原作では犯人に“参りました!”とネをあげさせる立証がなされているのでしょうか?)

そして、話の展開や映像がとにかく暗い! 陰々滅滅として、映画を見る楽しみが湧いてこない。せっかくこれだけの豪華な俳優を揃えながら、なんとももったいない。その“もったいなさ“でー1点!

 

159 ナイトミュージアム2 (6点)

(2009年)

監督/ジョージ・レヴィ、出演/ベン・スティラー、エイミー・アダムス、ロビン・ウイリアムズ、オーエン・ウイルソン、ハンク・アザリア

 スミソニアン博物館の倉庫に送られたミュージアムの展示品を救い出すため、ラリーはスミソニアンへ飛ぶが、そこで又々大騒動が・・・。〜前作の大ヒットで、更に製作費をつぎ込んで続編を製作。アイデアはそのまま踏襲したため前作ほどの衝撃はないが、そこそこ楽しめる仕上がりになっています。新たに登場したキャラクターではエイミー・アダムス演ずるアメリア・エアハートが素晴らしい! キラキラと輝く瞳が印象的で本当に可愛い。(当時35歳というからビックリ!)

 

160 ワーテルロー (8点)

         

(1969年)

製作/ディウノ・デ・ラウレンティス、監督/セルゲイ・ボンタルチュク、音楽/ニーノ・ロータ、出演/ロッド・スタイガー、クリストファー・プラマー、オーソン・ウエルズ、ジャック・ホーキンス、ヴァージニア・マッケンナ、ダン・オハーリヒー、フィリップ・フォルケ

 1815年エルバ島を脱出し、再び皇帝の座に就いたナポレオンは対仏大同盟が成立する前に各個撃破を狙って12万の兵を率いて進軍。ベルギーのワーテルロー郊外でウエリントン公率いる英蘭連合軍11万と対決し、これを敗走一歩手前まで追い詰めるが、ブリュッヘル元帥指揮のプロイセン軍12万が到着し、一転ナポレオン軍は敗れ去ることになる・・・

 19世紀の欧州の命運を決めたワーテルローの戦いを、ボンタルチュク監督が圧倒的なスケールで描ききった作品で 一画面で10万人くらいいるのではないか!と思わせるほど硝煙立ち上る丘陵を埋め尽くす兵士、そして走りくる騎兵部隊の壮観は、映画史上に残るスペクタクルといえよう。最近のCGによるモブシーン(例えばロード・オブ・ザ・リング等)とは迫力が全く異なる。

イタリア・ソ連合作で、ソビエト陸軍兵士が大動員されているが、これを実現した大プロデューサー・ラウレンティスの剛腕にあらためて感服。

 

161 清須会議 (6点)

(2013年)

原作・・脚本・監督/三谷幸喜、出演/役所広司、大泉洋、小日向文世、鈴木京香、佐藤浩市、妻夫木聡、伊勢谷友介、坂東巳之助、篠井英介、剛力彩芽、中村勘九郎、浅野忠信、寺島進、松山ケンイチ、でんでん、中谷美紀、天海祐希、西田敏行

信長の跡目相続を決める清須会議の秀吉と勝家の虚々実々の争いを、三谷が歴史事実を踏まえつつ、独自の解釈で描いた作品。豪華な役者陣がそれぞれの役どころに収まり、特に大抜擢の大泉=秀吉が出色の演技で光っている。

 三谷は異色の時代劇コメディとして描いたわけであるが、監督自身がひとり悦に入って笑っている感じで、見るほうは(大泉の演技以外は)それほど笑えない。従ってこれだけの役者を揃えながら、映画というより、TVドラマ的な感じになってしまったのが惜しい。

 

62 チェンジ・アップ/オレはどっちで、アイツもどっち!? (6点)

(2011年)

監督/デヴィッド・ドブキン、出演/ライアン・レイノルズ、ジェイソン・ベイトマン、レスリー・マン、オリヴィア・ワイルド、アラン・アーキン

愛妻家で子煩悩で有能な、しかし少し人生に疲労を感じ始めた弁護士と、俳優としてはくすぶっているものの人生をエンジョイしている男・・・二人は大の親友で、お互いの人生に憧れて、ある夜人格が入れ替わると・・・。

かなり下品なギャグと映像連発のコメディでどうなることやら〜〜と思ったら、最後はハートウオーミングなハッピーエンド。終わりよければ全てよしか!

(蛇足)監督にうまく乗せられたか、美形レスリー・マンが大サービスしています。

 

163 サボタージュ (4点)

(2014年)

監督/デヴィッド・エアー、出演/アーノルド・シュワルツネッガー、サム・ワーシントン、オリヴィア・ウイリアムズ

 シュワちゃんがDEA特殊チームのリーダーで、No2がワーシントンとくれば、麻薬カルテルと壮絶な戦いのアクション巨編!・・・と思いきや、暗くジメジメとした、ミステリータッチの展開で、しかも二人はマシンガンッぶっ放すだけで派手なアクションは一切無し・・・のまさに期待外れの一編でした。

 

164 幸せの始まりは(4点)

(2010年)

製作・脚本・監督/ジェームズ・L・ブルックス、出演/リース・ウィザースプーン、オーウェン・ウイルソン、ポール・ラッド、ジャック・ニコルソン

 全米代表としてソフトボールに全てを捧げてきたリサは31歳になって代表から外されて、自分の人生を見つめなおし高給取りの大リーガーと同棲を始めるが、ひょんなことからダメ青年実業家と知り合い、心はふたりの間を揺れ動く・・・。

 名作「恋愛小説家」の監督ブルックスが、それから13年経って再びラブ・コメディに挑んだが、往年の切れ味は皆無(70という歳のせいもあるか?) 御本人のシナリオがダメだから、どの人物にも共感できない。何よりヒロイン・リサは相手のちょっとした一言に反発して二人の男の間を行ったり来たり・・・こんな女と付き合うと、ホントにくたびれるよなぁ!・・・と思ってしまう。演じるウィザースプンは演技派かもしれないが、ラブコメ・ヒロインとしては全く魅力なし。やっぱりこういう役は(若かりし頃の)メグ・ライアンが最高だな!

(蛇足)ジャック・ニコルソンが青年実業家の父親で登場。流石の貫録ですが、「最高の人生の見つけ方」から3年ですっかりメタボになっていました。

 

165 シャイアン (7点)

  

(1964)

監督/ジョン・フォード、出演/リチャード・ウィドマーク、キャロル・ベイカー、ジェームス・スチュアート、エドワード・G・ロビンソン、カール・マルデン、アーサー・ケネディ、ドロレス・デル・リオ、リカルド・モンタルパン、ギルバート・ローランド、サル・ミネオ、パトリック・ウェイン

 勇猛で誇り高いシャイアン族も荒涼たる居留地に移されるが、アメリカ政府は約束した支援を果たさず、困窮した彼らは居留地を脱出して遥か遠くの故郷を目指す。執拗に追いかける騎兵隊と戦い逃れるその旅は困難を極めるが、彼らは決して諦めないのであった・・・。

 ジョン・フォード71歳、最後の西部劇は巨匠の「免罪符」か?・・・白人たちの強欲・残忍・無慈悲を赤裸々にし、シャイアンの気高さと悲痛を正面から描き、かつて巨匠が描いた西部劇が(それらの殆どは傑作であったが)まさに虚構であったことを明らかにする。映画人や評論家の多くは分かってはいても、これまで正面から明らかにした映画人はいなかったのだから、やはりここに巨匠の真の偉大さがあるといえよう。

 画面のセリフのなかに、印象に残る言葉が多い。(脚本=ジェームス・R・ウエッブ=の冴えか!)

例えば・・・

・ポーランド移民の軍曹が「もう退役する」と、騎兵隊隊長のウィドマークに言う・・・「ポーランドではコザックが、ポーランド人をただポーランド人だというだけで殺す。ちょうど俺たちがインディアンをインディアンだと言うだけで殺しているように。アメリカ兵であることは誇りだったが、コザックであることに誇りは持てない」

・内務長官カール・シュルツ(エドワード・G・ロビンソン)がインディアンに冷酷な傷痍軍人の上院議員に言う・・・「我々がゲディスバーグで一緒に戦った時、君は黒人奴隷なんて見たこともなかったはずだ。それでもその人たちが人間らしく自由に生きられるということは、君にとっては片腕をも失う意味があることだったはずだ」。

(蛇足)

@逃れるシャイアンと行動を共にするクエーカー教徒の教師を演ずるキャロル・ベーカーが気高く美しい。この作品の2年前の「西部開拓史」から本作までが彼女が最高に輝いた時期だ。

A画面中に良識派のシュルツ長官がリンカーンの写真に向かって「君ならどう思う?」と問いかけるシーンがあるが、史実に基づけば、リンカーンもまた(黒人奴隷には理解があったが)インディアンに対しては無慈悲で、彼らの虐待や困窮を理解しようとはしなかったのである。この辺りはフォードの限界というか、とにかくアメリカ人にとって、リンカーンは神聖にして犯さざるべき神のような存在なのであろう。

 

166 柘榴坂の仇討 (6点)

(2014年)

原作/浅田次郎、監督/若松節郎、出演/中井貴一、阿部寛、広末涼子、高島政宏、藤竜也、中村吉衛門

 井伊大老の近習でありながら桜田門で殿を守れなかった主人公は切腹すら許されず、“下手人の一人でも殺せ!”との厳命を受けて、明治となった後も、懸命に下手人捜しに奔走するが・・・。

 史実とフィクションを巧みに融合した浅田次郎の短編を若松監督が格調高い作品に仕立て上げた。中井の侍ぶりが見事だし、広末の健気さが愛おしい。又、吉衛門が流石の貫録で、この3人のキャスティングが素晴らしい。

 

167 コードネームU.N.C.L.E  The Man from U.N.C.L.E.(7点)

監督/ガイ・リッチー、出演/ヘンリー・カヴィル(ナポレオン・ソロ)、アーミー・ハマー(イリヤ・クリアキン)、アリシア・ヴィカンダー、エリザベス・デビッキ、ヒュー・グラント(ウェーバリー)

 “ナポレオン・ソロ”とは、また実に懐かしい!・・・が、これは、あの0011ナポレオン・ソロ・シリ−ズのリメイクではない。ガイ・リッチーが全く新しい超オシャレなスパイ映画に仕立て上げた。冷戦のただ中の60年代という設定ゆえ、ITや超近代兵器も無く、腕と頭脳と度胸で勝負するスパイが小気味いい。登場する女性が、ヒロインからホテルのフロントに至るまで全て美人なのもいい。アンチ・ヒロインのデビッキが凄みのある色気で特に印象的。(次回作には七奈緒を使って!)

(蛇足)63年に「007・危機一発」の爆発的ヒットからスパイ映画が続々と登場したが、アメリカのTVで人気を博したのが「UNCLEから来た男=0011ナポレオン・ソロ」シリーズで、劇場版でも64〜67の4年でなんと8本も公開された。“どB級”ながら、ソロ=ロバート・ヴォーンとイリア・クリアキン=デヴィッド・マッカラム(本当はマコーラムと発音するらしい)のユーモラスな掛け合いと、軽いタッチの描写が結構面白く、今でも印象に残っている。日本語版吹き替えの、ソロ=矢島正明、イリア=野沢那智の声もよかったなぁ!

 

168 アイ・スパイ(4点)

監督/ベティ・トーマス、出演/エディー・マーフィー、オーウェン・ウイルソン、ファムケ・ヤンセン、マルコム・マクダウェル

(2002年)

これも60年代にロバート・カルプとビル・コスビーのコンビによる人気TVシリーズのリメイク。金はかけているんだろうが、面白さはTVシリーズに遠くおよびません!スパイものだか、コメディだか?・・・どちらにも中途半端な凡作です。

(蛇足)

監督はマ−フィー主演で「ドクター・ドリトル」を撮ったトーマス。コメディ・オンリーならよかったのですが、やはり切れ味の鋭さが身上のスパイものは不向きであったと言えましょう。ヒロインにファムケ・ヤンセンを起用したのもいけません。もっと華やかで色っぽい女優を起用すべきでした。

 

169 キラーエリート (6点)

(2011年)

監督/ゲイリー・マッケンドリー、出演/ジェイソン・ステイサム、ロバート・デ・ニーロ、クライブ・オーエン、ドミニク・パーセル

 ミッションに失敗し、クライアントの人質となった昔の同僚を救い出すため、「SASの切れ者たちを事故に見せかけて暗殺せよ!」というミッションを引き継ぐが、SASの組織も黙っちゃいない!・・・。これが初監督というマッケンドリーの演出は3人の役者を使いこなして、まぁ合格点といえましょう。それにしても、ステイサムが主役で、デ・ニーロが引き立て役とはビックリです。

 

70 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ (8点)

    

(1999年)

監督/ヴィム・ベンダース、製作/ライ・クーダー

ミュージシャン=(ボーカル)イブライム・フェレール、オマーラ・ポルトゥオンド、ビオ・レイバ、(ピアノ)ルベ−ン・ゴンザレス、(ギター)エリアデス・オチョア、コンバイ・セグンド、(リュート)バルバリート・トーレス、(ベース)オルランド・”カチャイート“・ロペス、(トランペット)マヌエル・”エル・グアヒーロ“・ミラバル、(ドラム)アマディート・バルデス、(パーカッション)ヨアヒム・クーダー(企画&ベースギター)ライ・クーダー、(指揮)ファン・デ・マルコス・ゴンサレス

 キューバ音楽に魅せられた米国の著名なギタリストのクーダーは、1996年にキューッバに赴き、地元ミュージシャンとタイトル名のレコードを製作してグラミー賞を受けるなど高い評判と人気を得た。2年後友人のベンダースはクーダーと共にキューバを訪れ、彼らの演奏を中心にドキュメンタリー・タッチの映画を製作。

 いやぁ、登場する(超)ベテラン・ミュージシャンたちの音楽が実に素晴らしい!特にイブライムと唯一女性のオマーラのボーカル=豊かな声量と歌唱力が圧巻。ルベーンのピアノも文句なしで、あらためてキューバ音楽の魅力に感動です。

ベンダースは音楽に彼らの人生を重ね合わせたかったのだろうし、その意図は理解できるが、音楽とドキュメントがどっちつかずで、中途半端感は否めない。クライマックスのカーネギーホールでのライブをもう少し盛り上げる演出があればと惜しまれる。

 

171 ゼロ・ダーク・サーティ  (8点)

  

(2012年)

製作&監督/キャスリン・ビグロー、出演/ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジェニファー・イーリー、ジョエル・エルガートン、ジェームズ・ガンドルフィーニ

 パキスタンのCIAビンラディン追跡チームに派遣された女性分析官マヤが派遣されるが捜索は困難を極め、同僚女性もテロの犠牲となり、一段と執念を燃やし、ついに隠れ家を突き止める。しかし確証がないと躊躇する上層部を説得し、監視開始後120数日を経て、ついにシールズが突入する・・・。

「ハート・ロッカー」の ビグローとマーク・ポール(脚本)のコンビが、関係者への綿密な聞き取り調査をもとに、“ビンラディン暗殺事件の舞台裏を描く。これまで「男の世界」を描いてきたが、本作では信念の女性分析官を主役に据えているが、チャンステインが起用に応えて好演。

愛国者ビグローの“アメリカ・ファースト”な視点からの作品であるが、そうした側面はさておき、終始緊迫感のある演出は見事で、158分の長尺を感じさせない。特に最後のドキュメンタリータッチの襲撃シーンは凄まじい迫力。

 ビンラディンを殺してもテロは無くならない!・・・目の前で両親を殺されるのを見た子供らは長じてテロリストとなってアメリカに復讐を誓うであろう。しかしアメリカも対テロ対策を決して止めることはない。

 

172 荒野のガンマン  The Deadly  Companions (5点)

(1961)

監督/サム・ペキンパー、出演/モーリン・オハラ、ブライアン・キース、スティウーヴ・コクラン、チル・ウィリス

 主人公イエローレッグは先を越された銀行強盗と撃ち合いになり、酒場女の一人息子を誤って銃撃してしまう。今はもう廃墟になった町にある亡き夫の墓に葬りたいと、危険をも顧みず敢然と出発する彼女を援護するため、エローレッグは彼女に付き添い、仲間二人も同道するのであったが・・・。

 名匠ペキンパーの映画第一作というので見てみましたが・・・役者が地味なら、ストーリーも、描写も地味で、8年後の大 傑作「ワイルドバンチ」の片鱗さえも感じさせてくれるものはありませんでした。ペキンパーは突然“化けたんですね。

 

173 第17捕虜収容所  (7点)

(1953年)

製作&監督/ビリー・ワイルダー、出演/ウイリアム・ホールデン、ドン・テイラー、オットー・プレミンジャー、ロバート・ストラウス、ピーター・グレイブス

 ドイツ軍第17捕虜収容所で、米軍の軍曹ばかりを集めた第4キャンプ。皆がレジスタンスを工夫する中で、せこい商売をしてひとり我が道を行くセフトンはスパイの疑いをかけられて、命の危険を感じて、必死でスパイを暴きだそうとするが・・・

 捕虜たちがドイツ軍の圧政の中、持ち前の前向きな明るさ、ユーモアと知恵と工夫で生き延びる様を丁寧に描く一方で、「犯人捜し」のミステリーも加え、“捕虜収容所”ものとしては、後年の「大脱走」と並ぶ秀作で、さすがワイルダー監督!といえよう。尚、どの役者も手を上げなかったほどの、ダーティな主人公を演じたホールデンは、この演技でアカデミー主演男優賞を獲得し、大スターへと駆け上っていく。

 

174 ズートピア  (7点)

(2016年)

監督/バイロン・ハワード、製作総指揮/ジョン・ラセター

 様々な動物たちが人間のように暮らす“ズートピア”・・・ウサギ族初めての警官となった主人公は張り切って着任したが 一人前とはみなされない。それでも頑張りやの彼女(!)は難事件に挑むがそこには恐るべき陰謀が・・・。

 擬人化した動物たちが大騒ぎするお子ちゃまアニメと思ったら大間違い!明るくユーモラスなディズニーキャラの裏にはアメリカの抱える問題がしっかりと描かれた社会派作品でもあり、一種のクライム作品でもあり、そして犯罪の黒幕に迫るプロセスは秀逸な探偵ものでもあり・・・大人が見ても手ごたえのある作品に仕上がっていました。恐るべし、ディズニーアニメ!

 

175 キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン (6点)

(2002年)

製作&監督/スティーヴン・スピルバーグ、音楽/ジョン・ウイリアムズ、出演/レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス、クリストファー・ウォーケン、マーティン・シーン、ナタリー・バイエイミー・アダムス

 実在の天才詐欺師フレンク・W・アバグネイルの自伝をもとにスピルバーグが製作した犯罪コメディで、パイロット(=副操縦士)になり済まして世界を巡り、その一方で小切手を偽造して銀行から巨額の金をだまし取るプロセスを軽妙なタッチで描きだす。その軽妙さをウイリアムズの音楽が後押ししている。

若き詐欺師=ディカプリオ、ちょと抜けてるが犯罪者を追う執念はスゴイ捜査官=ハンクス・・・この2人の起用がズバリ当たっているといえよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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