8日目(3月11日・水)

ローマ2日目

 ホテルの1階奥は中華レストランで、朝はそこが朝食(ブッフェ)の場となります。一通りの品が揃っています。特に生野菜があるのが有難い。

 今日は、私にとって今回の旅行のメダマ=「ヴァチカン博物館」です。オフ・シーズンでも結構混雑するとの情報なので、日本でネット予約をしておきました。(チケット€16に予約料€4=計€20ですが、チケット購入に並ぶことを考えればノープロブレムです。日本語音声ガイド€7も追加。)

 地下鉄A線のチブロ(ヴァチカン博物館)駅で降りましたが、その一つ手前のオッタヴィアーノ駅が正解のようです。朝9時前に入口前に到着しましたが、一般売り場には既に数十人が並んでいます。(これくらいなら並んでもよかったかも!)

 館内に入ると、エスカレーターが故障で、螺旋階段をグルグルと上がって屋上へ出ます。階段そのものが見事な作品と言えます。

 そこは「ピーニャの中庭」で、「ピーニャ」とは建物手前の大きな松ぼっくりのブロンズ像からきたものです。中央に大きな球体のオブジェがあります(=アルナルド・ポモドーロの1990年作品)

           

                                                                          (奥に松ぼっくりの像)                     (上から見たヴァチカン庭園)

 さぁ、中に入りましょう。此処からしてすでに豪華絢爛です!

      

 まずはピオ・クレメンティ美術館・・・ピウス6世とクレメンス14世の彫刻コレクション。「円形の間」の中央に巨大な石の円盤があり、床のモザイク画が見事です。

    

        

 八角形の中庭に出ると「ラオコーン」がありました。「ベルヴェデーレのアポロ」はアテネのアゴラにあったブロンズ像の模作。

        

                                 (ラオコーン)        (アポロ)                     (ヴィーナスとキューピット)

 余談ですが、「ラオコーン像」はロードス島の騎士団長の館にもありました。プリニウスはその著書「博物誌」で、ラオコーンの作者はロードス島の3人の彫刻家であるとしている。どちらが本物なのか、或いはどちらも本物のコピーなのか真偽の程は定かでないとか・・・。

(ロードス島のラオコーン・・・2010・12・10)

 石柩の彫刻も見事です。

  

そして、キアラ・モンティ美術館・・・ここはピウス7世の彫刻コレクション。ナポレオンがイタリア遠征の際に持ち帰った品々を返還してもらったのを機に創設されたもの。此処で一番有名なのがアウグストゥス像・・・妃リヴィアが隠居していたプリマポルタの別荘から1863年に発掘されたそうです。

「ベルヴェデーレのトルソ」(1世紀頃)は筋肉大好きのミケランジェロが絶賛した彫刻だそうです。膝まづいてポーズを決めている男性も逞しい筋肉の持ち主です。

      

(アウグストゥス) (ベルベデーレのトルソ)

 巡っていくと、「エジプト館」がありました。歴代教皇は競ってエジプト美術を収集し、ある篤志家の寄贈もあってエジプト以外では世界有数のコレクションとなったそうです。

    

        

 廊下を歩くと、天井も周りの壁面もゴージャスの一言に尽きます。 

      

「地図の間」、「タペストリーの間」の壁には、大きな地図やタペストリーがズラリとならんでいました。

    

 

 さぁ、楽しみにしていた「ラファエロの間」にやってきました。まずは「アテネの学堂」

      

 中央左の緋の衣がプラトン、その右の青い衣がアリストテレス、プラトンから左へ4人目の左を向いているのがソクラテス、階段左の下で片肘ついているのがミケランジェロ、その左3人横で、右を向いて本を読んでいるのがピタゴラス・・・だそうです。

 そして、ラファエロの遊び心が愉快なのは右端の柱近くでこちらを向いているのが、ラファエロ本人、反対の左手で白い衣を纏った美女が表向きはエジプト・アレクサンドリアの哲学者ヒュパティアですが、実は彼の恋人・フォルナリーナ(=パン屋の娘・マルゲリータ)なのです。

      

 余談ですが、↓下左がピッティ美術館(フィレンツェ)の「ラ・ヴェラータ」(=ヴェールを被る婦人)、そして右がローマ国立美術館の「フォルナリーナ」(=若い婦人の肖像)・・・これはラファエロが眠るパンテオンで、彼の死から60年後に発見されたそうで、ラファエロはこの絵とともに天国へ旅立っていったということなんでしょう。二人は互いに愛し合いながら、彼の後援者であったヴァチカンの枢機卿との義理で晴れて夫婦になることができないうちに、彼は37歳にして夭折してしまいました。右の絵が発見された時に彼女の指には指輪があったそうで、弟子たちが慌ててそれを消してしまったそうです。

  

 更に余談ですが、ヒュパティアは(350または370〜415)4世紀後半から5世紀にかけて、激動のアレクサンドリアで名声と人望の高かった新プラトン主義哲学者にして天文学者・数学者で、その際立った知性とともに美貌でも知られた。しかし彼女は厳格にして狡猾なアレクサンドリア総司教キュリロスと対立し、真理を探求する自己の信念を曲げずキリスト教への改宗を拒否し、キュリロス配下の修道士たちによって惨殺された。いわばキリスト教からは否定された人物なのです。

 ルネッサンスはそれまでのキリスト教が否定したギリシャ〜ローマに至る文化(=哲学や科学、芸術)を再評価したことにあったので、キリスト教の総本山に哲学者たちを総登場(ヒュパテイアをも含めて)させたこの絵は、まさにルネッサンス精神の真髄かもしれません。

 ・・・余談が過ぎましたが、ラファエロの間に戻りましょう。「学堂」以外にも実に素晴らしい壁画がいっぱいです。

      

      

 感動しながら移動していくと、「現代アート」の間がありました。ルネッサンスの最高峰を見た後では、気の抜けたビールみたいなものですが、下の2点だけは印象に残りました。(創造性はありませんが、アンディ・ウォーホルが芸術なら、これだって芸術ですね!)

    

 

 12時を過ぎたので、通りすがりのカフェルームでランチタイム。例によって時間節約のため“軽く”ということで、パニーニ&ピザパンとコーヒー。ところがこのパン2種が恐ろしくマズイ。神は飽食の戒めとして、見物者に試練を与えたもうたのだ!と、自らに言い聞かせて飲み込んだのでありました。

 いよいよハイライト・・・「システィナ礼拝堂」です。此処だけは撮影禁止なので、全面的にウイキペディアなど公開資料から画像をお借りします。堂内は大勢の人でごった返しています。多分毎日がこうなんでしょう。

(礼拝堂の東面と北面)

 左右の壁には当時の一流画家(とその工房)による聖書の物語が描かれています。

    

「モーゼの試練」        「キリストの洗礼」         「使徒の改宗」

ボッティチェリと弟子たち     ペルジーノと弟子        ギルランダイオ

  

「聖ペテロへの天国の鍵の授与」     「最後の晩餐」

ペルジーノ                  ロッセッリ

 天井はミケランジェロのフレスコ画です。名匠キャロル・リード監督1965年の映画「華麗なる激情」を思い出します。・・・教皇ユリウス2世(レックス・ハリソン)が、ミケランジェロ(チャールトン・ヘストン)に礼拝堂の天井にフレスコ画を描けと命じますが、ミケランジェロは気が進まず逃亡。教皇お気に入りの画家ブラマンテがラファエロを推薦するも、教皇はミケランジェロに執着し、彼を探し出す。そうして二人の我と我がぶつかりながら、教皇は侵略してきた外敵と戦って勝利し、ミケランジェロは天井画を完成させる・・・礼拝堂の大セットを組んで、ミケランジェロが真っ白な天井に描いて行く過程がリアルに映像化されており、興味が尽きなかったことが思い起こされたのでした。

 音声ガイドが「・・・ミケランジェロは聖書とダンテの神曲を完全に理解してこの傑作を完成したのです・・・」と言っています。見上げると、天地創造から始まる聖書の物語が展開されています。

    

(光と闇の分離)       (太陽と月の創造)        (大地と水の分離)

  

(アダムの創造)            (イヴの創造)

(楽園追放)

    

(ノアの燔祭)             (大洪水)               (ノアの泥酔)

 脇にも印象的な絵がいっぱい。特に筋肉モリモリの「リビアの巫女」がミケランジェロの面目躍如です。

  

(リビアの巫女)     (預言者ザカリア)

 そして、正面は「最後の審判」です。

 なんと素晴らしい!今まで数限りない名画を見てきましたが、これほど素晴らしいものはありません。二人して後方のベンチに腰掛けて、暫くの間じっと見続けたのでありました・・・。 9時に入って出てくると2時すぎ・・・5時間も楽しんでしまいました。

 

 外へ出ると、足は自然と「サン・ピエトロ大聖堂」へと向かいます。ところが広場に着いて驚いたのは!・・・↓下の写真の馬蹄型の円形をほぼ3/4をグルリと取り囲んで行列が出来ているではありませんか!

(ウイキペディアより)

 妻は「早くスペイン広場に行きたい!」と言うのですが、折角ここまで来て、大聖堂内に入らない手はありません。「あなたも随分我慢強くなったわねぇ」と妻に言われながら、ひたすら行列にならんで待ちました。

  

   

 1時間半待ってやっと入場です。なにしろカトリックの総本山ですから、敵対する一神教のテロリストが襲撃しないとも限りませんから、入場時の荷物検査は航空機なみで、しかもこの日は3台の検査機の1台が休止していたので、こんなに時間がかかったのでした。

  

 聖堂内に入ると、まずは「ピエタ」・・・6年前は目の前まで近づいてその大理石とは思えない滑らかな肌まで感じることができたのですが、なんと周りは透明ガラスで保護されています(以前、どこかの不心得者が狼藉に及んだため、保護することになったそうです。

  

 身廊からの眺め。中央祭壇の後陣の「聖ペテロの椅子」の上から光の輪が広がっています。中央の白鳩は「神」の使いです。

    

 偉大なる彫刻家ベルニーニの作品。天蓋は豪華にして格調高い。右は緋色の大理石の紋様を巧みに取り入れた衣が素晴しい。

    

 40分足らずで見終えて妻は「ピエタ以外は殆ど記憶になかったっから、やっぱり来て良かったワ!}と。 そのあと向かって左手の階段を降りると、衛兵の交代式をやっていました。これはラッキー!。このコスチュームはミケランジェロのデザインなんですね。

      

 さぁ、帰りはオッタヴィアーノ駅からスパーニャ駅へ。徒歩数分で「スペイン広場」です。夕方近くになっても大勢の人で賑わっています。しばらく階段に座って行き交う人々や馬車などを眺めていました。(ガイドブックには「ジェラート禁止」と書いてありますが、若い女性が何人か満足気な表情で舐めていました)

      

    

(バルカッチャの噴水はベルニーニの作品です)

 夕食は「フルヴィマーリ」・・・「歩き方」に出ていたトラットリアでホテルのすぐ近く。尤も「歩き方」では日曜休みでしたが、昨日(火曜日)も休みでした。

 店先に客引きがいました。陽気なおじさんで、「アル・パチーノに似てるよ」と言ったら、「ノー、トム・クルーズだよ!」って、返ってきました。席に着くとまずスパークリングワインがサービスされるのが嬉しいですね。スパゲティは大きなエビやアサリにムール貝がイッパイで、リゾットは米粒よりポルチーニが多いくらいで、どれも美味しかったです。(€49)

  

      

(スパークリングワインがサービス)   (生ハム盛り合わせ)     (シーフードパスタ)    (ポルチーニ茸のリゾット)

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