101 ブラック・スワン  (5+1=6点)

   

(2010年)

監督/ダーレン・アロノフスキー、出演/ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、バーバラ・ハーシー、ウィノイナ・ライダー

 内気で真面目なニナはニューヨークのバレーカンパニーに所属しているが、同じバレリーナであった母親の期待を一身に背負い、懸命にバレーに打ち込み、漸くプリマの座を射止めるが、仲間の嫉妬心等に悩み、次第に精神的に追い詰められていく・・・。

 いやぁ、ナタリー・ポートマンの“役者根性”に驚きました。完璧にプリマ・バレリーナを演じきっています。軽やかに舞う為に相当な減量を図り、バレーの猛特訓も行ったのでしょう。なるほどバレーはまことに見事ですが、当時まだ29歳の若さに拘わらずギスギスで、輝くような美しさは失せてしまっています。(それでもカメラは彼女の顔をアップで、執拗に追いかけ続けます・・・「レスラー」でミッキー・ロークの弛んだ肉体を正面から捉え続けたアロノフスキー監督ならではのカメラ・アイでしょうか!))

 洋の東西を問わず、名子役が一流スターに成長することは殆どありませんが、彼女はその稀有な例外で、本作でアカデミー主演女優賞を獲得し、名実ともにトップスターに登り詰めました。

 演出は終始暗く又重々しくて、観ていてちっとも楽しくなく、感動もありません。バレー映画というより、サイコホラーと言ったほうが適切かもしれません。ポートマンの熱演だけが取り柄と言えましょう。 ポートマンに敬意を表して+1点です。

 

102 ツナグ  (5点)

(2012年)

監督/平川雄一郎、原作/辻村深月、出演/松坂桃李、樹木希林、佐藤隆太、桐谷美玲、橋本愛、大野いと、遠藤憲一、八千草薫、仲台達矢、

 使者ツナグとは、一度(=一夜)だけ会いたい死者と(但し、死者が同意した場合のみ)会わせてくれる霊媒師のこと。その再会の場に立ちあうことで、現ツナグのたった一人の孫である主人公が成長し、やがてその使命を受け継いでいく・・・。

 映画ではよく見られる“ゴースト・ファンタジー”ものであるが、3つのストーリーで、よかったのは、2番めの女子高生2人の葛藤を描いたもの。あとの2つは素直すぎてヒネリがありません。およそ非現実的な設定なんですから、1つくらいはアッと驚くヒネリがあってもいいのでは。

 何よりもあの世から蘇った霊が、生身の人間と変わらぬ肉体(=質量)を持っているというのが、解せませぬ。やはり此処は見えるけれども「質量」は無いというほうが自然でしょう。

これじゃあ、3番目の話では、二人はベッドの上で一夜を過ごすことになるではありませんか!名作「ゴースト/ニューヨークの幻」では、ゴーストはあくまでゴーストだからよかったんです。

 松坂クンの、如何にも現代のよき若者らしい、ひたむきで心優しい演技が印象的でした。

 

103 ラウンド・ミッドナイト (7点)

(1986年)

監督/ベルトラン・タヴルニエ、音楽/ハービー・ハンコック、出演/デクスター・ゴードン、フランソワ・クリュゼ、マーティン・スコセッシ、ハービー・ハンコック、ロネット・マッキー、ウェイン・ショーター、ロン・カーター、トニー・ウイリアムズ、フレディ・ハバード

 サックス奏者のデイル・ターナーは新しいジャズの“ビーバップ”を提唱するが、ニューヨークの観衆の受けはイマイチで、パリの「ブルーノート」に新天地を求め、ジャズ仲間から暖かく迎えられる。建物の外には入場料を払う余裕のない駆け出しのイラストレーター・フランシスが漏れてくる演奏に耳を傾けている。彼はターナーを天才ミュージシャンとして崇拝しているのであった。ターナーは演奏は素晴らしいものの次第に酒に溺れ、見かねたフランシスは別れた妻に借金をして広い家を借りターナーの面倒を見るようになり、二人に生涯の友情が育まれ、やがてターナーはキッパリと酒を断ち演奏に打ち込むようになる・・・。

 伝説のピアニストのバド・パウエルの実話に基づいた物語。描写が少し淡々としすぎているのが難点ともいえるが、モダンジャズ・ファンにはもう堪らない作品。ハービー・ハンコックが担当した音楽に合わせて一流ミュージシャンが珠玉の演奏を披露してくれます。そして、デイル・ターナーを演じた本物のミュージシャンノデクスター・ゴードンのなんとも渋い演技が絶妙です。

 

104 女と男の名誉 (7点)

(1985年)

監督/ジョン・ヒューストン、音楽/アレックス・ノース、出演/ジャック・ニコルソン、キャスリーン・ターナー、アンジェリカ・ヒューストン、

 ニューヨーク・マフィアのプリッツ・ファミリーでドンに可愛がられ、殺し屋を務めるチャーリーはドンの孫娘の結婚式でラベンダー色のドレスを着た美人に一目ぼれする。ところがこの美人がとんでもない女で、プリッツ・ファミリーは危機に瀕する。組織をとるか、妻をとるかの選択を迫られたチャーリーは・・・?

 映画の黄金時代に巨匠ヒューストンが撮ったなんともゴージャスなマフィア映画。その雰囲気を高めるのがクラシック音楽を巧みに導入した映画音楽の巨匠ノース。ヒューストンの愛娘アンジェリカの凄味が印象的です。そしてヒロイン役のターナーもこの当時は輝くばかりに美しくて、チャーリーが一目ぼれするのも納得です。でも聡明な美人がなんでマフィアの金をかっぱらうのか?(しかも仕事の依頼主なのに!)そこは理解できませんでした。

 

105 ワールド・オブ・ライズ (6点)

(2008年)

監督/リドリー・スコット、出演/レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ、マーク・ストロング

 アラブ世界で身を呈してテロリストを追う現場工作員(=ディカプリオ)と、本部で衛星画像を見ながら指揮するCIA幹部(=クロウ)の活動をスピーディ&ダイナミックに描いたアクション作品。殺伐としたアラブ世界を舞台に、非情な男の世界を活写したところにスコット監督一流の映像美は感じられるが、ストーリーはありきたりで、ディカプリオの頑張りだけが印象に残る。 それにしてもラッセル・クロウは太りましたなあ!

 

106 英国王のスピーチ (8点)

(2010年)

監督/トム・フーパー、出演/コリン・ファース(ジョージ6世)、ジェフリー・ラッシュ(ライオネル・ローグ)、ヘレナ・ボナム=カーター(エリザベス妃)、ガイ・ピアース(エドワード8世)、デレク・ジャコビ(大司教)、ティモシー・スポール(チャーチル)

クレア・ブルーム(メアリー王妃)、イヴ・ベスト(シンプソン夫人)

 吃音に悩むヨーク公は妻の導きでローグの許を訪れ、矯正を受けるが遅々として進展しない。やがて父王の死後に後を継いだ兄のエドワードは2度の離婚歴のあるシンプソン夫人と許されぬ恋に落ち「彼女の支えなしには王の務めを果たすことが出来ない」と言い残して王位を放棄し、弟が図らずもジョージ6世となる。折しも欧州は風雲急を告げ、英国はヒットラー・ドイツに宣戦布告。王はスピーチによって国民に一致団結を訴えかけなければならないが、果たして・・・。

 実話に基づく感動の一編。それにしても、「クイーン」といい、英国映画界はまだ歴史となっていない近過去の王室をよくも赤裸々に描くことよ!と感心します。(ちなみに「クイーン」の主人公はジョージ6世の長女クイーン・エリザベスです)

 アカデミー・主演男優賞を得たコリン・ファースの熱演、そして何よりも吃音矯正師ローグ役のジェフリー・ラッシュの演技が見事で、又いつもは(?)アクの強い演技を得意とするヘレナが献身的な妃を上品に演じているのも印象的です。

 ジョージ6世を讃える反動として、兄のエドワードは相当のプレイボーイとして描かれていますし、シンプソンは同時に複数の男と遊んでいる性悪女として扱われています。理性があれば、エドワードを誘惑することはやはり慎むべきであったでしょうから、こう描かれても已むを得ないかもしれません。しかし歴史は繰り返すですね。このシンプソンを見てカミラ夫人はどのように思うのでしょうか?

 

107 キャプテン・フィリップス (5点)

(2013年)

 監督/ポール・グリーングラス、原作/リチャード・フィリップス「キャプテンの責務」、出演/トム・ハンクス、バーカッド・アブディ、バーカッド・アブディラマン、マイケル・チャーナス

 アメリカの貨物船がソマリア沖で海賊に乗っ取られ、責任感溢れる船長フィリップス(=トム・ハンクス)は優れたリーダーシップを発揮し、部下と共に知略を尽くして窮地を脱する・・・のかと思って観たのでありますが・・・なんのことはない、船長は小型脱出艇の人質となり、これをアメリカ海軍・“シールズ”が救出する・・・というお話でした。

 貨物船船長の体験実話を映画化したようですが、危険な海域を航行するというのに、日本船ならいざ知らず、アメリカ船が全くの無防備というのはちょっと解せません。船長はどこかの国民のように平和ボケだったのでしょうかと思ったりしてしまいます。

この話のキモは船長のリーダーシップではなく、アメリカは国民を救出するためならどんなことでも断固やりぬく、例えそれがたった一人であっても!と、僅か数人のゲリラ相手に戦艦を差し向け、最新鋭のハイテク兵器を駆使して敵をせん滅するのだ!・・・ということを表明した一種の国策映画ともいえましょう。自国民が何人拉致されようとも手も足も出ず、あろうことかその敵に利する行為を働く代議士がいるような国とは違うのです。

〜〜そんな風に余計なことを感じさせてくれるものの、映画そのものは期待に反して凡庸な作品でした。

 

108 ゼロ・グラビティ (6+1=7点)  

  

(2013年)

監督/アルフォンソ・キュアロン、音楽/スティーブン・プライス、出演/サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー

 スペースシャトル船外で、修理作業に当たるのはベテラン飛行士(=クルーニー)と、今回が初めてのミッションのストーン博士(=ブロック)。ロシアが破壊した衛星の破片がシャトルを襲い、その衝撃で宇宙の闇の中へ飛ばされた二人は奇跡の生還を遂げることが出来るのか?・・・。

 登場人物は略二人で、奇跡のサバイバル劇のストーリーは至ってシンプルであるが、とにかく映像が素晴らしい。「2001年宇宙の旅」からじつに45年、漸くそれを凌ぐ“宇宙スペース映像美”が登場したと言っても過言ではない。いったいどうやってこの無重力映像を撮影したんだろう?!と驚嘆するばかりである。

・・・実際はワイヤーアクションで撮影したそうであるが、だとすれば、本当に無重力空間を泳いでいるようにしか思えないサンドラ・ブロックの“モーション演技力”はなんとも素晴らしい。圧倒的な映像美で監督賞、撮影賞、作曲賞、視覚効果賞など6つのアカデミー賞を受賞したが、彼女に「モーション演技賞」を捧げてもいいくらいだ。(勿論そんな賞はありませんが、その意味で+1点)

 

109 マン・オブ・スティール (5点)

(2013年)

監督/ザック・スナイダー、出演/ヘンリー・カヴィル(スーパーマン)、エイミー・アダムス(ロイス)、マイケル・シャノン(ゾッド将軍)、ケヴィン・コスナー、ダイアン・レイン、ローレンス・フィッシュバーン、ラッセル・クロウ

 滅亡寸前のクリプトン星から、地球に送られた赤ん坊は優しい養父母の許で成長し、その超能力と自らの使命に目覚めていくが、そんな時、クリプトン生き残りのゾッド将軍が彼を追って地球にやってくる・・・「スーパーマン・リターンズ」から7年、装いも新たに登場した今回の“スーパーマン”は、彼の誕生の物語。

画面終盤のゾッド将軍との対決は、これでもかとCGを駆使してスピーディでダイナミックなシーンの連続・・・と言えば聞こえがいいが、これだけCGをやられると、逆に何の興奮も感動も生じません。二人してニューヨーク中をこんなに壊しまくって、それでいいの?、この大破壊で、いったいどれだけの人が死んだと思っているの?ロイス一人救ってそれでいいの?・・・と思わず突っ込みたくなってしまいます。スナイダー監督に、「300」(=スパルタ軍隊のペルシャに対する玉砕を描いた)のシャープな切れ味はありません。CGに頼った映画造りの行きつく果てを見たような気がします。  

110 イーオン・フラックス (6点)

   

(2005年)

監督/カリン・クサマ、出演/シャーリーズ・セロン、マートン・ソーカス、ジョニー・リー・ミラー

 2011年に或るウイルスで人類は滅亡寸前に追い込まれ、グッドチャイルドが開発したワクチンでごく少数が外界と謝絶したエリアで生き延びる・・・そしてそれから400年後、圧制を敷くグッドチャイルドに反政府組織モニカンが立ちあがり、最強の女戦士イーオンにグッドチャイルド・トップの暗殺を命じたことから予想外の展開が始まる・・・。

 韓国出身のピーター・チョンのTVアニメを実写化したものであるが、400年後の都市デザインがなかなかスマートに仕上がっており、この当時のCGもなかなかのもので、ストーリー展開も元がアニメにしては良く仕上がっています。監督経験浅いクサマ監督は意外と健闘しています。そして何よりも当時30歳のセロンがナイスバディで本当に美しく、アクションも素晴らしい。「モンスター」(2003年)でアカデミー主演女優賞を獲得してトップスターに上り詰めた後に、よくもこんなおバカアクション映画に主演したものです。彼女も又役者根性の塊と言えましょう。

 

111 新網走番外地 大森林の決斗 (6点)

(1970年)

監督/降旗康男、出演/高倉健、星百合子、宍戸錠、南利明、玉川良一、由利徹、山本麟一、今井健二

 

 有名シリーズを44年経って初めて観ました。降旗監督の職人芸的な演出が冴えて、娯楽作品としてはなかなかのもので、このシリーズで高倉健が大スターになった所以が分かりました。馬に乗って脱獄〜荒野の高台からSLを眺める〜列車から降りる〜藁に巻いたドスを手にしている(何処で手に入れたんだ?)〜悪党の本拠に単身殴りこむ〜数十人をメッタ斬り〜親分との対決では、何故か突然バックのSLが蒸気を吹き出す・・・西部劇と任侠ものをミックスした余りにも堂々とした臆面の無さはもうご立派と言うほかは無く、理屈なんぞはすっ飛ばして、健さんファンには堪らないシーンの連続でしょう。

 もう一つ特筆すべきは浅草で鍛えた喜劇陣、とりわけ南利明の芸達者ぶりで、冒頭の刑務所入所シーンはまさに名人芸。昨今のコメディアンとは較べものになりません。

 蛇足:高倉健は東映・東京で便利屋的に使われてきたが、会社が任侠路線に踏み切った「人生劇場・飛車角」(63年)から強い存在感を発揮し始め、「日本侠客伝」シリーズを経て、65年にスタートした、石井輝男=高倉健による「網走番外地」シリーズで、東映のトップスターとなった。

  耐えに耐えて最後に正義の怒りを爆発させるというパターンが日本人の心情にピッタリと合ったということなんでしょう。シリーズ10作を終えた後、68年からマキノ雅弘監督に変わって新シリーズがスタートし、72年まで8本が続く。新シリーズで一番メガホンをとったのが、降旗監督です。(それにしても8年で合計18本とは、まあよくも立て続けに出したもの!と感心する。それだけ人気があったということでしょう)

 

112 雷桜 (5点)

(2010年)

監督/廣木隆一、出演/岡田将生、蒼井 優、小出恵介、宮崎美子、時任三郎、池畑慎之介、柄本明、坂東三津五郎

 清水家を継いだ将軍の子・斉道には心の病いがあり、静養の為、家臣の故郷の瀬田村を訪れるが、そこで或る事件から野生の中で育てられた娘と運命的な出会いをし、身分を越えた恋に落ちるが、やがて彼は紀州徳川家を継ぐことになり・・・

 若い男女の悲恋模様はまぁ月並みなところであるが、瑞々しくも美しい“瀬田村”一帯の大自然の描写と蒼井の熱演は印象に残ります。

蛇足:史実をひも解くと・・・11代将軍・家斉の七男、幼名菊千代は“御三卿”のひとつ清水家当主を継いだが、元服後は斉順と名乗り、1816年(文化3年)紀州徳川10代藩主・治宝の婿養子に入り、1624年11代藩主となる。彼の次男が後に14代将軍・家茂となっており、映画の中で将軍・家斉が「紀州藩主となれば、やがて将軍職に就くこともあるやもしれん・・・」と言っていたのは半ばその通りなのである。⇒原作者・宇江佐真理がこの史実の一片からこの歴史悲恋小説を造り上げたことが分かります。

 

113 プレステージ (6点)

(2009年)

監督/クリストファー・ノーラン、出演/ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、スカーレット。ヨハンソン、パイパー・ペラーボ、レベッカ・ホール、デヴィッド・ボウイ

 二人の若手マジシャン、アンジャーとボーデンは修業時代から互いの力量を認め合っていたが、ある日「水槽脱出マジック」でアンジャーの妻が死亡。その原因がボーデンにあったことから、アンジャーは復讐を誓い、ここから二人の壮絶な確執が始まり、行きつくところまでいってしまう・・・。

 やられたらやり返す!といった二人の確執はどちらにも感情移入出来ない。最後のどんでん返しは、途中で伏線は仕掛けてあるとはいうものの、“そんなのあり〜っ?”という感じで、これではマジックでもはたまた科学でもないではありませんか!

ストーリーの流れは「時制」が往ったり来たりで、展開を複雑に見せるのは監督としては“してやったり”の演出なんでしょうが、かくも現在と近過去と過去が入り乱れると、観ていてくたびれて、こういう手法は私の好みではありません。

 

114 ファンボーイズ (5点)

(2008年)

監督/カイル・ニューマン、出演/サム・ハンティントン、クリストファー・マークエット、ダン・ホグラー、クリステン・ベル

ビリー・デイ・ウイリアムズ、キャリー・フィッシャー、

「スターウオーズ・ジェダイの復讐」から「エピソード1/ファントムメナス」の公開迄は(1983⇒1999)と、なんと16年もの空白があった。それを我慢できない“ウルトラおたく”4人組(+ギャル1人)は未公開フィルムを見ようと、カリフォルニアの「ルーカスランチ」迄のロングドラブを決行。途中では“トレッキアン”(=ツタートレックおたく)と遭遇し、大乱闘になったり、コールガールの罠に落ちたりと、シッチャカ・メッチャカの騒動をまき散らしながら、ついにルーカスランチに忍び込む・・・。日本人には笑えないギャグが満載の典型的な超B級コメディ。スターウオーズおたくには堪えられない珍品かもしれません。

 

115 アメイジング・スパイダーマン (6点)

(2012年)

監督/マーク・ウエブ、出演/アンドリュー・ガーフィールド、エマ・ストーン、リス・エヴァンス、デニス・リアリー、マーティン・シーン、サリー・フィールド

 前作から10年、監督もキャストも一新したスパイダーマンの新シリーズ。

「バットマン」とか「ディック・トレーシー」とか、“アメコミ”はダークトーンが多くて(おっと、スーパーマンだけは例外)、私的には好みではなく、サム・ライミ監督のスパイダーマン3作もその例外ではなかったのですが、本作は意外と楽しめました。スパイダーマンが高校生というのはビックリですが、青春ドラマっぽく明るく爽やかなトーンに仕上がってました。キャストもスパイダーマン=ガーフィールドは、トピー・マクガイアよりよかったし(それにしても29歳になって高校生役に違和感が無いというのもスゴイですね!)、ヒロイン役もデニス・リアリーがキルソテン・ダンストよりずっと上。

もう食傷気味のCGではありますが、スピーディで、歯切れのいい演出につい引き込まれてしまいました。これが監督2作目のウエブ監督なかなかどうして“たいしたもん”です。

 

116 舟を編む (7―1点=6点)

(2013年)

2012年の本屋大賞受賞の三浦しおん作品を映画化したもの。(原作未読)・・・「大渡海」という国語辞典を新たに編纂するため、営業部から移動した真面目で不器用な青年が、周囲の暖かい励ましの中で、途方もない膨大な作業をこなしながら成長し、10数年の歳月をかけて完成にこぎつける。〜〜それにしても辞書編纂がこんな大事業とは知りませんでした。

日本映画の良心を示したような作品。特にキャスティングが絶妙で、皆役柄にピタリと嵌っており、特に松田龍平は主人公になりきった入魂の演技宮崎あおいはじめ他の人の演技も素晴らしい。ただ、あまりにも嵌りすぎて予定調和というか、もともと地味なストーリーに更に意外性が無くなり、ドラマ性にかけててしまい、観ていて正直疲れました。 その分マイナス1点。

 

117 マダガスカル2 (7点)

(2008年)

監督/エリック・ダーネル、音楽/ハンス・ジマー、日本語版吹き替え/玉木宏、柳沢慎吾、高島礼子、岡田義徳、おぎやはぎ、アンタッチャブル

 「1」は見てませんが、これは実に面白い! 姿形もデフォルメされた4人(いや、4匹か!)のキャラが立っていて、脇役もまた素晴らしい。不死身のモーレツおばあちゃんが特に秀逸。ハチャメチャのストーリーですが、アフリカン・ラップ・ミュージック(そんなのあったっけ?)のリズムに乗せてノリノリでスピーディに展開するところが堪りません。エンタテインメントを極めたハリウッドでしか創造できないアニメです。しかもCGの画像が見事で言うことなしです。  

118 ランボー 最後の戦場 (6点)

(2008年)

監督&脚本/シルベスター・スタローン、出演/シルベスター・スタローン、ジュリー・ベンツ、ポー・シュルツ、マシュー・マースデン

 ミャンマーの川沿いの村でひっそりと暮らすランボー。軍事政権軍に連れ去られたアメリカ・ボランティアチームを救出すべく、躊躇する傭兵たちの尻を叩いてともに敵陣の真っ只中に忍び込む・・・。

 前作から実に20年ぶりとなるシリーズ第4作はスタローン本人が脚本と監督を兼ね制作にも加わった作品で、スケールは小さく、俳優陣も地味ではあるが、コンパクトに纏まった仕上がりになっており、スタローンの監督としての才能がなかなかであることを見せています。どこでロケしたか、ミャンマー密林地帯の雰囲気がよく出ており秀逸。

凄まじいばかりの山岳少数民族虐殺シーンでミャンマー軍事政権の非道ぶりを鮮明に描き出し、その一方でアメリカキリスト教ボランティア団体の独善的なお花畑状態も一刀両断。スタローンは“力なき正義はありえず”と言いたかったのでしょうか!

119 RED/レッド (5点)

   

(2010年)

監督/ロベルト・シュヴェンケ、出演/ブルース・ウイリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレン、 カール・アーバン、メアリー=ルイ−ズ・パーカー、ブライアン・コックス、リチャード・ドレイファス

 年金暮らしの元CIAエージェントが突然古巣から命を狙われ、昔の仲間(や敵)と組んで、真相を追求する・・・。

 ストーリーはハチャメチャであるが、原作はコミック・グラフィック・ノベルなので、それに目くじらを立てても始まらない.。しかし、それにしてもあまりにもいい加減すぎてちょっと興ざめ。豪華なキャスト(ちょっと昔のスターではあるが!)を揃え、個別のシーンでは冴えたところもあるし、ウィリスやカール・アーバン(CIA現役エージェント役)のアクションの切れ味もなかなかだけに残念。

 知性派女優のヘレン・ミレンが“一度こんな役をやってみたかったのぉ!”といったご機嫌の表情で、マシンガンを打ちまくっていたのが印象的です。

120 ラスベガスをぶっつぶせ(原題は「21」)  (5点)  

(2008年)

監督/ロバート・ルケティック、出演/ジム・スタージェス、ケイト・ボスワース、ケヴィン・スペイシー、ローレンス・フィッシュバーン、

 数学に図抜けた才能を持つMITの学生ベンは、教授に誘われ、学資稼ぎのため、チームで組めば絶対勝てる!という教授の理論に基づいてベガスに乗り込み、ブラック・ジャックに連戦連勝するが、監視室には教授を天敵と追い求める監視員がいて・・・

 “ベガス破り”の作品としてはスケールが小さく、タイトルはちょっと大袈裟か。素人には映画の題材としてはブラックジャックよりポーカーのほうが面白く、教授の作戦は“なぜ勝ち続けられるのか”殆ど理解できません。

 若者中心の出演者の中で、やはりスペイシーとフィッシュバーンが圧倒的な存在感で、作品をシメています。

 121 網走番外地 南国の対決  (6点)

 (映画はカラーですよ!)

(1966年)

監督/石井輝男、出演/高倉健、田中邦衛、大原麗子、吉田輝雄、千葉真一、嵐寛寿郎、谷隼人、由利徹、三原葉子、河 津清三郎

出所した橘を迎えた大槻(田中)から手渡されたのは、新親分の破門状。前親分の死の真相を突き止めるべく、大槻とともに沖縄に向かった橘を待っていたのは・・・。

シリーズ第6作はそのタイトルが「南国の対決」というからビックリ。沖縄返還は1972年なので、当時はまだアメリカ統治下で、健さんがパスポートをスられて戸惑うシーンなど、歴史の流れを感じさせてくれます。

 石井監督の演出も手馴れたもので、お決まりのストーリーが流れるように展開していきます。若者二人(大原&谷)が離れ小島に連れ去られピンチという時に、何故か?!突然鬼寅親分(嵐)が現れて、颯爽の大活躍!。細かな理屈は捨て置いて、当時のファンもこのマンネリを大いに喜んだのでしょう。

 嵐寛、吉田、三原は監督にとって新東宝以来の仲間で、本シリーズで彼らを起用し続けた監督の義理人情はいいですね。(もっとも、だったら三原をもう少し綺麗に撮ってやらんかい!と思うのですが・・・)

122 あ・うん  (6点)

(1989年)

監督/降旗康男、出演/高倉健、板東英二、富司純子、富田靖子、宮本信子、山口美江、真木蔵人、三木のり平、大滝秀治

 昭和12年。中小企業の社長・門倉と真面目なサラリーマン水田はなぜかウマが合う20年来の親友。水田が東京へ転勤して家族ぐるみの付き合いが再開。門倉と、水田の妻は互いに秘めたる想いを抱きつつ、男二人の濃密な交際が続いていくうちに戦争の足音が忍び寄る・・・。

 向田邦子の作品としてはそれほどの出来とも思えないが、まぁ、“大人のファンタジー”と考えればいいでしょう。職人・降旗が健さんと富司の魅力を存分に引き出し、 特に17年ぶりのスクリーン登場となった富司がなんとも魅力的。板東英二の思い切った起用といい、キャスティングはなかなかだが、但し、水田の娘(富田)の恋人役=真木蔵人は完全なるミスキャスト。(とても当時の帝大生には見えません!)

木村大作のカメラが描き出す四季の移り変わりがじつに美しく、この“大人のおとぎ話”に花を添えている。

蛇足: この作品を(TVで)見た2ヶ月程後の15年新年にフジTVの特別番組=三谷幸喜の「オリエント急行殺人事件」を見たら、”主犯”の何やら騒々しいおばさんがい    てはて、このおば(あ)さんは誰やらん?とよく見れば、なんと富司純子ではありませんか!・・・冷静に(!)考えて見れば、「あ・うん」から25年も経過しているの    だから当然なのでありますが、やはり時の流れの”非情さ”をつくづくと感じたのでありました。(ちなみに富司純子さんは、1945年12月生まれなので、現時点で    69歳であります)

123 藁の盾 (5点)

(2013年)

監督/三池崇史、出演/大沢たかお、松嶋菜々子、藤原竜也、岸谷五朗、山崎努、永山絢斗、余貴美子、本田博太郎

最愛の孫娘を惨殺された財界の大立者・蜷川は犯人殺害に10億円の賞金をかけた。出頭した犯人を警視庁まで護送すべく任務を帯びた5人が10億円欲しさに犯人を狙う人たちを排除して警視庁までたどり着けるのか?

 大胆な着想の木内一祐の傑作小説を、“ケレン派”の三池が演出したとあって大いに期待したが、それは見事に裏切られた。ホームランかと思ったら、途中で失速して方向を失いファール・・・といった感じ。否、そもそもキャステイングが失敗。大沢では凄腕SPの感じが出ず、松嶋もまた家政婦然としてシャープなSPの雰囲気にあらず。しかも護送中2度も犯人を自由にして、あっさりと餌食になってしまう・・・これでなんで警視庁選り抜きのSPといえるのか!犯人も藤原ではアブノーマルな気色悪さが出てこない。私なら、大沢⇒堤真一、松嶋⇒柴咲コウ、藤原⇒劇団ひとり・・・あたりにしますね。

 とにかく折角の好題材を得ながら、脚本がなってないのが致命傷で、見ていて展開にいらいらしてしまう。ハリウッドなら断然面白い作品に仕立てたでしょう。

 蛇足・・・日本人ならたとえ10億円積まれても、(ほんの少数はでたとしても!)こんなに沢山の人が殺人に向かうことはないでしょう。そこが一番リアリティがないところです。  

 

124  ワイルドギース (8点)

1978年)

監督/アンドリュー・V・マクラグレン 、出演/リチャード・バートン、ロジャー・ムーア、リチャード・ハリス、ハーディ・クリューガー、スチュワート・グレンジャー、フランク・フィンレイ、ジャック・ワトソン

 アフリカの某国でクーデターが発生。銅鉱山権利確保のために雇われた傭兵50人が囚われた首相を救出すべく現地へと向かう。無事救出し、脱出しようとしたが、思わぬ事態が・・・

 封切りから36年経過して見ても、いやあ面白い!。傭兵ものの大傑作。ストーリーは面白いし、戦闘シーンも迫力満点。(CGなんか無い時代ですから、爆破シーンなど段取りの良さと演出のキレの良さが文句なし!)

また、親子の情愛も泣かせてくれます。理想主義者の黒人指導者が黒人嫌いの傭兵(クリューガー)と交わす議論も娯楽映画とは思えないほど秀逸。

細かいところでは、遠征前の“地獄の特訓”で、リーダーたちが一般傭兵の先頭に立って特訓に励むシーンなど、これならにわか仕立ての傭兵軍団でも皆りーダーを信頼し、一致団結するだろうと納得させてくれます。

この前も、後も“凡作”の多い、マクラグレン生涯唯一といっていい傑作です。

 

125 007/ドクター・ノオ (7点)

1963年)

監督/テレンス・ヤング、音楽/モンティー・ノーマン、出演/ショーン・コネリー、ウルスラ・アンドレス、ジョセフ・ワイズマン、 バーナード・リー、ロイス・マクスウェル、アンソニー・ドーソン、ジーナ・マーシャル

 ご存知007の記念すべき第1作。ほぼ50年ぶりに見ましたが、いやぁ、やっぱり面白い。まず極めつけのタイトルシーンとそこに流れる「ボンドのテーマ」・・・モンティ・ノーマンのスコアは今聴いても新鮮です。ポップ系のタイトルデザインも凝っています。これはモーリス・ビンダーのデザインです。余談ながら映画の黄金時代はタイトルデザイン専門のアーティストがいて、それだけで飯が食えたもんなんです。代表例が「ウエストサイド・ストーリー」や「ニュールベルグ裁判」をデザインしたソウル・バス。

 で、MI6のオフィスに颯爽と現れたボンド=コネリー・・・いやぁ、格好いいこと! そのスタイリイッシュな背広姿がなんとも言えません。ダンディズムと男の色気が完璧に体現されています。Mもいます。Qも登場、もちろんマネーペニーも。当時36歳のペニー=ロイス・マクスウェルが艶やかです。・・・こうして見るとその後何十年と続くシリーズの骨格は第1作で 完成していることがわかります。さすがテレンス・ヤング。

 ストーリーの前半はディテクティブ・タッチで進行しなかなか好調ですが、肝心の終盤になるとB級のチープさが現れてやや興ざめ。予算が少なくヤング監督を以てしてもこれが精一杯だったのかもしれません。

それにしても手下にボンドの暗殺を命じたドクター・ノオは自分で捕まえておきながら、どうしてボンドを殺してしまわなかったのでしょうか?・・・等々ツッコミどころは満載ですが、そこはそれ、あまり深く追求しないようにしましょう。

 〜〜という訳で、前半2/3は8点、後半1/3は5点・・・総合7点です。

 蛇足:初代ボンドガール=ハニー・ライダー=ウルスラ・アンドレスのダイナマイト・ボディは今見ても凄い。しかし私的には、ミス・ターロー(=ボンドに遊ばれて最後に警察に突き出される気の毒な!敵方の女スパイ)を演じたジーナ・マーシャルが一番良かったです。  

 

126 ワイルドスピード/スカイミッション (7点)

(2015年)

監督/ジェームズ・ワン、出演/ヴィン・ディーゼル、ポール・ウオーカー、ジェオソン・スティサム、ドウェイン・ジョンソン、ミッシェル・ロドリゲス、ジョーダナ・ブリュースター、タイリース・ギブソン、クリス“リュダクス”ブリッジス、エルサ・パタキ、カート・ラッセル

 ヴィンとポールの凄腕ドライバーが“暴走”を重ねる度に世界中で大ヒットして、これでもう第7弾。(このうち何作かは見ています) 彼らのチームも出世して、単なる凄腕ドライバーから、いつの間にやら、政府機関から頼みごとを受けるご身分に! 

 出演俳優もぐっと豪華になって、謎の政府機関のボス・MR.ノーボディはなんとカート・ラッセル(それにしても歳をとったもんだ!)、そしてシリーズ最強の敵役=前作で再起不能になった弟の仇打ちを期するデッカード・ショーは、今やB級アクション映画の帝王ジェイソン・ステイサム。帝王を招いたからには見せ場を!・・・というわけで、ワル知恵はヴィンの上を行くし、殴り合いになっても互角の勝負。見ていてどうやって決着をつけるんだろう?と心配になってきます。  

 これまでのジャスティン・リンに代わって初めてメガフォンをとったワンはシリーズの雰囲気をよく踏襲して歯切れのいい演出で、究極のハチャメチャストーリーを上手にまとめてエンディングへと運んでいます。(こうしたジャンルに細かい点はあれこれ言うべきではありません) とにかくカーが空を飛び、高層ビルを突き抜け、スーパー・カーが次々とオシャカになっていきます・・・訳知り顔に言うなら、今の世の中の閉塞感をぶち破るカタルシスとして、人気を博しているということでしょうね!

 蛇足:シリーズ最初から主人公を支えてきたブライアン役のポール・ウオーカーが撮影中に自ら招いた自動車事故で死亡しましたが、急きょ実弟を代役に起用して、破たんの無い画面を造り上げています。ウオーカーは取り立てて個性のない俳優ですが、アクションは抜群の切れ味で、本作でも崖から墜落するバスの屋根に這い上がって疾走し、崖の縁へとジャンプするシーンが印象的でした。合掌!

 

127 サドン・デス (7点)

(1995)

監督/ピーター・ハイアムズ、出演/ジャン・クロード・ヴァン・ダム、ハワード・ブース

 〜〜アイスホッケーの試合を観戦に副大統領が訪れたドーム・スタジアムをテロリスト集団が襲い、彼を人質にして、政府に脅しをかける。拉致された娘を救うべく防火責任者のダレン(ヴァン・ダム)はたった一人で闘いに挑む・・・

典型的な“ダイハード”物であるが、才人ハイアムズは抜群の演出で、手に汗握るサスペンスいっぱいの作品に仕上げており、ヴァン?ダム主演=B級映画とちょっと馬鹿にして見始めたのを反省しました。  

 

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