さて、パランスの場合と同じようなことが最近、98年のアカデミー授賞式でも起きた。70才になったジェイムズ・コバーンが「Affliction」(監督・ポール・シュレイダー、主演・ニック・ノルティ)の悪役の演技で助演男優賞を初受賞。表彰会場で名前を呼ばれるや、万雷の拍手に称えられ、若い美人の細君(5番目だとか!)を横に颯爽と立ち上がったコバーンの満ち足りた笑顔が何とも印象的であった。(尤も最近ではリューマチで悩んでおり、歩行もままならぬとのことであるが・・・)

 

ジェイムズ・コバーン(JAMES COBURN)

                      1928年、ネブラスカ生まれ                                                                

サムネイル  サムネイル

長身痩躯、長い手と長い足、ネアンデルタール人のそれを細長くしたような顔立ちに何処となくユーモラスな雰囲気が漂い、独特の存在感がある。

  デビューして二作目の60年「荒野の七人=The Magnificent Seven」(監督・ジョン・スタージェス、主演、ユル・ブリナー、スティーヴ・マックィーン)でぶっきらぼうなナイフ使いの名手として曲者揃いの七人の中で早くもその個性を発揮、以降集団活劇の貴重な存在としての地位を築く…61年「突撃隊=Hell is for Heroes!」(監督・ドン・シーゲル、主演・スティーヴ・マックィーン、ボビー・ダーリン、フェス・パーカー)、TVシリーズの「コンバット」(主演・ビック・モロー、リック・ジェイソン)、63年「大脱走=The Great Escape」(監督・ジョン・スタージェス、主演・S・マックィーン、ジェイムス・ガーナー、リチャード・アッテンボロー)といった作品である。(「大脱走」では最後迄ナチの追求を逃れて、見事脱出に成功する数少ない一人という儲け役)

  One of themからやがて人気を確立して主役へと登る軌跡は「大脱走」仲間のチャールズ・ブロンソンとよく似ており、66年「現金作戦=Dead Heat on a Merry- go -round」(監督・バーナード・ジラード、共演・カミラ・スパーヴ、そして売り出す前のハリソン・フォードがチョイ役で出ている!)で初の主役を張る。どう見ても色男とは程遠いのに(!?)何故か次々と寄ってくる女達を調子よく騙しながら、銀行強盗を企む希代の詐欺師を調子良く演じて十二分にその個性を発揮している。

続いてブレイク・エドワーズ監督のイタリア戦線・戦争コメディ、「史上最大の脱出作戦=What did you do in the War、Daddy?」(音楽・ヘンリー・マンシーニ)、そして代表作(?)となるコミックスパイアクション「電撃フリントGO!GO作戦=Our man FLINT」(監督・ダニエル・マン、共演・リー・J・コップ、音楽・ジェリー・ゴールドスミス)といずれもそのとぼけたコミカルなキャラクターを大いに発揮して、この66年に大ブレークである。(電撃フリントは67年に第二作「アタック作戦=in like FLINT」が出たが、ゴードン・ダグラス監督の演出が不冴えで、シリーズ僅か2本で終了となった。)  この他、

68年「太陽を盗め=Duffy」(監督・ロバート・パリッシュ、共演・ジェイムス・メイスン、ジェイムス・フォックス、スザンナ・ヨーク…海洋王からの強盗作戦コメディ)

69年「殺人美学=Hard Contact」(監督・S・リー・ポゴスティン、共演リー・レミック、バージェス・メレディス、リリー・パルマー、スターリング・ヘイドン)

73年「シーラ号の謎=The last of Sheila」(監督・ハーバート・ロス、共演・リチャード・ベンジャミン、ダイアン・キャノン、J・メイスン、ラクエル・ウェルチ…ハリウッド内幕物風殺人スリラー)

75年「戦争のはらわた=Cross of Iron」(バイオレンス派の巨匠サム・ペキンパー監督が敗色濃いロシア戦線に於けるドイツ軍の葛藤を活写、共演・マクシミリアン・シェル、センタ・バーガー、J・メイスン)

と、イメージ的にはB級乍ら、結構スターを揃えた作品で主役を張っているのだ。

しかしこれらの主役より寧ろNo.2の役処で、70年「夕陽のギャングたち=Giu la testa todesmerodie=A fistful of dynamite」(セルジオ・レオーネ監督のマカロニウエスタン、主演・ロッド・スタイガー、音楽・エンニオ・モリコーネ)、75年「弾丸を噛め=Bite the bullet」(リチャード・ブルックス監督が今世紀初頭の馬による大陸横断レースを雄大に描いた異色西部劇、出演ジーン・ハックマン、キャンディス・バーゲン、べン・ジョンソン、J・マイケル・ヴィンセント)が傑作として印象深いのである。これは主役を向こうに回した曲者的役割においてこそ、やはり彼の個性が生きるからであろうか。

顔の割には(!)意外と悪役は少なく、63年「シャレード=Sharade」(監督・スタンリー・ドーネン、出演・オードリー・ヘップバーン、ケーリー・グラント、ウオルター・マッソー、ジョージ・ケネディ)でオードリーを狙う 3人組の一人(G・ケネディのほうがより恐いか!)

76年「大いなる決闘=The last hard man」(監督・アンドリュー・V・マクラグレン、主演・チャールトン・ヘストン)では元保安官の主人公へ復習を図る凶悪脱獄囚。 そしてぐっと時をおいて93年「天使にラブソングを2=Sister actU  back in the habit」(監督・ビル・ヂューク、主演・ウーピー・ゴールドバーグ)で主人公デロリス(=ウーピー)の足を引っ張る、意地悪な学園理事長といったあたりか。

 ともあれ‘98アカデミー授賞式での少し肥えて貫禄もついた白髪・白髭の颯爽たる風貌を見るに、今後大物悪役としてもっともっと活躍してほしいと思った次第である。

追記  

 コバーンは、残念ながら、2002年11月18日に亡くなった。最後の作品はブエナ・ヴィスタの「スノードッグ」(監督・ブライアン・レヴァント、主演・キューバ・グッティングJr.)のマウンティンマンであった。

 私の見た彼のラスト作品は99年の「ペイバック=Payback」(監督・ブライアン・ヘルゲランド、出演・メル・ギブソン、マリア・ベロ、グレッグ・ヘンリー、コバーン、クリス・クリストファーソン)・・・メル演じる主人公はどうしようもないチンピラ・ワル。とても観客が感情移入できるようなキャラクターではない。そこで観客を引きつける為には主人公のキャラクターに一工夫がいる。

 先ず、奪った挙句に相棒に騙し取られた金は自分の分しかペイバックを求めないというふうに筋を通させる。そして、それすら返さない組織に正面からたち向かい次第に組織の上層部の巨悪へと挑んでいく。ケチな悪事をはたらくことしか出来なかった、 しがないワルがどうしてこんなにクレバーで度胸があるのか?、なんともマカ不思議!・・・といった展開となる。

 そして話の中盤から登場する組織のNo:2がコバーン。せっかくコバーンを出しておいてNo:2というのが気に入らないが、このコバーンがというと、枯れたなかにもなんともダンディな雰囲気に黄金時代のハリウッドを体験したグッド・センスが感じられて、チョッピリ嬉しい気分にさせられたことであった。

(ちなみにNo:1役はクリス・クリストファーソン。その姿を見て、あの「コンヴォイ」から随分と時間が経ったんだなあ!と実感させられたことであった。)

コバーンさんのご冥福をお祈りします。  合掌。

 

NEXT→  シネマトップへ

 

inserted by FC2 system