ゲルト・フレーベGERT  FROBE)  本名Karl-/Geraint Floever  

                   1913年、ドイツ/Saxony生まれ、1988年没                                  

007シリーズが黄金期に入った第3作「ゴールドフィンガー=Goldfinger」(監督・ガイ・ハミルトン、共演・オナー・ブラックマン)のゴールドフィンガーはシリーズ敵役中で最も印象の強い存在といえよう。恰も触れる物全てを金に替えた、ギリシャ神話における小アジアのフリキア王・ミダスの如き黄金狂で、しかもシリーズを通しての敵たる世界最大の犯罪組織・スペクターとは全く無縁の悪漢であるところがいい。

なにしろフォートノックス(米国の金貯蔵庫)に原爆を落としてアメリカの金を不胎化してしまおうという発想が斬新且つユニークだ。演じたフレーベは巨悪に徹して、凄み・貫禄文句無しで、まさに絶妙のキャスティングである。

  生っ粋のドイツ人たるフレーベは当然というか役柄の殆どがドイツ人で、しかもドイツ人の杓子定規で、融通の利かない処をからかった描写をコミカルに堂々と正面から演じきるところがサスガ!と感心させられる。(生真面目に考えるなら、祖国への侮辱と、憤然として出演を拒否しても不思議ではないところだ)

65年「素晴らしきヒコーキ野郎=Those magnificent men in the fling machine」(監督・ケン・アナキン、出演・スチュアート・ホイットマン、ジェイムズ・フォックス、サラ・マイルズ、ジャン・ピエール・カッセル、石原裕次郎、ロバート・モーレイ)の、飛行機に関して全くのド素人乍ら、教本片手に部下を叱咤激励、ドイツ人に不可能は無いとばかりに無謀・果敢に飛行操縦に挑戦するフォン・ホルスタイン大佐役などはその最たるものである。

コミカルなタッチの作品としてはこの他、68年「チキ・チキ・バン・バン=Chitty chitty bang bang」(監督・ケン・ヒューズ、出演・ディック・ヴァン・ダイク)のボンバースト男爵、69年「モンテカルロ・ラリー=Monte Carlo or bust」(監督・ケン・アナキン、出演・トニーカーチス、ピーター・クック、ダドリー・ムーア、ブールビル、ランド・ブッツアンカ) のシッケル役などがある。

60年「怪人マブセ博士=Die 1000 augen des Dr..Mabuse」(監督・フリッツ・ラング、出演・ドーン・アダムス、ペーター・ヴァン・アイク)、61年「怪人マブセ博士の挑戦=Im stahlnetz des Dr. Mabuse」(監督・ハラルド・ラインル共演・レックス・バーカー、ダリア・ラヴィ)、62年「怪人マブセ博士の審判=Das testament des Dr. Mabuse」(監督・ウエルナー・クリングラー、共演・センタ・バーガー、ウォルフガング・プライス=マブセ) のマブセシリーズの他、ドイツ映画を中心に92本程の出演作品がある。

  ついでながら、「ゴールドフィンガー」で、彼の手下、黒尽くめの衣装で、被っていたブラックハットを回転投げして相手を倒すキラー「オッド・ジョブ」を演じたハロルド坂田は出番は少ないものの、ボスの手下役としてその印象の強さは、後の「ジョーズ」=リチャード・キールにひけをとらないと言えよう。(彼は1920生まれで、1982没。この作品を契機にプロレス界からスクリーンに転じ、その後14本の作品に出演している)

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