ゲイリー・オールドマンGARY  OLDMAN)   本名Leonard  Gary  Oldman

                    1958年、イギリス、ロンドン生まれ                                                        

・97年「エアフォース・ワン=AIR FORCE ONE」(監督・ウォルフガング・ペーターゼン、出演・ハリソン・フォード=大統領、グレン・クローズ=副大統領、) で大統領専用機をハイジャックして米国に脅しをかける冷酷非情なロシアのテロリストのリーダー、イゴール・コルシャノフ(・・・まさにアイスマンといった感じの冷酷・非情な役作りは、これまでいろんな役者が演じたテロリスト達の演技の中でも出色といえよう)

97年「フィフス・エレメント=The fifth element」(監督・リュック・ベッソン、出演・ブルース・ウイリス、ミラ・ジョボビッチ、イアン・ホルム、クリス・タッカー) の悪徳武器商人・エマニュエル・ゾーグ(・・・これはベッソン監督が自分の思い通りの映像美・技術をスクリーン上に実現させたという感じの壮大なSFX作品ながら出来栄えは×。監督の為すにまかせ、金に糸目をつけなかった製作者がエライ!というべきか。尤も全編コケオドシ風の映画・・・ローランド・エメリッヒ風のタッチも見受けられる・・・だけに、芸達者ゲイリーの柄にはちょいとフィットせずの感あり! でもまあ「レオン」で一躍、彼をスターダムに押上げたベッソン監督のご指名だけに、本人としても致し方ないところか)

・98年「ロスト・イン・スペース=Lost in Space」 (監督・スティーヴン・ホプキンス、出演・ウイリアム・ハート、ミミ・ロジャース)のDr.ザカリー・スミス(・・・かつてのTV人気番組「宇宙家族・ロビンソン」を随分と金をかけて映画化。金属生物等のSFXは見事乍ら、ストーリーは途中からダレて、終盤のタイムパラドックスはもう不可解の極み。善良そのものの(!)W・ハート=ロビンソン船長に対して、悪知恵のカタマリで、狡猾、卑怯、破廉恥、それでいて一寸憎めないところもあるドクター・スミス…そんな役処をゲイリーはワサビを利かせつつ軽妙に演じた。)

〜〜と、又もオールドマンかというくらいに、立て続けに話題のヒット作品で主人公に対峙する敵役を演じた。

やや小柄で、英国人らしい目鼻立ち、ちょいとホモっぽい雰囲気も漂わせて…と一寸見には、それほど強烈な個性を感じさせないが、その演技力は素晴らしい。79年British Rose Brudfordカレッジで演劇学を修め、80年代はじめから舞台で頭角を現し、

・82年「Remembrance」(監督・コリン・クレッグ、主演・ジョン・アルトマン、アル・アシュトン)の脇役で銀幕にデビューするや、2作目の86年「シドとナンシー=Sid and Nancy」(監督・アレックス・コックス、共演・クロエ・ウエッブ…今や伝説のバンクロックグループ、セックスピストルズのベーシスト、シド・ビシャスとその恋人、ナンシーの恋愛と破滅を描いた異色青春音楽映画の佳作、相手役・ウエッブはこの名演技でアメリカ映画批評家協会・主演女優賞を獲得)で24才にしていきなり主役に抜擢されるや、これに応えて主人公・シド役を見事に熱演。

 続いて、

・87年「プリック・アップ=Prick up your ears」(監督・スティーヴン・フリアーズ、共演・アルフレッド・モリーナ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ…禁じられたホモセクシャルの愛と悲劇的結末を描いた異色作)

・88年「トラック29=Track 29」(監督・ニコラス・ローグ、共演・テレサ・ラッセル、クリストファー・ロイド…鉄道マニアの夫に満たされぬ妻の前に現れた若者を巡る幻想サスペンス)と地味乍ら充実した玄人好みの秀作で存在感を発揮し、その活躍の場を英国から米国へと広げていった。

・88年「クリミナル・ロウ=Criminal law」(監督・マーティン・キャンベル、共演・ケヴィン・ベーコン、カレン・ヤング、…連続殺人容疑者=ベーコン=の弁護についた弁護士と被疑者の葛藤を描いた犯罪サスペンス)

・90年「ステート・オブ・グレース=State of Grace」(監督・フィル・ジョアノー、主演・ショーン・ペン、エド・ハリス・・・ニューヨークのアイリッシュ・ギャングの葛藤を描いた作品。製作者と監督はなんでこんな結末しかない作品を作ろうとしたのか全くもって不可解である。しかしゲイリーの、薄汚く無鉄砲で、それで何処となく憎めないプレゼンスが秀逸。狂気を秘めた演技は、後のスタンフィールド捜査官(=「レオン」)を彷彿とさせる。

・90年「ローゼンクランツ と ギルデンスターンは死んだ=Rosencrantz and Guildenstern are dead」(監督・トム・ストッパード、共演・ティム・ロス、リチャード・ドレイファス=ハムレット…これは英国映画で、シェイクスピアのハムレットの中でちょっと名前が出てくる、彼の学友2人にスポットを当てて奇想天外なストーリーを展開)

・90年「理由なき発砲=Chattahoochee」(監督・ミック・ジャクソン、共演・デニス・ホッパー、フランセス・マクドナルド)と、何れもどちらかといえば“知る人ぞ知る”異色作においてその実力を遺憾無く発揮している。

  そして91年、オリヴァー・ストーン監督の問題作(・・・というよりケネディ暗殺の真相について、彼なりの疑惑を提示して世論を引っ掻き回しただけとも言える・・・) 「J F K」 (出演・ケヴィン・コスナー=ギャリソン・ニューオルリンズ地方検事役、シシー・スペイセク=同妻役、ジャック・レモン、ウオルター・マッソー、トミー・リー・ジョーンズ、ケヴィン・ベーコン、ジョー・ペシ、トーマス・ミリアン、ドナルド・サザランド、ベン・キングスレー、グレン・フォード)では、ストーン監督が集めた、皆んな如何にも怪しい雰囲気がイッパイの曲者揃いの豪家キャストの中で、暗殺者(?)リー・ハーヴェイ・オズワルド役を射止た。

・92年、F・コッポラ監督の意欲作「ドラキュラ=Dracula」(共演・アンソニー・ホプキンス=ヘルシング教授、ウィノナ・ライダー、キアヌ・リーヴス…シナリオは原作者・ストーカーの意図に忠実に構成し、コッポラ監督が自らの映像美学を更めて世に示す為に製作したような印象だ) では、「恋するドラキュラ」役で又々新境地を開く。

(余談ながらコッポラ監督はこの余勢を駆って94年になんとロバート・デ・ニーロをあの人造人間に仕立てて「フランケンシュタイン」を撮っている)

・93年「トゥルーロマンス=True romance」(監督・トニー・スコット、出演・クリスチャン・スレイター、パトリシア・アークエット、デニス・ホッパー、ヴァル・キルマー、ブラッド・ピット、クリストファー・ウォーケン…クエンティン・タランティーノの脚本が生きるパワフルなバイオレンスアクション

・93年「蜘蛛女=Romeo is bleeding 」(監督・ピーター・メタック、共演・レナ・リオン、アナベラ・シオラ、ロイ・シャイダー=珍しや悪役で、ちょいと冴えないマフィアの親分役・・・まさに女郎蜘蛛の如き女マフィア・モナに絡め獲られるように、破滅へと陥ちていく悪徳刑事ジャック。その悪と正義、女々しさと勇気の狭間で揺れ動く心の襞(ひだ)を、ゲイリーは見事に表現し、ストーリーのディテールは矛盾だらけで支離滅裂に近いシナリオをカヴァーして、印象に残る作品に仕立て上げたといえる。又モナを演じたリオンの怪演!も強烈なインパクトを残した―彼女のこの体当たりの演技がその後の出世に繋がらなかったのが惜しまれる!)

  そして94年リュック・ベッソン監督の名声を確立した「レオン=Leon」(主演・ジャン・レノ、ナタリー・ポートマン…当時13才、5年後にスターウオーズ/エピソード1のクイーン・アミダラでは殺し屋レオンを追う、サディスティックで、すぐにキレる、狂気のDEA麻薬捜査官ノーマン・スタンスフィールドを熱演。オールドマンも又この作品で、演技派として不動の地位を築いたといえる。

同じ94年「不滅の恋/ベートーベン=Immortal Beloved」(監督・バーナード・ローズ、共演・ジェローン・クラッペ、イザベラ・ロッセリーニ)ではちょっと趣きを変えて、秘めたる恋と芸術に苦悩する楽聖ベートーベンを演じている。

95年「告発=Murder in the first」(監督・マーク・ロッコ、主演・クリスチャン・スレイター、ケヴィン・ベーコン…合衆国に正面から戦いを挑む弁護士とアルカトラスの囚人との友情を描いた傑作)、次に97年にはベッソン監督が製作した「ニル・バイ・マウス=Nil by mouth」(主演・レイ・ウィンストン、チャーリー・クリード・マイルズ)で、脚本を書き、メガフォンをとるという多才ぶりを発揮している。

そして01年「ハンニバル=HANNIBAL」(監督・リドリー・スコット、主演アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア)では、レクター博士を不倶戴天の仇と追い詰める邪悪の大富豪メイスン・ヴァージャー役。〜大金持ちのドラ息子としての若かりし頃に、麻薬で恍惚状態のところをレクターにけしかけられて、自ら顔の生皮を剥いでしまい二目と見られぬ無残な容貌になったという設定だけに、タイトル・ロールに名前がなければ絶対に誰だか分からないメ−クアップで登場。  

殆んど椅子に座るか寝たままの無表情の演技でもあり、これなら彼でなくても(誰でも)いいといえる一種のトンデモ役である。しかし名前に拘った(?)スコット監督の起用に喜んで応じた感じで、原作の邪悪なイメージを彷彿とさせる独特のセリフ廻しに才人オールドマンの片鱗が覗われたのではある。 (もっともこれは彼のせいではないが、メークは思ったほど凄惨ではなくて、“恐い物見たさ”の観客にはちょいと物足りなかった。)

ゲイリーは2000年を超えてもまだ43才で、今後イギリスを代表する実力派(クセモノ・演技派!)スターとして更にその名を高めていくであろう。

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