ケヴィン・ベーコンKEVIN  BACON)

                    1958年、米国、フィラデルフィア生まれ                                  

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つんと尖った意志の強そうな鼻、鋭い目(深く演技する目!)で、一寸出るだけでも主役を喰ってしまう程の存在感を示す。そのクセ者振りは今やイギリスのオールドマン(奇しくも同年生まれ!)と双璧であるといえよう。しかしそのベーコンも最初は気のいい(オキラクな)若者といった役処からのスタートで、そこには現在のしたたかな演技派の片鱗すら見えないところが面白いといえる。

デビューは78年「アニマルハウス=National lampoons animal house」(監督・ジョン・ランディス、主演・ジョン・ベルーシ、ティム・マティスン、ジョン・ヴァーノン、トム・ハルス、ドナルド・サザーランド)…ランディスの演出が冴える、ハチャメチャ度200%の青春学園コメディで、ベルーシの破天荒な演技にはただもう呆気にとられるだけ。ここでのベーコンはベルーシに蹂躪される優等生グループの末席に属し、タイトルクレジットでも最末尾にやっとその名前が出てくる程度である。 そしてこの青春・青年路線は、

・73年「ニューヨークの恋人=Hero at large」(監督・マーティン・デヴィッドソン、主演・ジョン・リッター、アン・アーチャー)

・79年「結婚ゲーム=Starting over」(監督・アラン・J・パクラ、主演・バート・レイノルズ、ジル・クレイバー、キャンディス・バーゲン)

・81年「泣かないで=Only when I laugh」(監督・グレン・ジョーダン、主演・マーシャ・メイスン、クリスティ・マクニコル、ジェームズ・ココ、ジョーン・ハケット…これはニール・サイモンの脚本による名作だ)

・82年「ダイナー=Diner」(監督・バリー・レヴィンソン、主演・ミッキー・ローク、スティーヴ・グッテンバーグ)を経て (この間の80年、チョイと毛色が変わって、血みどろホラーの「13日の金曜日」…監督・ジョーン・S・カニンガム、主演・ベッツイ・パルマー、エイドリアン・キング・・・なんていうのにも顔を出している)

そして遂に、84年の「フットルース=Foot loose」(監督・ハーバート・ロス、共演・ロリ・シンガー、ジョン・リスゴー…中西部の田舎町を舞台に頑迷固陋な大人達に反抗する若者達の青春ドラマ) で主役をつかむ。

これで向こう(米国)では人気に火がついたか、その後青春路線の主役が続くようになる。

・85年「クイックシルバー=Quicksilver」(監督・トム・ドネリー、共演・ジェイミー・ガーツ)

・87年「グレート・ストリーム=White water summer」(監督・ジェフ・ブレックナー、共演・ショーン・アスティン)

・88年「ハリウッドに挑戦=Big picture」(監督・クリストファー・ゲスト、共演・エミリー・ロングストレス、ジェニファー・ジェイソン・リー)

・88年「結婚の条件=「Shes having a baby」(監督・ジョン・ヒューズ、共演・エリザベス・マクガヴァン、アレック・ボールドウィン)

・89年「トレマーズ=Tremors」(監督・ロン・アンダーウッド、共演・フレッド・ウォード、フィン・カーター・・・ネヴァダの砂漠地帯のノンビリした田舎町を突如襲った地中のモンスターが地表を波立たせて民家を壊す様は迫力満点のSFXの快作で、ケヴィンはモンスターに立ち向かう陽気なアンチャン、ヴァレンタイン・マッキーを元気一杯に演じている)

・91年「クイーンズロジック/女の言い分・男の言い訳=Queens logic」(監督・スティーヴ・ラッシュ、共演・リンダ・フィオレンティーノ、ジョン・マルコヴィッチ)

・91年「パイレーツ/この恋火気厳禁=Pyrates::SAM and ARI are getting onlikea house on fire」(監督・ノア・スターン、共演・キラ・セジウィック)

・93年「アフリカン・ダンク=The air up there」(監督・ポール・マイケル・グレイザー、共演・チャールズ・ギトンガ・マイーナ)…と。

 その一方で、88年「クリミナルロウ」(…G・オールドマンの項で掲出)で弁護士(=オールドマン)と渡り合う連続殺人犯容疑者・マーチン・セイル役を演じ、これが彼の本領発揮となるクセ者演技派路線の始まりとなる。

・90年「フラットライナーズ=Fratliners」(監督・ジョエル・シューマーカー、出演・ジュリア・ロバーツ、キーファー・サザランド…医学生たちの臨死体験の恐怖を描く

・91年「J F K」(…G・オールドマンの項で掲出、ケヴィンは同性愛者と見込まれて、謎の実業家クレイ・ショウの館へ誘われる海兵隊員ウイリー・オキーフ役で存在感を示す)

・92年「ア・フュー・グッドメン=A few good men」(監督・ロブ・ライナー、出演・トム・クルーズ、デミ・ムーア、ジャック・ニコルソン…海兵隊基地で起きた殺人事件の真相を巡る軍事法廷での闘い。ホットな弁護人・ダニエル・カフィー中=トムと対決する、検察側・ジャック・ロス大尉=ケヴィンのクールな演技が印象的である。

・94年「激流=The river wird」(監督・カーティス・ハンソン、主演・メリル・ストリープ、デヴィッド・ストラザーン…ラフティングを楽しもうとした一家と脱走犯との闘い―激流に敢然と挑む知性派・メリルの身体を張った奮闘と、そして脱獄犯・ウエイド=ケヴィンのクールで不気味な怖さでサスペンス満点)・・・名優・メリルと渡りあったこの悪役の演技は、ケヴィンを役者として一段と飛躍させたことは間違いない

・95年「アポロ13=Apollo13」(監督・ロン・ハワード、出演・トム・ハンクス、ゲイリー・シニーズ、ビル・パクストン、エド・ハリス…ケヴィンはジャック・スワイガート飛行士役)

・95年「告発」(…G・オールドマンの項で掲出―ケヴィンはアルカトラスに収監の殺人囚、ヘンリー・ヤング役)

・96年「スリーパーズ=Sleepers」(監督・バリー・レヴィンソン、出演・ロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマン、ジェイソン・パトリック、ブラッド・ピット、ビットリオ・ガスマン…いたずらによる事故から少年院送りとなった仲良し四人組がそこで看守達から受けた凄絶な陵辱への復習劇。本来なら二枚看板のデ・ニーロ=神父役、ホフマン=酔いどれ弁護士役を脇においたビックリの豪華キャストの中で、少年四人組を苛め抜く冷酷な看守リーダー、シーン・ノークス=ケヴィンの非道ぶりが出色)

・97年「セブンティーン=Telling lies in America」(監督・ガイ・ファーランド、出演・ブラッド・レンフロ、マクシミリアン・シェル…クリーブランドの田舎で父と暮らすハンガリー移民の少年、カーチィー=レンブロの青春物語、ケヴィンは人気DJ,ビリー・マジック役。

・97年「ウイズ・ユー=Digging to China」(監督・ティモシー・ハットン、共演・メアリー・スチュアート・マスターソン)

・97年「ピクチャー・パーフェクト/彼女が彼に決めた理由(わけ)=Picture perfect」(監督・グレン・ゴードン・キャメロン、共演・ジェニファー・アニストン…時にはこんなロマンチックコメディにも出るのだ)

・98年「ワイルド・シングス=Wild things」(監督・ジョン・マクノートン、共演・マット・ディロン、ネイヴ・キャンベル、デニース・リチャーズ、ロバート・ワグナー、ビル・マーレイ)では、どんでん返しに次ぐどんでん返しのストーリー展開の中で、ケヴィンは何かいわくのありそうな刑事役で、クセ者振りの本量を発揮する一方、製作総指揮をとってプロデュースにも乗り出している。

  この後も作品は目白押し。柔軟な表現力では未だトム・ハンクス(2才年上)に一歩譲るが…例えば、88年の 「パンチライン」(監督・デヴィッド・セルツァー、共演・サリー・フィールド) で見せたトム・ハンクスのスタンダップ・コメディアンのような演技…、ケヴィンは今やハリウッド中堅演技派の筆頭としての地位を固めつつあり、将来はジャック・ニコルソンやロバート・デ・ニーロの後を襲う大きな存在となるであろう。

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