ゲイリー・シニーズ(GARY SINISE)

                1955年、 イリノイ州/ブルーアイランド生まれ                                    

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苛められっ子の秀才が屈折した性格のまま成長し、世を拗ね、斜(はす)に構えた大人になった…といった雰囲気を漂わせており、そういった個性を活かして、出演本数は少ないものの、この処急速に演技派としての評価を高めている。

先ず注目を集めたのは、何と言っても94年「フォレストガンプ/一期一会=Forrest Gump」(監督・ロバート・ゼメキス、主演・トム・ハンクス、ロビン・ライト、サリー・フィールド)のダン・テイラー大尉役である。

 …ヴェトナム戦線で瀕死のところをガンプに助けられたダン隊長は一命を取りとめたものの両足を失う。復員後絶望の日々を送り、ガンプに「何故あの時死なせてくれなかったのか!」と迫る…この辺の演技がまさにシニーズの真骨頂で、恐らく彼にとって生涯ベストに近い熱演ではなかろうか。(不具者を演じきる肉体的表現力も凄いと感心させられる)

  そもそも28才の時の銀幕デビューがいきなり監督(兼助演)というのも異色だ。(83年「True West」…監督・アラン・A・ゴールドスタイン&ゲイリー・シニーズ、出演・ジョン・マルコヴィッチ、サム・シャット、ゲイリー・シニーズ)。

それもそのはず、高校生の時に仲間とウエストサイドストリーを上演、18才では友人とステッペン・ウルフ(=ヘビメタロックの王者の名前)劇団を結成したという早熟演劇青年なのである。・・・その劇団に加わったのが、この後に登場するジョン・マルコヴィッチである・・・。その後TVドラマにポツポツと出た後(この間いったいどうやってメシを喰っていたんだろう?

次に5年の間隔をおいて、ヒューマンドラマの秀作、88年「マイルズ・フロム・ホーム =Miles from home」(出演・リチャード・ギア、ケヴィン・アンダーソン、ジョン・マルコヴィッチ)の監督を経て、

・91年「真夜中の戦場/クリスマスを送ります=A midnight clear」(監督・キース・ゴードン、主演・ピーター ・バーグ、イーサン・ホーク、ケヴィン・ディロン…アルデンヌの森で対峙した米・独の若年兵達の悲劇を描いた戦争ドラマの秀作)の助演で久し振りに役者として登場。その後、

・92年「二十日鼠と人間=Of mice and men」(主演・ジョン・マルコヴィッチ&シニーズ)でジョン・スタインベックの名作を製作(共同製作者・監督・主演と大車輪の活躍で、詩情豊かに完全映画化。・・・こうした作品群をみると、芸術としての理想の映画作りに燃えた青年・シニーズの情熱がヒシと伝わってくるようである

92年「みんな愛してる =Jack the bear」(監督・マーシャル・ハースコヴィッツ、主演・ダニー・デヴィート、ロバート・J・スタインミラーJr…辛口ホームドラマ、シニーズは隣人のナチス崇拝者役)  

  そして94年の「フォレストガンプ」の後が、

・95年「アポロ13=Apollo13」(監督・ロン・ハワード、出演・トム・ハンクス=ジム・ラヴェル船長、ビル・パクストン=フレッド・ヘイズ、ケヴィン・ベーコン=ジャック・スワイガートの三飛行士に対して、シニーズは飛行直前に風邪の疑いで降ろされた飛行士ケン・マッティングレイ役。…スネて自棄(ヤケ)になって酔っ払うあたりは、シニーズの本領発揮(!?)といったところであるが、13号の危機を知るや一転必死の救出作戦を繰り広げる熱演振りは、エド・ハリス=ジーン・クランツ地上管制指揮官の信頼感溢れる演技とともにドラマを盛上げ、宇宙の三飛行士よりもむしろ印象深いと感じるのは私一人であろうか!)

そして翌年あたりから、嘗(かつ)て孤高の芸術路線を目指したかに見えたシニーズが次第に娯楽路線へと転換していくのである。 先ずその皮切りともいえる作品が

・96年「身代金=Ransom」(監督・ロン・ハワード、主演・メル・ギブソン、レネ・ルッソ)・・ここでのシニーズは富豪ギブソンの息子を誘拐する一味の首領・私立探偵ジミー・エイカーを演じ、なかなか冷酷な味を出している。尤もギブソンの捨て身の反撃(=身代金を犯人の懸賞金にするというアイデア!)に、次第に追い詰められ破滅へと向かう、暗い哀れを誘うような演技がシニーズならではであるといえよう。 同じ年の製作が

・96年「アルビノ・アリゲイター=Albino Alligator」(監督・ケヴィン・スペイシー、主演・マット・ディロン、フェイ・ダナウェイ)・・・囚人と人質の逃避行を描いたサスペンス。 そしてその次が

・98年「スネーク・アイズ=Snake eyes」(監督・ブライアン・デ・パルマ・・・冒頭13分強のノンストップシーンのカメラアイが素晴らしい―主演・ニコラス・ケイジ) ・・・シニーズは、自ら信ずる目的の為には手段を選ばない確信犯的な軍高官ケヴィン・ダンを演じ、最後には目算が狂って、巧妙に仕掛けた筈の罠が次々と破綻していく過程の焦り、怒りといったところに、又々何とも言えない彼独特の持ち味を発揮している。

  何れにしろ、若いころの芸術路線で鍛えた演技力がここにきて遺憾なく発揮されており、99年から00年にかけて注目作が目白押しといった状況。彼もまだ45才という若さであり、トム・ハンクス、ケヴィン・ベーコンと並んで21世紀のハリウッドを担う逸材として嘱望されていることは間違いない。

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