ジェームズ・ウッズ
(JAMES WOODS)
本名James Howard Woods
1947年 アメリカ、 ユタ州、 ヴァーメル生まれ
容貌はクリント・イーストウッドとロバート・ヴォーンを足して2で割ったような感じ。クールでシャープ。(爬虫類的な、なにやらヌメッとしたところもある) 善人であれ、悪人であれ一癖も二癖もある個性的な人物を演じると大ハッスルするようで、その演技力は際立っているが、残念ながら知る人ぞ知るといった存在で、世間的な評価・知名度は今一つ。アメリカにおいてすら、そういったコメントもあるくらいだから、まして日本においておや!であり、従って彼主演の力作・秀作も惜しいことに本邦未公開が多い。
アクの強い悪役を演じて印象深い(そして作品も話題を呼んだ)のが、84〜85年の3本、
「スペシャリスト=The
Specialist」(監督・ルイス・ロッサ、出演シルベスター・スタローン、シャロン・ストー
「ゲッタウエイ=Getaway」(監督・ロジャー・ドナルドソン、出演・アレック・ボールドウィン、キム・ベイジンガー、ウッズ、マイケル・マドセン・・・サム・ペキンパー監督/マックィーン&アリ・マッグロー主演による傑作のリメイク。ヒロインはマッグローよりベイジンガーのほうが上か!)・・・ウッズは主人公にドッグレース場の現金強奪を請け負わせ、騙して窮地に陥れる、卑怯で冷酷な組織のボス、ベニヨン役で、クールな演技がピタリときまっている。
・95年「カジノ=Casino」(監督・マーティン・スコセッシ、主演・ロバート・デ・ニーロ、シャロン・ストーン、ジョー・ペシ)では、陥ちていくヒロイン=ストーンに濡れ落葉の如くまとわりつく、かつての恋人でヒモ的存在のレスター・ダイヤモンド役をまさに爬虫類的フィーリング(!?)で熱演。
少し遡ると、(本邦未公開乍ら)87年「Best
Seller」(監督・ジョン・フリン、主演・ウッズ、ブライアン・デネヒー)では殺し屋クリフ・・・彼は作家を副業とする警官(=デネヒー)に奇妙な秘密を打ち明け、そしてこの変わったコンビがアクション一杯の闘いを繰り広げていく・・・という展開で、ウッズのクールな殺し屋の演技がじつにシャープとの評価。(余談乍ら、デネヒーは「ランボー」で、彼を追いまわす街の保安官役が印象に残る)
ここでウッズの作品をふり返ると、
・72年「突然の訪問者=The
visitors」(監督・エリア・カザン、主演・パトリック・マクウェイ、パトリシア・ジョイス/サスペンス物)と、
・72年「Hickey & Boggs」(監督・ロバート・カルプ、主演・ビル・コスビー、ロバート・カルプ)とで、ほんの
・73年「追憶=The
Way We were」(監督・シドニー・ポラック、主演・バーブラ・ストライザンド、ロバート・レッドフォード・・・レッドフォードを刺身のツマにした、バーブラのワン(ウー)マン映画!)
・75年「ナイトム−ヴス=Night Moves」(監督・アーサー・ペン、主演・ジーン・ハックマン、ジェニファー・ウォーレン/探偵物・・・当時19歳のメラニー・グリフィスが家出娘役で初々しいデビュー!)
・76年「特攻サンダーボルト作戦=Operation
Thunderbolt raid on Entebbe」(監督・アーヴィン・カーシュナー、出演・ピーター・フィンチ、マーティン・バルサム、ホルスト・ブープホルツ、チャールズ・ブロンソン・・・エンテベ空港・イスラエル電撃作戦をリアルタッチで描く・・・ウッズは兵士役)
・76年「クワイアーボーイズ=The
Choirboys」(監督・ロバート・アルドリッチ、主演・チャールズ・ダーニング、ルイス・ゴセットJr・・・ロスのはみだし警官達の騒動の日々) としばらくは端役の下積みが続き、
・80年「オニオンフィールド=The
Onion Field」(監督・ハロルド・ベッカー、主演・ジョン・サヴェージ、ウッズ・・・前作と同じジョセフ・ワンボーの原作・脚本によるコップ物)あたりから漸く「重い役」が付きだす。
・81年「目撃者=eyewitness」(監督・ピーター・イエーツ、出演・ウイリアム・ハート、シガニー・ウイーヴァー、クリストファー・プラマー、ウッズ)
・82年「ヴィデオドローム=Videodrome」(監督・デヴィッド・クローネンバーグ、主演・ウッズ、デボラ・ハリー)・・・「スキャナーズ」で名を上げたSFホラーの俊英・クローネンバーグ(「ザ・フライ」もある!)の作品で、デビュー10年にして初めて主役を張る。
・82年「Split
Image」(監督・テッド・コッチェフ、主演・マイケル・オキーフ、カレン・アレン、ピーター・フォンダ、ウッズ)
・84年「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ=Once
upon a time in America」(監督・セルジオ・レオーネ、主演・ロバート・デ・ニーロ、ウッズ、・・・当時14才のジェニファー・コネリーが可愛い!) レオーネ監督7本目にして遺作となった、‘20年代から30年間に亘るユダヤ系ギャングの大河ドラマ。ウッズは、主人公(=デ・ニーロ)のガキの頃からの無二の親友でありながら、彼の裏切りで警官に射殺されるマックス役に抜擢されるや、見事その期待に応え、デ・ニーロを向こうにまわして堂々たる演技を見せた。
84年「カリブの熱い夜=Against
All Odds」(監督・テイラー・ハックフォード、出演・ジェフ・ブリッジス、レイチェル・ウオード、ウッズ、リチャード・ウィドマーク)・・・ウッズはヒロインの財産目当ての元恋人役
86年「サルバドル/遥かなる日々=Salvador」(監督・オリヴァー・ストーン、主演・ウッズ、ジェイムズ・ベルーシ)・・・食い詰めて女房に逃げられた戦争ジャーナリストのボイル(=ウッズ)は,きな臭い臭いに誘われるようにして再びエルサルバドルを訪れる。次第に正義と良識に目覚めていく彼の目を通して、エルサルバドル政府の悪政&圧政と、ただ共産化阻止のために悪辣な政権を支援する米国を痛烈に批判したストーンの会心作。
87年「ザ・コップ=COP」(監督・ジェームズ・B・ハリス、製作&主演・ウッズ、レスリー・アン・ウオーレン、チャールズ・ダーニング)・・・ロスのはみ出し刑事、ロイド・ホプキンスの執念の捜査をリアルタッチで描く
88年The
Boost」(監督・ハロルド・ベッカー、主演・ウッズ、ショーン・ヤング)・・・仕事の失敗で落ち込んで、ブースト(鼓舞)するために軽い気持ちでコカインに手を出し、やがて夫婦で麻薬におぼれて破滅していく不動産セールスマンのレニー・ブラウン(=ウッズ)
89年True
Bliever」(監督・ジョセフ・ルーベン、主演・ウッズ、ロバート・ダウニーJr)・・・犯人にされた中国青年のために闘う弁護士役。
89年「この愛の行方=Immediate
Family」(監督・ジョナサン・カプラン、主演・グレン・クローズ、ウッズ)・・・結婚後10年、子供のないスペクター夫婦を巡るヒューマン・ドラマ。
と、じつに多くの作品でレベルの高い演技を見せながら、名だたる賞とも無縁で、不思議なくらい世間からの注目度の少ないのがウッズの悲劇(!)である。
91年「ハードウエイ=The
Hard Way」(監督・ジョン・バダム、主演・マイケル・J・フォックス、ウッズ)・・・刑事役を演じるため修行にきた甘チャンアイドルスター(=マイケル)のコーチを務める硬派の刑事役
・92年{ミッドナイト・スティングDiggst
Town}(監督・マイケル・リッチー、主演・ウッズ、ルイス・ゴセットJr,ブルース・ダーン)・・・ボクシング賭博で一儲けを企む面々。
92年「チャーリー=Chaplin」(監督・リチャード・アッテンボロー、出演・ロバート・ダウニーJr,、ジェラルディン・チャップリン、アンソニー・ホプキンス、ダン・エイクロイド、モイラ・ケリー、ケヴィン・クライン、ダイアン・アレン、ケヴィン・ダン、ミラ・ジョヴォビッチ・・・)と実に豪華なキャストで、ウッズはスコット弁護士役。
92年「Straight
Talk」(監督・バーネット・ケルマン、主演・ドリー・パートン、ウッズ)・・・コメディ
94年「Curse
of Starving Class」(監督・J・マイケル・マックラリー、主演・ウッズ、キャシー・ベイツ)
95年「ニクソン」(エド・ハリスの項で掲出)・・・ウッズはウオーターゲイト侵入犯への口封じ工作責任者の役割を果たした、ジョン・アーリックマン大統領首席補佐官の役。
96年「Ghost
of Mississippi」(製作&監督・ロブ・ライナー、主演・アレック・ボールドウィン、ウーピー・ゴールドバーグ、ウッズ)・・・公民権運動指導者の暗殺から30年、弁護士と未亡人が暗殺者・バイロン(=ウッズ)を追求する。
97年「スチューピッド・イン・ニューヨーク=Kicked
in the head」(監督・マシュー・ハリソン、主演・ケヴィン・コリガン、リンダ・フィオレンティーノ、ウッズ)・・・ここでは主人公に災いの種を蒔く(珍しくも!)アホな叔父役。
97年「コンタクト=Contact」(製作&監督・ロバート・ゼメキス、主演・ジョディ・フォスター、マシュー・マコノヒー、ジョン・ハート、トム・スケリット、ウッズ)・・・骨太な作品ではあるが、SF映画として見た場合には肝心の地球外生命体の映像提示が明快でなく、最後で誤魔化されたような感じがする。ウッズは、官僚の本性をむき出しにした自己保身の固まりのようなイヤミな政府高官役で、出番は少ないが例によって存在感を示している。
98年「Another
day in Paradise」(カントク・ラリー・クラーク、主演・ウッズ、メラニー・グリフィス)
98年「ヴァンパイア/最後の聖戦=Vampires」(監督・ジョン・カーペンター、主演・ウッズ、ダニエル・ボールドウィン、シェリル・リー、トーマス・イアン・グリフィス)・・・ウッズはヴァンパイア・ハンターのジャック
・99年「ヴァージン・スーサイズ=the
Virgin Suicides」(製作・フランシス・コッポラ、監督・ソフィア・コッポラ、出演・ウッズ、キャスリーン・ターナー、キルスティン・ダンスト、ハナ・ハル、ダニー・デヴィート、マイケル・パレ) 四人姉妹の相次ぐ十代での自殺の謎、その悩める両親にウッズとターナー。コッポラ親娘がノスラルジックなタッチで描く青春のメモワール。
99年「エニー・ギブン・サンデイ=Any
given Sunday」(監督・オリヴァー・ストーン、出演・アル・パチーノ、キャメロン・ディアス、デニス・クエイド、ウッズ、ジェイミー・フォックス、チャールトン・ヘストン、アン・マーグレット)・・・ストーン監督が今度はアメフットの世界に挑み、熱い人間ドラマを展開。これでストーン作品三本目のウッズも元気だが、アル中女性役のアン・マーグレット(お懐かしや!)がなかなかの演技を見せている。
99年「トゥルー・クライム=True
Crime」(製作&監督&主演・クリント・イーストウッド、共演・イザイア・ワシントン、ウッズ)・・・酒と女大好きのはみ出し記者スティーヴ・エヴェレット(=クリント)が殺人事件の真相に挑む。ウッズはこの記者のよき理解者たる編集長としていい味を出している。
99年「将軍の娘/エリザベス・キャンベル=the
General’s Daughter」(監督・サイモン・ウエスト、出演・ジョン・トラボルタ、マデリーン・ストウ、ジェームズ・クロムウェル、ティモシー・ハットン、ウッズ)・・・ここでは、陸軍捜査官・ポール・ブレナー(=トラボルタ)と渡り合い、スリリングでウイットに富んだ知的ゲームを展開する容疑者ムーア大佐で、迫真の演技を披露。
と最近は次々といい役についており、今やハリウッドを代表する演技派の一人として広く認知されてきているのではないか! 充実の54歳(‘01年で)・・・これからが楽しみである。