トミー・リー・ジョーンズ(TOMMY LEE JONES)

               1946年 アメリカ、テキサス州生まれ                          

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(誰かに似てるとおもいませんか?・・・そう、ジェリー藤尾です!)

  「メン・イン・ブラック」(=97年/Men in Black 監督・バリー・ソネンフェルド、共演・ウイル・スミス、リンダ・フィオレンティーノ、懐かしや、リップ・トーンも出ている!)の中で、エイリアンが「慢性胃潰瘍病みが苦虫を噛み潰したような顔だ!」というようなセリフを喋るシーンがあって、思わずニヤリとさせられたが、言い得て妙のまことに「渋い顔」の持ち主だ。ところが今やハリウッドの「稼ぐトップスター」の一人であり、名優という評価も生まれつつあるからおもしろい。

 この「悪役顔」を活かしたのが、92年「沈黙の戦艦Under Siege」(監督・アンドリュー・デイヴィス、主演・スティーヴン・セガール、トミー、エリカ・エレニアック)・・・SEALの隊長を辞めて何故か!核兵器搭載戦艦ミズーリのコックをしているセガールが、同艦を乗っ取ったテロリスト集団にたった一人で立ち向かう海上版のダイハード。なにせセガールが演ずるヒーローは滅茶苦茶に強いから、対する敵役もよほど凄味がないと画面が締まらない。このトミー扮するテロリストのリーダー=ウイリアム・ストラニクスは、コワモテの雰囲気を十二分に生かして迫力満点で、結構ストーリーを盛り上げた。(因みに、このヒットで、セガール主演の「沈黙の〜」というタイトルを冠した作品が相次いで公開されたが、本作品が一番の出来栄えであった。)

・94年「ブローンアウエイ/復讐の序曲=Blown Away」(監督・スティーヴン・ホプキンス、主演・ジェフ・ブリッジス、トミー)では、IRAの爆破テロリスト役。脱獄後ボストンを舞台に、元同志であった爆発物処理隊員(=ジェフ)を逆恨みして復讐を仕掛ける。これも狂気の爆弾魔を演じてかなり怖い!と感じさせる。

・95年「バットマン・フォー・エヴァー=Batman Forever」(監督・ジョエル・シューマーカー、主演・ヴァル・キルマー、トミー、ジム・キャリー、クリス・オドネル、ニコール・キッドマン、ドリュー・バリモア)ではバットマンのせいで地方検事の地位を失ったと勘違いして、徹底した復讐を狙うハーヴェイ・デント/ツー・フェイス役(片棒を担ぐザ・リドラー役のジムと二人して敵役を楽しんでいる感あり・・・本シリーズの敵役は皆そうだといえるが!)

永年下積みの苦労を経てのし上がってきたのかと思えば、彼の本格悪役はその面構えの割りには意外と少ない。実はその「履歴書」を見てみると、これがビックリで、なかなかに華麗(!)なのである。

 苦学して、奨学金でハーヴァード大学へ進み、英文学を専攻する傍らアメフットのオフェンシブガードとしても大活躍。絵に描いたような花のキャンパスライフで、おまけに前副大統領のゴアと寮のルームメートであったというから驚く。卒業後69年にブロードウエイの舞台に上がり、同年「ある愛の詩=Love Story」(監督・アーサー・ヒラー、主演・アリ・マッグロー、ライアン・オニール)のハンク役で銀幕デビュー。(原作者のエリック・シーガルによれば、ハーヴァード時代のゴアとトミーが主人公オリヴァー=ライアン・オニールのモデルであるという)

その後70年代前半は舞台、後半はTVで活躍し、それから映画の世界に移る。

・76年「ジャクソン ジェイル=Jackson Country Jail」(監督・マイケル・ミラー、主演・イヴェット・ミミュー、トミー)・・・平凡な女性に次々と襲いかかる悪夢のような出来事・・・。

・77年「ローリング・サンダー=Rolling Thunder」(監督・ジョン・フリン、主演・ウイリアム・ディヴェイン、トミ―)・・・妻子を殺されたヴェトナム帰還兵が怒りの復讐劇、トミーはそれを助ける相棒役。

・78年「ベッツイー=BATSY」(監督・ダニエル・ペトリ、主演・ローレンス・オリヴィエ、ロバート・デュヴァル、キャサリン・ロス)・・・自動車王一族の新車(BATSY)開発を巡る騒動を描き、トミーはなんと、モテモテ2枚目のアンジェロ・ペリーノ役というから驚きだ!(あの顔で・・・とは影の声?)

・78年「アイズ=Eyes of Laura Mars」(監督・アーヴィン・カーシュナー、主演・フェイ・ダナゥエイ、トミー)

・80年「歌え!ロレッタ、愛の為に=Coal miner’s Daughter」(監督・マイケル・アプテッド、主演・シシー・スペイセク、トミー)・・・歌手・ロレッタ・リンの半生を描く。

  と、映画の内容、出来栄えはともかく、早いうちからそこそこの役処を得ている。(これもハーヴァード大→ブロードウエイという華麗なるキャリアのゆえか?)そしてこの後、主役を張るようになっていく。

・83年「Savage Iland」(カントク・フェルディナンド・フェアファックス、主演・トミー、マイケル・オキーフ)・・・髭の海賊・ブーリー(=トミー)の大アクションで、いわば海のインディ・ジョーンズ!

・85年The Park is Mine」(監督・スティーヴン・ヒリヤードスターン、主演・トミー、ヘレン・シェイヴァー)・・・社会に適応出来ないヴェトナム帰還兵が仲間の待遇改善を訴えてセントラルパークを占拠するというヴェトナム帰還兵もの(スタローンの「ランボー」なんかと同じジャンル)

・86年「ブラックライダー=Black Moon rising」(監督・ハーレイ・コックリス、主演・トミー、リンダ・ハミルトン、ロバート・ヴォーン)・・・鬼才・ジョン・カーペンターが原案・脚本と思えぬ駄作で、多分トミーもこの作品の主演を恥じることであろう。 ロバート・ヴォーンが彼らしい(!)、小ずるくて今一迫力に欠ける悪徳実業家を演じているのがご愛嬌。             

・87年「ビッグタウン=The Big Town」(監督・ベン・ボルト、主演・マット・ディロン、ダイアン・レイン、トミー・・・田舎出のチンピラ・サイコロ賭博師(=マット)と、彼に女房を寝盗られたクラブのボス(=トミー)

・88年「ストーミー・マンディ=Stormy Monday」(監督・マイク・フィギス、主演・トミー、メラニー・グリフィス、スティング、ショーン・ビーン)・・・イギリスの田舎町のジャズクラブ(経営者がスティング)を地上げにかかるアメリカ人・コズモ(=トミー)と秘書的存在のケイト(=メラニー)

・89年「ザ・パッケージ/暴かれた陰謀=The Package」(監督・アンドリュー・デイヴィス、主演・ジーン・ハックマン、トミー、ジョアンナ・キャシディ)・・・護送した囚人(=トミー)に逃げられ追跡しているうちにソ連書記長暗殺の陰謀に巻き込まれる軍曹・キャラハン(=ハックマン)の孤独な闘い。デイヴィス監督の切れ味いい演出が冴える。

・90年「アパッチ=Fire birds」(監督・デヴィッド・グリーン、主演・ニコラス・ケイジ、ショーン・ヤング、トミー)・・・米陸軍の誇る戦闘ヘリと麻薬組織の闘い。(余談乍ら、ケイジ主演作で最低の出来栄えとの評価が多い。)

・91年「J F K」(オールドマン、ベーコンの項で掲出)トミーはケネディ暗殺実行部隊(?)のスポンサーと疑われる南部のダーティな実業家クレイ・ショウ役。銀髪・カーリーヘヤーの容貌がぐっと謎めいて不気味な雰囲気を漂わせ、彼が演じた悪役の中で最もスゴミがあるかもしれない。

・92年「心の扉=House of Cards」(原作・脚本・監督・マイケル・レサック、主演・トミー、キャスリーン・ターナー)・・・6才の少女の心の扉を開かせようとするセラピスト(=トミー)の努力・・・監督の一人よがりで訳のわからない作品。

・93年「逃亡者=The Fugitive」(監督・アンドリュー・デイヴィス、主演・ハリソン・フォード、トミー)・・・妻殺しの容疑者リチャード・キンブル(=フォード・・・TVではデヴィッド・ジャンセン)とジェラード警部(連邦保安官)・・・どこまでもキンブルを追いかける信念と執念の人物を演じ、そのタフで重厚な演技が高く評価され、なんとこれ一発であっさりとアカデミー助演男優賞を取ってしまった。・・・これまで賞候補にノミネートされたことなど全く無かったにも拘わらずである。それほどの演技とは思えないから、じつにラッキー!。しかし、トミーはこれを契機として一気にブレイクの感あり、人気スターの地位を確保し、以降次第に質の高い作品が増えてくるのである。

・93年「天と地=Heaven and Earth」(監督・オリヴァー・ストーン、主演・ヘップ・ティー・リー、トミー、ジョアン・チェン)・・・ストーン監督のヴェトナム3部作の最後は、珍しくも叙情性豊かな正統派の大河ドラマ。実在(=原作者)のヴェトナム女性の数奇な生涯・・・貧しいながら両親の豊かな愛情に包まれてヴェトナムの農村に育ったレ・リーがヴェトナム戦争のただ中、故郷でヴェトコンのシンパ、サイゴンでの奉公先の主人との不倫、乳飲み子を抱えての苦闘〜を逞しく生き抜きやがて米軍兵士=トミーと恋に落ちてアメリカへ渡る・・・)を格調高く描く。

 トミーは軍属としての暗い過去を背負いながら、男の優しさとエゴイズムの狭間で揺れ動く人間像を見事に演じている。(余談ながら、画面中、レ・リーをして「デコボコの顔だけど、貴方の中のアメリカが大好き!」なんて言わせているのは笑わせる。又、喜多郎の音楽が素晴らしい出来栄えで、叙情と哀愁感溢れる流麗なメロディが、全編にマッチし、特にヴェトナム農村の美しい風景にピッタリである。そのオリエンタルサウンドの冴えは坂本竜一にひけを取らないといえよう・・・)

・94年「ブルースカイ=Blue Sky」(監督・トニー・リチャードソン、主演・トミー、ジェシカ・ラング)リチャードソン監督のことだから反核映画かと思いきや、ネヴァダの核実験に向かうハンク・マーシャル少佐(=トミー)と、あまりにも自由奔放な超元気印の妻(=ジェシカ)を巡る「愛は核よりも強し!」といった感じの家族愛の物語。真面目な技術系軍人を演じるトミーも結構いい味を出しているが、ジェシカの奔放妻のダイナミックな演技に圧倒される。彼女はなんとこれでアカデミー主演女優賞を取ってしまった。

・94年「ナチュラル・ボーン・キラーズ=Natural Born Killers」(監督・オリヴァー・ストーン、主演・ウディ・ハレルソン、ジュリエット・ルイス、ロバート・ダウニー・ジュニア、トミー)ルート666を疾走しながら殺人を続けるミッキーとマロリーがメディアの報道を通じるうちに次第に英雄として扱われはじめる皮肉・・・。

・94年「依頼人=The Client」(監督・ジョエル・シューマーカー、主演・スーザン・サランドン、トミー)・・・殺人を目撃した11才の少年の為に立上がった弁護士(=スーザン)とひたすら真相を追究する鬼検事(=トミー・・・ジェラード警部を彷彿とさせる)の丁々発止のやり取りがサスペンスを盛り上げて小気味よい。シューマーカー監督がグリシャムの原作を見事に映像化。

95年「タイカップ=COBB」(監督・ロン・シェルトン、主演・トミー、ロバート・ウール)・・・尊敬に値する気高さと軽蔑すべき陰険さといった、相反する性格を併せ持った伝説の野球人タイ・カップの複雑な人間像を、トミーが迫真の演技で浮かび上がらせた、おそらく彼の生涯ベストワンに挙げうる作品。

・97年「ボルケーノ=Volcano」(監督・ミック・ジャクソン、主演・トミー、アン・ヘッシュ)・・・何故か突如ロスの地下から溶岩流が噴出する。市内を焦熱地獄と化して猛威をふるう溶岩流に敢然と立ち向かう危機管理局長にトミー。溶岩流のSFXは見事だが、只それだけ〜・・・。(アッそれと「ミルクマネー」で冴えない娼婦を演じていたヘッシュが大変身してヒロインの地震学者として登場したのにビックリ!)

・98年「追跡者=U.S.Marshals」(監督・スチュアート・ベアード、主演・トミー、ウエズリー・スナイプス、ロバート・ダウニー・ジュニア)・・・なんとあの「逃亡者」のサムエル・ジェラード警部(=トミー)が、チーフ・デピュティ・マーシャルに出世して5年後に再登場という設定。今度は護送飛行機の墜落事故で逃亡した殺人犯(=スナイプス)を巡る謎と陰謀を追いかける。

・99年「ダブル・ジョパディー=Double Jeopardy」(監督・ブルース・ベレスフォード、主演・トミー、アシュレイ・ジャッド、ブルース・グリーンウッド)・・・夫殺しの濡れ衣を着せられた女性が真実を追求。トミーは彼女を追う保護観察官・トラヴィス役 。女性版逃亡者ともいえようか?(いや、違うのは、終盤トラヴィスが真実に気づいて彼女をバックアップするところである。)

・00年「英雄の条件=Rules of Engagement」(監督・ウイリアム・フリードキン、主演・トミー、サミュエル・ジャクソン)・・・窮地に陥った砂漠の大使館員たちを救出に向かい、殺人罪に問われたヴェトナム戦争時の命の恩人(=ジャクソン)の為に、政府上層部の意向に逆らって、敢然と弁護士役を買って出る大佐がトミー

 ビッグスターへの糸口となったジェラード警部以来、どうも最近は検事・弁護士といった役柄に固定しがちであるが、この殻を破って更に活躍の場を広げて欲しいと思うのは私ばかりではないであろう。

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