ミッキー・ローク (MICKEY ROURKE)   本名PHILIP ANDRE ROURKE Jr.

              1953年 アメリカ、ニューヨーク生まれ                  

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       (昔) と(今)

ツンと立った鼻筋に、結構品のある顔立ちをしている(否、していた)が、役柄どころか、その実人生そのものが根っからのワルといった感じなのが、ミッキー・ロークである。

全身七箇所に刺青を施し、バイク気狂いの元祖暴走族。IRAシンパ(かなりの献金をしたとか!)で、妻虐待で逮捕歴があり、かつて共演したキム・ベイジンガーが“人間灰皿”と呼んだ程のヘビースモーカー、そして91〜95の間正規のライセンスを持ったプロボクサーでもあった。・・・こんないわば筋金入りの「ろくでなし」であるが、何故か日本では結構人気があり、B級作品でも数多く公開されているのである。

(人気絶頂の頃にボクサーとして来日し、ドームで試合を行なったが、トレーニング不足の弛んだボディのダレたファイト振りで、詰めかけたファンを失望させたことがある。)

・79年「1941」(監督・スティーヴン・スピルバーグ、出演・ジョン・ベルーシ、三船敏郎)のチョイ役でデビューし、三本ほどTV作品に出た後、

・80年「天国の門=Heaven’s Gate」(監督・マイケル・チミノ、出演・クリス・クリストファーソン、クリストファー・ウォーケン、ジョン・ハート、イザベル・ユベール、ミッキー、ウイレム・デフォー・・・19世紀末のワイオミングを舞台に、ロシア・東欧系移民の悲劇を描いたチミノ渾身の大作ながら、合衆国建国の恥部を描いたゆえか、巨費を投じたに拘わらず圧倒的な悪評と不入りで、当時ユナイト映画の屋台骨を揺るがした、いわくつきの作品・・・)のニック・レイ役、

・80年「Fade to Black」のリッチー役、

・81年「白いドレスの女=Body Heat」(監督&脚本・ローレンス・カスダン、出演・ウイリアム・ハート、キャスリーン・ターナー=官能的な悪女の演技が見事で、なんとも鮮やかなデビュー振りだ!・・・)のテディ・ルイス役といった脇役で次第に注目を集め  

・82年「ダイナー=Diner」(監督・バリー・レビンソン、出演・スティーヴ・グッテンバーグ、ダニエル・スターン、ミッキー、ケヴィン・ベーコン、エレン・バーキン・・・50年代のボルチモアの“ダイナー”に集う、5人の若者のホロ苦い青春グラフティ・・・)のロバート“ブーギー”ショフテル役で、初めて主役格となる。次にコッポラが注目し、

・83年「ランブルフィッシュ=Rumble Fish」(監督・フランシス・F・コッポラ、出演・マット・ディロン、ミッキー、ダイアン・レイン、デニス・ホッパー、ニコラス・ケイジ)では弟(=マット)が憧れる兄で不良グループのリーダー、その名も“The Motorcycle Boy”役。これはもう殆ど「地」で演ずることが出来る役柄だといえよう。

・84年「悪の華/パッショネイト=The Pope of Greenwich village」(監督・スチュアート・ローゼンバーグ、出演・ミッキー、エリック・ロバーツ、ダリル・ハンナ、バート・ヤング)・・・勤務先をクビになり、悪の道へ入る若者・チャーリー(=ミッキー)とポーリー(=エリック)。ミッキーは初めて主演をとるが、これもまた「地」でやれるチンピラ役だ。そして次に彼がブレイクする作品と巡り合う。それは、

・85年「ナインハーフ=Nine 1/2Weeks」(監督・エイドリアン・ライン、出演・ミッキー、キム・ベイジンガー)・・・ヒロイン(=キム)が偶然出会ったジョン(=ミッキー)の手によって官能を開花させる9週間半を、ライン監督独特のエロチックなカメラアイで追い話題となった作品(目隠しをした彼女の金髪の産毛が光る体に氷をはわせるシーン等が印象的!)で、ミッキーの地位を確立させるとともに、キムを一躍大スターにした。

・86年{イヤー・オブ・ザ・ドラゴン=Year of the Dragon}(監督・マイケル・チミノ、出演・ミッキー、ジョン・ローン)・・・ニューヨークのチャイナタウンを舞台に、台頭するチャイニーズ・マフィアの若きボス(=ジョン)と一匹狼の刑事、スタンレイ・ホワイト(=ミッキー)の闘いを迫力あるシーンの連続で描いたチミノ監督会心の作品。ジョンの水も滴(したた)る美男子振りも鮮やかであるが、ダーティハリーも真っ青のワイルドでバイオレンスな刑事役はまさにミッキーならではであった。(おそらく、彼のベスト1の作品であろう)

・87年「バーフライ=Barfly」(監督・バーベット・シュローダー、出演・ミッキー、フェイ・ダナウェイ)・・・ロスのダウンタウンで、売れない作家ヘンリー・チャイナスキーと酒浸りの女(=フェイ)が恋に落ちる・・・ヘンリーはミッキーにしては珍しいシリアスな役である。

・87年「死にゆく者への祈り=A Prayer for the Dying」(監督・マイク・ホッジス、出演・ミッキー、ボブ・ホスキンス、サミ・デイビス、アラン・ベイツ、リーアム・ニーソン)・・・殺しと引換えに国外逃亡を図る孤独なテロリスト、マーティン・ファロン(=ミッキー)、犯行を目撃した神父(=ボブ)と盲目の姪(=サミ)、そして暗黒街のボス(=ベイツ)と役者がそろった佳作。(今をときめくリーアム・ニーソンが脇役で出ているという、スゴいキャストだ!)

・87年「エンゼルハート=Angel Heart」(監督・アラン・パーカー、出演・ミッキー、ロバート・デ・ニーロ、リサボネ、シャーロット・ランプリング)・・・ミッキーは珍しく生粋善玉の探偵ハリー・エンゼル役で、ニューヨークからニューオリンズへと失踪した歌手の謎を追う、アラン監督得意のオカルト・ミステリー。

・88年「ホームボーイ=Home boy」(監督・マイケル・セレシン、出演・ミッキー、デブラ・フューアー、クリストファー・ウォーケン)・・・ミッキー原案によるニュージャージーの町へやってきた流れ者のボクサー、ジョニー・ウオーカー(=ミッキー)をめぐるラブ・ストーリー

・89年「フランチェスコ=Francesco」(監督・リリアーナ・カヴァーニ、出演・ミッキー、ヘレナ・ボナム=カーター)・・・ミッキーがなんと聖人フランチェスコの半生を演ずるというのだから、これはもう絶句!

・89年「ジョニー・ハンサム=Johnny Handsome」(監督・ウオーター・ヒル、出演・ミッキー、エレン・バーキン、エリザベス・マクガバン、モーガン・フリーマン)・・・醜い顔を整形して戻った強盗ジョン・セドレイが裏切り者への復讐を図る。(・・・ミッキーはまさに水を得た魚の如し!)

・90年「蘭の女=Wild Orchid」(監督・ザルマン・キング、出演・ミッキー、キャリー・オーティス、ジャクリーン・ビセット)・・・純粋なキャリアウーマン、エミリー(=キャリー)はブラジルで謎の男、ウイーラー(=ミッキー)と出会い歪んだ愛の世界へと導かれる〜〜これは「ナイン・ハーフ」の世界だ。

・90年「逃亡者=Desperate Hours」(監督・マイケル・チミノ、出演・ミッキー、アンソニー・ホプキンス、ミミ・ロジャース)・・・愛人であった女弁護士から拳銃を奪って脱獄した凶悪犯マイケル・ボスワース(=ミッキー)はその女弁護士を狙う・・・こういう役を演ずると本当にミッキーは光る!(リチャード・キンブル主人公の逃亡者とは別作品)

・91年「ハーレイダビッドソン&マールボロマン=Harley Davidson and the Marlboro Man」(監督・サイモンウィンサー、出演・ミッキー、ドン・ジョンソン、チェルシー・フィールド、ヴァネッサ・ウイリアムズ)・・・不良中年の二人は現金輸送車を襲うが、中身は麻薬で、組織が送った殺人グループと闘う破目に陥る。・・・軽快なテンポと派手なアクションの快作。

 〜〜と85年からここまでが、ミッキーの黄金時代。主演でもワル役が多いのが彼ならではあるが、それにしても実に多くの作品に出ているし、B級作品まで含めてその全て輸入公開されているという処に、当時のアメリカのみならず、わが国での人気の程が偲ばれる。 しかし、何故かこの直後から人気が失墜、ワキにまわっての悪役が多くなる。 その皮切りが、

・92年{ホワイト・サンズ=White Sands}(監督・ロジャー・ドナルドソン、出演・ウイレム・デフォー、ミッキーメアリー・エリザベス・マストラントニオ、サミュエル・ジャクソン)・・・レイ保安官(=デフォー)は、謎の女レーン(=メアリー)の手引きで、FBI捜査官(=サミュエル)が仕掛けた陰謀に挑む。ミッキーは、主人公と対決する、CIA崩れの武器商人レノックス役で、極悪非道振りがもうちゃんと板についている。(クライマックスの、ホワイ・トサンズの文字通り白砂の世界がきれいだ!それと“ブス“のメアリー・エリザベスが、ここでは何故か魅力的である。)

・97年「ダブルチーム=Double Team」(監督・ツイ・ハーク、出演・ジャン=クロード・ヴァン・ダム、デニス・ロッドマン、ミッキー)・・・元CIAのクイン(=ヴァン・ダム)は、妊娠中の彼の愛妻を誘拐し、事件を追うクインの流れ弾で死んだ息子の復讐を図るテロリスト、スタブロス(=ミッキー)と対決する。ここでも、香港映画界の巨匠・ツイ監督の歯切れのいい演出のもとで、ミッキーの見事な凶悪犯ぶりがB級活劇を盛り上げている。

・97年「レインメーカー=The Rainmaker」(=ヴォイトの項で掲出)・・・ミッキーは主人公の結果的な恩人となる(?)メンフィスの悪徳弁護ブルーサー・ストーン役。ここではかつての気品をかすかに残してインテリやくざの雰囲気をよく醸し出してカッコよく、結構存在感を示している。さすがのワルもコッポラ監督の起用に応えて、真面目に頑張ったのかもしれない。

そして同じ97年にはあの出世作の続編「ナインハーフ 2」が製作されたが、日本では公開されなかった(人気絶頂の頃なら考えられないことだ!)。  更に、

・00年「追撃者=Get CARTER」(監督・スティーヴン・ケイ、出演・シルヴェスター・スタローン、ミランダ・リチャードソン、マイケル・ケイン、アラン・カミング、ミッキー)では、故郷に帰って弟の死の真相を探るベガスの取立て屋カーター(=スタローン)の前に立ち塞がる、昔の友達で今は街の悪徳ボスという役処。

スタローンを向こうに廻して肉体的に見劣りせず、取っ組み合ってぶちのめす程迫力と凄みは充分。しかし中年太りした肉体に加え、その顔つきもかつてのノーブルさは消えうせ、もうすっかり悪党面になっている。・・・こうなったのも酒・モク・ヤク(?)に浸り、自らかつての格好のいいイメージと、シャープな肉体を崩していった自業自得の結果といえようか。 えぇーい、もうこうなったら徹底して悪(ワル)のイメージで突っ走ってもらいたい。  

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