そして、もっとコワイといえば・・・

ジャンヌ・モロー JEANNE  MOREAU

    1928年、パリ生まれ                                                              

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(昔)と(今)

コワイといえば、その究極ともいえるのが、名優・ジャンヌ・モローの68年・「黒衣の花嫁=la Mariee etait en Noir」(監督・フランソワ・トリュフォー、出演・モロー、ジャン=クロード・ブリアリ、ミッシェル・ブーケ、クロード・リッシュ)・・・挙式を終え教会を出ようとしたところで、向こうのビルに隠れた何者かに夫を銃殺された花嫁は執念で犯人グループを突き止め、やがて一人一人誘惑しては地獄へと落としていく。念願成就の直前に最後に残った主犯格はなんと別件で刑務所に収監。そこで彼女のとった行動は・・・復讐の鬼と化した女の強さと凍りつくような冷たさを秘めた美しさを表現したモローの演技は見事である。

  フランス映画黄金時代を飾ったモローは、54年・「現金に手を出すな=Touchez pas au Grisbi」(監督・ジャック・ベッケル、出演・ジャン・ギャバン、ルネ・ダリー、リノ・ヴァンチュラ、モロー)あたりから当時主流の(?)退廃的色気の女優として売れ出し、名匠ルイ・マル監督との出会いにより57年・「死刑台のエレベーター=Ascenseur pour l’echafoud frantic」(音楽・マイルス・デイヴィス、出演・モーリスロネ、モロー、リノ・ヴァンチュラ、ジョルジュ・プージュリー)、58年・「恋人たち=les Amants」(出演・モロー、アラン・キュニー)で演技的にも開眼、トップ女優としての道を歩む。

59年・「危険な関係=les Liaisons Dangereuses 1960」(監督・ロジェ・ヴァディム、出演・モロー、ジェラール・フィリップ、ジャンヌ・ヴァレリー、アネット・ヴァディム)、60年・「雨のしのび逢い=Moderato Cantabile」(監督・ピーター・ブルック、出演・モロー、ジャン・ポール・ベルモント)、61年・「突然炎のごとく=Jules et Jim」(監督・フランソワ・トリュフォー、出演・モロー、オスカー・ウエルナー)、63年・「鬼火=les Feu Follet」(監督・ルイ・マル、出演・モーリス・ロネ、ベルナール・ノエル、モロー)・・・といった数々の秀作に出演、まさに名優の名に恥じない活躍をしている。

  本質的な「悪女」としての名演技が、62年・「エヴァの匂い=Eva」(監督・ジョセフ・ロージー、出演・モロー、スタンリー・ベイカー、ヴィルナ・リージ)・・・ヴェネチア社交界の花形で、次々と男を虜にしては彼らを破滅に追いやってしまうエヴァ。その“魔性の女”振りがなんともスゴイのである。(これはキャスリーン・ターナーもシャロン・ストーンも”脱帽”ではなかろうか?)

 モローが”真の大女優”たる所以は、大女優となった後でも芸術路線にばかり拘ることなく、サスペンス=64年・「マタ・ハリ=MataHari (監督・ジャン=ルイ・リシャール、出演・モロー、ジャン=ルイ・トランティニャン)では裸に近いようbな薄着を纏って超セクシーな演技を披露し、又アクション=64年「大列車作戦=the Train」(監督・ジョン・フランケンハイマー、出演・バート・ランカスター、ポール・スコフィールド、モロー、コメディ西部劇=65年・「ビバ!マリア=Viva Maria!」(監督・ルイ・マル、出演・モロー、ブリジッド・バルドー、ジョージ・ハミルトン)と幅広く、しかも老境に入っても01年・「Cet Amourla (監督・ジョゼ・ダヤン、出演・モロー、エーメリック・ドゥマリニー)の如く、気品と格調をもって堂々たる演技を続けていることである。まさに大女優である。

 

次ぎは、いよいよ、“美形”へといこう。

シャロン・ストーン  SHARON  STONE                                                     

(1958年、ペンシルヴァニア州生まれ)                                              

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  92年・「氷の微笑=Basic instinct」(監督・ポール・ヴァーホーヴェン、出演・マイケルダグラス、ストーン、ジーン・トリプルホーン)・・・殺人事件を追う刑事を虜にする女流作家。肌も顕わにアイスピックを振りかざす魔性の女ぶりがツボにはまって、話題沸騰。もともとのタイプとしてはスレンダーな正統派美人で、色気ムンムンとは程遠いのであるが、この大ブレイクで、新たなるセックス・シンボルとしてのイメージが定着。以降トップ女優として、“クールな魔性の女”路線をひた走ることとなった。

しかしそんな彼女もデビュー以来10年を超える長い無名の時代があったのである・・・。

・・・モデルを経て80年にウッディ・アレン監督の「スターダスト・メモリー」でデビューしたものの、没個性な美人タイプが災いしてか、印象度は薄く、しばらく端役が続く。

そうこうするうちに、“目敏さ”にかけては指折りの、B級映画専門のプロデューサー・メナハム・ゴーランが「インディ・ジョーンズ」のヒットに着目し、“秘境冒険もの”の「2匹目のどぜう」を狙った「ロマンシングアドベンチャー/キングソロモンの秘宝=King Solomon’s mines」(85年・監督・j・リー・トンプソン、出演・リチャード・チェンバレン、ストーン、ハーバート・ロス)でヒロイン役に抜擢された。

この作品は、H・R・ハガード原作で37年、50年、58年と3度映画化された「キング・ソロモン」(50年の作品=監督・コンプトン・ベネット&アンドリュー・マートン、出演・スチュアート・グレンシャー、デボラ・カー=が一番の内容か!)のリメイクで、過去の作品に遠く及ばない凡庸な出来栄えであったが、時流に合ったか、或いはトンプソンの職人芸が効いたか、思わぬヒットとなり、気をよくしたゴーランは直ちに第2作を製作。

「キングソロモンの秘宝2/幻の黄金都市を求めて= Allan Quatermain and the lost city of gold」 (86年/監督・ゲイリーネルソン、出演・リチャード・チェンバレン、ストーン、ジェームズ・アール・ジョーンズ、ヘンリー・シルヴァ)・・・若しこれがヒットしておれば、ここでストーンもブレイクしたかもしれないが、ところがこれが前作に輪をかけて酷い出来栄えで全くの不発に終わり、折角ヒロイン役になったストーンも脚光を浴びることなく、再び雌伏のときを余儀なくされてしまう。

87年・「ポリスアカデミー4/市民パトロール」(監督・ジム・ドレイク、出演・スティーヴ・グッテンバーグ、ババ・スミス)

87年・「アクション・ジャクソン/大都会最前線=Action Jackson」(監督・クレイグ・R・バクスリー、出演・カール・ウエザース)、88年・「刑事ニコ/法の死角=Nico above the law」(監督・アンドリュー・デイヴィス、出演・スティーヴン・セガール、ヘンリー・シルヴァ、ストーン・・・主人公ニコの妻役)

89年・「血と砂=Blood and Sand」(監督・ザビエル・エロリエッタ、出演・クルストファー・ライデル、アナ・トレント、ストーン・・・主人公の闘牛士を虜にする魔性の女役==ここに後のブレイクの原点があると言える!)

89年・「宇宙への選択=Beyond the Stars」(監督・デヴィッド・サパーステイン、出演・マーテイン・シーン、クリスチャン・スレイター、オリヴィア・ダボ、ストーン)

91年・「イヤー・オブ・ザ・ガン=Year of the Gun」(監督・ジョン・フランケンハイマー、出演・アンドリュー・マッカーシー、ストーン)とB級映画への出演が続き、それなりの演技をしてはいるのだが、相変わらず殆ど注目されることなく、

90年の斬新な映像で話題を読んだSF&SFXの秀作「トータル・リコール=Total Recall」 (監督・ポール・ヴァーホーヴェン、出演・アーノルド・シュワルツネッガー、レイチェル・ティコティン、ストーン、ロニー・コックス)での、主人公シュワちゃんの妻役もストーリーの流れの中では“刺身のつま”的存在で、殆ど話題に登らなかった。

 ところが、ところがである。何故か、ヴァーボーヴェン監督はここで彼女の秘めたる才能&魅力に突然の如く気がついたのである!? ・・・そうして冒頭の「氷の微笑」への連続起用と繋がる=彼女にとってヴァー監督はスターダムへの恩人といえよう。

 まさに、女は突如変身する!で、ストーン自身もこの後、公私ともに魔性の女の雰囲気を振りまいては、更に人気を高めてトップ女優の道を邁進してゆく。

93年・「硝子の塔=Sliver」(監督・フィリップ・ノイス、出演・ストーン、ウイリアム・ボールドウイン、トム・ベレンジャー)・・・「氷の微笑」の脚本を書いたジョー・エスターハスが再び脚本を手掛け、製作総指揮をとった作品で、当然前作のムードを維持したサイコ・サスペンス。ストーンは最新マンションで殺人事件に巻き込まれる離婚直後のキャリアウーマンといった役どころで、期待に違うことなく、エロチックサスペンスを盛り上げる。

94年・「わかれ道=Intersection」(監督・マーク・ライデル、出演・リチャード・ギア、ストーン)・・・これは一転してのロマンスもの。ストーンは“普通の”妻役で、これが周囲の期待に反したか、ラジー賞/ワースト主演女優賞を取ってしまったのはなんとも皮肉!

94年・「スペシャリスト=The Specialist」 (監督・ルイス・ロッサ、出演・シルヴェスター・スタローン、ストーン、ジェームズ・ウッズ、ロッド・スタイガー)・・・ストーンは主人公に復讐の為3人の爆破殺人を依頼するミステリアスな雰囲気のヒロイン役。終盤バスルームの中での文字通りの濡れ場で、見事な裸身を大サービスし、ニューセックスシンボルの期待に見事応えたといえよう。

95年・「カジノ=Casino」(監督・マーティン・スコセッシ、出演・ロバート・デ・ニーロ、ストーン、ジョー・ペシ、ジェームズ・ウッズ)・・・ストーンは女ハスラー・ジンジャー役。主人公=ヴェガスのカジノ「タンジール」の経営を任されたサム(=デ・ニーロ)に見初められ妻となるものの、奔放な性格は家庭に収まりきらず、やがて濡れ落ち葉のような存在の昔の恋人の許へと走る。スコセッシの演出のもと、4人の役者ががっぷりの熱演を見せるが、ストーンの“陥ちてゆく女”の演技もつぼにはまった演技で、ゴールデングローブ賞受賞。(=それまでワースト賞にしか登場しなかった彼女の、唯一の“名誉ある”受賞だ!)

95年・「クイック&デッド=the QuicK and the Dead」(監督・サム・ライミ、出演・ストーン、ジーン・ハックマン、ラッセル・クロウ、レオナルド・デカプリオ、ウッディ・ストロード)・・・悪名高き市長ヘロッド(ハックマンが見事な悪役振り!)が牛耳る田舎町へ現れた謎の女ガンマンがデス・トーナメントを勝ち抜き、ヘロッドと対決する。ライミ監督によるケレンミたっぷりな、マカロニウエスタンタッチのシャープな演出のもとで、ストーンの颯爽とした女ガンマン振りが光る。これが彼女のベストワンかもしれない?・・・・・・ともにブレイクする前の、ラッセル・クロウのチョイと哀しいガンマン振り、デカプリオの生意気な悪ガキ振りなども楽しめる。そして、私が永年贔屓にしてきたブラックスターの先駆者・ウッディ・ストロードの遺作となった点でも忘れ難い作品である。

96年・「悪魔のような女=Diabolique」(監督・ジュレマイア・チェチック、出演・ストーン、イサベル・アジャーニ、チャズ・パルミンテリ、キャシー・ベイツ)・・・全寮制男子校理事長ガイの暴力に悩む病弱な妻とその公認(?)の愛人(=ストーン)は協力してガイの殺害を図る・・・ストーンはまさにそのものズバリのタイトル名の役処。

  ところがこの後、何故か出演作の趣がコロリと変わる!

96年・「ラストダンス=Last Dance」(監督・ブルース・ベレスフォード、出演・ストーン、ロブ・モロー)・・・ストーンは19歳のときに押し込み強盗で2人を殺害した死刑囚。死刑執行間近で若き弁護士と知り合い恋に落ちるが・・・という異常状況設定での悲恋物語。

98年・「マイフレンドメモリー=the Mighty」(監督・ピーター・チェルソム、出演エルデン・ヘンソン、キーラン・カルキン、ストーン、ハリー・ディーン・スタントン)・・・なりはデカイが超気弱な少年と、不治の病に冒されながら勇気のある少年が助け合って成長していくヒューマンドラマ。ストーンは不治の病の少年の母親役。

98年・「スフィア=Sphere」(監督・バリー・レヴィンソン、出演・ダステイン・ホフマン、サミュエル・L・ジャクソン、ストーン)・・・太平洋の海底で発見された謎の物体を巡るSF。「ジュラシックパーク」のマイケル・クライトン原作&製作。・・・概して原作者が製作に乗り出すと、その作品はあまり成功しないし、そしてストーンの起用が成功してるともいえない。

99年・「背信の行方=Simpatico」(監督&脚本・マシュー・ウオーカス、出演・ニック・ノルティ、ジェフ・ブリッジス、ストーン、アルバート・フィニー)・・・20年前を起点にして、人生の明暗分かれた男女3人の愛憎劇。

99年・「ハリウッド・ミューズ=the Muse」(監督・アルバート・ブルックス、出演・アルバート・ブルックス、シャロン。ストーン、アンディ・マクダウェル、ジェフ・ブリッジス、シビル・シェパード)・・・スランプに陥った脚本家が「ツキを呼ぶ」と噂の“ミューズ”サラを訪ね、振り回される。・・・ハリウッド楽屋裏話で、劇中「キレがない!」と悩む脚本家にまつわるこの「脚本」がホントにキレがなくて全くつまらない。但し、久し振りに綺麗でゴージャスなストーンを拝むことが出来て、その点だけはよかったといえようか?

99年・「グロリア=Gloria」(監督・シドニー・ルメット、出演・ストーン、ジーン・ルーク・フィゲロア、ジェレミー・ノーサム)・・・情夫の罪を被った刑期を終えて戻った中年女グロリアが、その情夫の卑劣さに愛想をつかし、情夫に一家を惨殺された少年が握った秘密を巡って組織と対決する破目になる・・・ジョン・カサヴェテス監督の80年同名作品をルメット監督がリメイクしたが、脚本がもう一つひねりにかけて、ストーンの体当たり演技もややカラ回りの感が強い。

00年・「マイ・ビューティフル・ジョー=Beautiful Joe」(監督・スティーヴン・メトカーフ、出演・ストーン、ビリー・コノリー)・・・ケンタッキー州ルイビルに住む元ストリッパーのダメ母が、風変わりな流れ者と出会い、家族の絆を取り戻す〜という人情喜劇編。

00年・「ヴァージン・ハンド=Picking up the pieces」(監督・アルフォンソ・アラウ、出演・ウディ・アレン、デヴィッド・シュワイマー、チーチ・マリン、ストーン、キーファー・サザランド、エリオット・グールド)・・・浮気現場でカッとなった亭主(アレン)は不貞妻(ストーン)を殺し、バラバラにしてメキシコの砂漠に埋めるが、その手首が奇跡を起こしたことから手首争奪戦が始まる・・・“そんな馬鹿な!”という筋立てのコメディ。ついに、浮気性で奔放なストーンはバラバラにされ手首だけになっちまいました!《嗚呼―!》

・・・つまり96年「ラストダンス」以降は、“美しきセックスシンボル”であることをやめ、汚れ役も厭わず、真の女優としての転進を図ったように思われる。しかしそれが必ずしも成功したとは言えず、また容色の衰えもあり最早華やかなフットライトを浴びることは無くなっている。・・・そのきらめくような輝きは‘92〜’96の僅か5年間、まさに“花の華は短くて”の感がつよい!

 

続いて、今(=’02)が旬といえるのが、遅れてきたミュージカルスター!

キャサリン・ゼタ・ジョーンズ CATHERINE ZETA-JONES

(1969年 イギリス、ウエールズ州生まれ)                                      

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02年・「シカゴ=Chicago:the musical」(監督・ロブ・マーシャル、出演・リチャード・ギア、レニー・ゼルウィガー、ゼタ・ジョーンズ、クイーン・ラティファ、ジョン・C・ライリー)・・・これが本場のショービジネスだ!という感じで久し振りに抜群にキレのいいダンスと音楽を楽しめるミュージカルでありましたが、中でもキャサリンの見事なダンスと歌(=特にオールザットジャズ)がなんと言っても最高。アカデミー助演女優賞獲得も当然!の演技でした。

まさに今が盛りのあでやかさでありますが、ドスの効いた声&目つきや素振りに”姐さん“の貫禄充分で、かつての清楚な美人が、今やすっかり艶(つや)やかな悪女振りが板についてきたなあ!と感じたのは私一人だけなのかもしれません(?)。

・・・彼女は子供の頃から歌とダンスに興味を持ち、未来のミュージカルスターを夢見ていたようで(おしゃま振りが想像されます!)15歳のときにはロンドンの舞台に立ち、ミュージカルのヒロイン役も演じていたということです。しかしそのままミュージカルまっしぐらというわけではなかったようで、映画(TV映画)のデビューが21才のとき、90年・「シェーラザード/新・千夜一夜物語=les Mille et une nuits」(監督・フィリップ・ド・ブロカ、出演・ゼタ・ジョーンズ、ジェラール・ユグノー、ヴィットリオ・ガスマン)

〜TVの深夜映画には時々「拾い物、掘り出し物」があるが、これがその一例・・・ブロカ監督の軽妙な演出が冴える奇想天外な「千夜一夜物語」で、その中で七変化で忙しく狂言回しを務めるシェラザード=ゼタがなんとも清楚で美しい!。・・・尤もこれがゼタであると認識したのは暫く後のこと(=「マスク・オブ・ゾロ」のヒロイン役あたり)であるが、ともかくそういう経緯があって、芸道一筋、少女のころの夢を実現させて、名実ともに謳って踊れるトップスターに上り詰めた彼女に大きな拍手を送りたい!のであります。

誰も(私以外は!?)注目しなかったシェラザードの後は、

92年・「コロンブス=Christopher Columbus:the Discovery」(監督・ジョン・グレン、出演・マーロン・ブランド、トム・シュレック、レイチェル・ウォード、ジョージ・コラフェイス=コロンブス、ゼタ・ジョーンズ)・・・勿論西回りのインド航路開拓に賭けた冒険児・コロンブスの生涯を描いた映画で、ゼタは若きコロンブスの恋人ベアトリス役。何故か、彼女自身この作品にはあまり触れたがらないのだとか・・・。楽屋落ち的にいうと・・・新大陸発見500年を記念して、「スーパーマン」で有名な製作者イリヤ・サルキンドは一大冒険物語を企画し、脚本は「ゴッド・ファーザー」のマリオ・プーゾ、そして監督にリドリー・スコットを起用。

 ところが、スコットは単なる絵物語とすることに反対し、企画は分裂。なんとスコットは自ら製作&監督により「1492:Conquest of Paradise」(出演・ジェラール・ドパルデュー、シガニー・ウイーヴァー、アーマンド・アサンテ)を作ってしまった。世評そして興行はスコットに軍杯があがり(スコットの意図からして、決して痛快な映画ではなかったのであるが)、そして本作品は不評でラジー賞(=ワースト映画賞)候補に上がってしまった。(サルキンドは本作のハズレで再起不能のダメージか?) 〜というわけで、ゼタは初め“ヤッタワヨ、大作出演!”と喜んだのかもしれないが、この作品でブレイクという訳にはいかなかったのである。

 この後しばらく、主にTV映画で、92年・「ヤング・インディ・ジョーンズ/the Daredevils of the Desert」、94年・「Return of native」、「the Cinder of path」、95年・「Katharina die Grobe」、96年・「Titanic」・・・このうち94〜95の3本は主役で、特に「Katharina〜」はキャサリンがキャサリン大帝を演じ、ジャンヌ・モローやオマー・シャリフを脇に従えての主役。

 一方映画では、93年・「Splitting heirs」(監督・ロバート・ヤング、出演・リックモラレス、エリック・アイドル・・・スラップスチック・コメディ)、95年・「ブルージュース=Blue juice」(監督・カール・ブレチェザー、出演・ショーン・パートウィー、ゼタ・ジョーンズ、ユアン・マクレガー・・・イギリスのサーファー青春ドラマ)とB級映画が続き、96年・「the Phantom」 (監督・サイモン・ウインサー、出演・ビリー・ゼイン、クリスティ・スワンソン、トリート・ウイリアムズ、ゼタ・ジョーンズ)/《TV放映のみ》・・・ではヒロインかと思いきや、なんと悪党のボスの相方(途中で寝返ってヒロインを助ける)という冴えない役どころ。プロデューサー達はどうして彼女の魅力に気がつかないのか?!ともどかしくなる。

 しかして、努力はいつかは報われる!

98年・「マスク・オブ・ゾロ=the Mask of ZORO」(監督・マーティン・キャンベル、出演・アントニオ・バンデラス、アンソニー・ホプキンス、ゼタ・ジョーンズ)で、初めてメジャーな作品のヒロイン役=総督ラファエル・モンテロの美しき愛娘エレナ(実は初代ゾロ=ドン・ディエゴの娘)。ゾロの活躍(なんと、初代=ホプキンスと2代目=バンデラスがいるのだ!)を、軽快なタッチで描いた活劇作品としてヒットし、ここで漸くゼタの輝くばかりの美貌が世間衆知のところとなる。そして

99年・「エントラップメント=Entrapment」(監督・ジョン・アミエル、出演・ショーン・コネリー、ゼタ・ジョーンズ)ではコネリーとがっぷり四つに組んでの泥棒ゲーム。全身黒レオタード姿で、赤外線シールドを潜り抜けるまさに雌豹の如きしなやかな動きは、観客の脳裏に焼きつくような強烈な印象を与えた。 (天性の美貌に加え、少女の頃よりダンスで鍛えた才能が花開いてきたのである!) 尤も、同年の、

99年・「ホーンティング=the Haunting」(監督・ヤン・デ・ボン、出演・リーアム・ニーソン、ゼタ・ジョーンズ)・・・例えば、(古い話で恐縮ですが)中西 太氏とか山内 一弘氏はコーチとしては素晴らしいが、監督の才は無かった・・・それと同様にデ・ボンも撮影担当としてのカメラワークなら抜群であるが、監督となるともうダメで、これは彼の非才振りを証明したような、怖くないホラー映画で、ゼタもあまりいい使われ方はしていない。

 まあ、こうして世間も突然一人のビューティに気づいた次第であるが、密かにその魅力に惹かれた男がいて、それがマイケル・ダグラス。98年にフランスの映画祭で知り合い、00年/9月に結婚。ハリウッドを代表する映画人の妻となったことで、彼女も“セレブの世界”入りを果たしたことになる。

00年・「トラフィック=Traffic」(監督・スティーヴン・ソダーバーグ、出演・マイケル・ダグラス、ドン・チードル、ベニチオ・デル・トロ、ゼタ・ジョーンズ、ルイス・ガスマン、デニス・クエイド)・・・アメリカーメキシコを結ぶ麻薬コネクション“トラフィック”を巡って起きる3つのストーリー。(普通こういうのは中央と辺境、表と裏で展開するストーリーがやがて1つに収斂していき、その収斂振りの妙が見所となるのであるが、本作は残念ながらそうならない。・・・なんでこれがアカデミー監督賞や助演男優賞、脚色賞、編集賞を取ったのかさっぱり分からない凡作。)

 ゼタは麻薬王アヤラの妻役。初めは上品でしとやか。ところが夫が裏切りにあって窮地に立たされるや、腹を据えて司法相手に一歩も引かずに内助の功を発揮する。その凄みは極道の妻・岩下志麻もビックリ!といったところで、かつての清楚な美人もどこへやら、妖艶な魅力タップリの新・悪女誕生といったところ。(僅か1年前の「エントラップメント」とは驚くばかりの変容振りでありますが、実世界でもこの頃第1子を懐妊していたわけで、母は強し!を地でいく格好)

 で、冒頭の「シカゴ」。ダグラス夫人でなければ、この役柄はまわってこなかったのかもしれないが、おそらくミュージカルスターを夢見て成長した彼女にとって絶対見逃す手はないチャンス到来!ということであったろう。子育てと次の懐妊の間にも拘わらず、必死でスターの座を掴もうとする根性の女・ヴェルマ役に挑戦し、永年発揮できなかった才能と鍛錬の成果をここで一気に爆発させたのである。その素晴らしい演技に対し万来の拍手を浴びてオスカー像を手にしたときには“これぞ女優の本懐”と心から喜びに浸ったであろう。・・・無名のころからその道程を見てきた私のような者にとっても、実にめでたし、めでたし!であります。

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