ジャン・マリア・ヴォロンテ   GIAN MARIA VOLONT

1933年 イタリア/ミラノ生まれ 、1994年ギリシャ/フロリナにて逝去(心臓発作)

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“マカロニウエスタン”はここに始まったといえる64年「荒野の用心棒=Per un pungno DollariFor a Fistfull of Dollars」において、敵対するファミリーの一方、ロッホ一家のボス、ロマーノとして凄みのある演技を見せたのがジャン。 次いで翌65年の「夕陽のガンマン」(=リーの項で詳述)において、“賞金首”としてガンマン・モンコ(=クリント・イーストウッド)が狙い、そして愛してやまない一人娘をその恋人から略奪し犯して殺害した、にっくき仇としてモーティマー大佐が追い求める、野盗の頭目エル・インディオとして、その残忍なキャラクターを見事に演じ、セルジオ・レオーネ監督の期待に応えた。

翌66年の「群盗荒野を裂く=Quien sabe?」(監督・ダミアーノ・ダミアーニ、共演・クラウス・キンスキー、マルティーヌ・ベズウイック)では主役に抜擢されるや、革命軍に与し、粗野で酒と女好きで情にもろい盗賊の首領を生き生きと演じてみせた。本作品は邦訳タイトルも格好いいが、メキシコ革命を題材にした作品としては抜群に切れ味のよいマカロニ・ウエスタンの傑作である。

これで評価を高めたヴォロンテは主役級に仲間入りし、次第にその演技と役柄を広げていく。

・67年「悪い奴ほど手が白い=a ciasucuno il suo」(監督・エリオ・ペトリ、出演・ジャン、イレーネ・パパス)・・・シシリアを舞台に殺人事件を追うミステリー

年「血闘のジャンゴ=Faccia a Faccia」(監督・セルジオ・ソリーマ、出演・ジャン、トーマス・ミリアン)・・・ジャンは気弱な大学教授で、西部に流れてジャンゴ(=ミリアン)と知り合い、無法者の世界へと入っていくという風変わりな役どころ。

・68年「ミラノの銀行強盗=Bandit a Milano」(監督・カルロ・リッツァーニ、出演・ジャン、トーマス・ミリアン、マーガレット・リー)・・・ミラノで実際に起きた銀行強盗事件を題材にした作品。

年「枯葉の街=un Corps・・・une Nuit」(監督・ジョルジオ・ボンテンピ、ジャン、ミレーユ・ダルク)・・・フランスへ進出しダルクと共演した、イタリアの新聞記者とパリ娘の恋愛映画で、あの髭面の悪党からは信じられない一編!

・69年「山いぬ=lAmante di gramigna」(監督・カルロ・リッツァーニ、出演・ジャン、ステファニア・サンドレッリ)・・・「山猫」ならぬ本作も19世紀のシチリアが舞台。親父を冷酷な貴族に殺された農夫がゲリラを組織し、復讐に向かう。

年「東風=le Vent d’est」(監督・ジャン・リュック・ゴダール他、出演・ジャン、アンヌ・ヴィアゼムスキー)・・・なんと、あのゴダールが西部を舞台にした前衛作品に主演!

・70年「仁義=le Cercle  rouge」(監督・ジャン・ピエール・メルヴィル、出演・アラン・ドロン、イヴ・モンタン、ジャン)・・・巨匠メルヴィルのフィルム・ノワールでフランスの二大俳優とがっぷりの共演!  

  ・・・いち早く脚光を浴びたジュリアーノ・ジェンマやフランコ・ネロがハリウッドを目指したの対して、ジャンはパリへ進出したわけである。フランスでの作品としては〜〜

・72年「L'attentat」(監督・イヴ・ボワッセ、出演・ジャン、ジャン=ルイ・トランティニャン、ジーン・セバーグ、ロイ・シャイダー)・・・公開されなかったのが不思議な感じの魅力的なキャスティングではないか!

・79年「エボリ=Cristo si e fermato a Ebori」(監督・フランチェスコ・ロージー、出演・ジャン、イレーネ・パパス)・・・ムッソリーニ政権下、イタリア南部の文化果つる寒村に流刑になった反ファシズム作家の村人たちとの交流を描いた異色作。

・88年「黒の過程=L'oeuvre au Noir」(監督アンドレ・デルヴォー、出演・ジャン、アンナ・カリーナ)・・・教会の教えに背いても学問の探求を続ける医師の姿を描くという、これまたシリアスな異色作。〜〜と続いた。いずれも極めてシリアスな作品群であるが、一方本拠地イタリアにおいても然りで、

・71年「死刑台のメロディ=Sacco and Vonzetti」(監督・ジュリアーノ・モンタルト、出演・ジャン、リカルド・クッチョーラ)・・・20年代アメリカの共産主義弾圧と人種差別の犠牲者となったサッコ=ヴァンゼッティ事件をドキュメンタリータッチで描き、アメリカの狂気に迫った傑作で、ジャンの演技力が冴える。彼の文句なしの代表作といえるであろう。また、モリコーネの哀切を帯びた音楽と、この時代の旗手=”反戦歌手”ジョーン・バエズの主題歌も印象深い。

・72年「黒い砂漠=il Caso Mattei」(監督・フランチェスコ・ロージ、出演・ジャン、ルイズ・スカルツィーナ)・・・イタリアの石油資源確保の為にメジャーに真っ向うから挑戦した、ENI(イタリア炭化水素公社)総裁エンリコ・マッティの専用機爆発による死亡の謎を追った作品。ジャンはマッティその人を演じた。この当時最早”マカロニの盗賊”のイメージを完全に払拭し、イタリア社会派の第一人者といっても過言ではない演技力を発揮していたといえる。

・73年「コーザ・ノストラ=Lucky Ruciano」(監督・フランチェスコ・ロージ、出演・ジャン、ロッド・スタイガー、エドモンド・オブライエン、チャールズ・シラクーザ刑事=本人役で出演)・・・マフィアの大ボス、ラッキー・ルチアーノ(=ジャン)の”太く&短く燃えた”波乱の生涯を描いた、実録マフィアもの。

・90年「宣告=Porte aperte」(監督・ジャンニ・アメリオ、出演・ジャン、エンニオ・ファンタスティキーニ)・・・30年代、ファシズム下のイタリアで、凶悪犯の死刑裁判を通して、死刑について問題を提示した作品。

この後3本のイタリア映画に主演し、

・94年「Tirano Banderas」(監督・ホセ・ルイス=ガルシア・サンチェス、出演・ジャン、アナ・ベレン)が遺作となった。

・・・B級娯楽映画のならず者からスタートし、次第に演技力を高めて、後年は(=映画が芸術と娯楽を両立させて、最も輝いていた時代に!)シリアスな作品群で大いに存在感を示した、マカロニ出世物語の代表格といえるであろう。61才での早逝が惜しまれてならない。

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