ウエスタン

映画は総合娯楽(総合芸術)であり、音楽もまたその重要な構成要素をなしている。いや、中には映画そのものの印象は薄れ、そのなかの音楽だけが残っている場合すらある。「大砂塵」の「ジャニ−ギタ−」(音楽・ヴィクタ−・ヤング)などはその最たる例であろう。「誇り高き男」(ライオネル・ニュ−マン)なども口笛のテ−マ曲が印象的で、凡庸な出来の映画を押上げた。

これらは何れも西部劇であるが、そういえば、西部劇には結構いい音楽が多い。なにしろ神様ジョン・フォ−ドで既に「駅馬車」(ボリス・モロス、リチャ−ド・ヘイグマン―因みにSTAGECOACH=駅馬車の名訳は淀川長治さんであると)、「黄色いリボン」(リチャ−ド・ヘイグマン)、「騎兵隊」(デヴィッド・バトルフ)と名曲に彩られた作品がある。

  「シェ−ン」の「遥かなる山の呼び声」(V・ヤング)は不朽の名曲と言っても過言でないし、「真昼の決闘」(ディミトリ・ティオムキン)でテックス・リッタ−が唄った「ハイ・ヌ−ン」(但しフランキ−・レインの歌の方がヒットした)、同じくD・ティオムキン作曲の「OK牧場の決闘」はフランキ−・レインの朗々たる歌いっぷりが印象的だ。

タイトルバックに流れた「大いなる西部」(ジェロ−ム・モロス)、シネラマ「西部開拓史」(アルフレッド・ニュ−マン)のテ−マは格調高い。 「〜開拓史」では、蒸気船(ショウボ−ト)の甲板でグレゴリ−・ペック扮するギャンブラ−とデビ−・レイノルズのラブシ−ンに流れた「牧場の我が家」は「グリ−ン・スリ−ブス」を巧みに取入れて心にしみ込むような感じであった。

  シネラマ西部劇といえばもう一つ「マッケンナの黄金」がある。クインシ−・ジョ−ンズがD・ティオムキンのタッチを意識して作曲し、ホセ・フェリシア−ノに唄わせた主題歌は秀逸だ。(そういえば、この作品にはD・ティオムキンが製作に加わっている・・・但し興行的には大失敗であった由。)

「アラモ」(D・ティオムキン)の「グリ−ン・リ−ブズ・オブ・サマ−」は何故か郷愁をそそる。これはトランペットをフィ−チャ−したオリジナルとともに、ブラザ−ス・フォ−のコ−ラスもいい。

トランペットとくれば「リオ・ブラボ−」(D・ティオムキン)の「皆殺しのテ−マ」が登場する。(「リオ〜」のシーン中で、誰かが、メキシコ軍がアラモの砦に総攻撃をかけた時に流した曲だと説明していたが、これは本当であろうか?) この映画ではリッキー・ネルソンのギターの弾き語りと共に、元祖・歌うスターのディーン・マーティンがしみじみと歌う「ライフルと愛馬」も忘れがたい。

ジョニ−・ホ−トン唄う「アラスカ魂」(ライオネル・ニュ−マン)はノリがいい。このあたりはジョン・ウェインの世界、そういえば彼がやっとアカデミ−主演男優賞を取った「勇気ある追跡」(エルマ−・バ−ンスタイン)は共演したグレン・キャンベルが主題歌を唄った。

 おっと、忘れてならない、マリリン・モンロ−が“ノ−リタ−ン〜“と唄ったのが「帰らざる河」(ライオネル・ニュ−マン/オット−・プレミンジャ−監督、ロバ−ト・ミッチャム、モンロ−主演)だ。

  E・ バ−ンスタイン作曲の「荒野の7人」&「続荒野の七人」の軽快なテンポはジョン・スタ−ジェス監督による歯切れのいい演出(「続」はバ−ト・ケネディ監督)と共に、黒沢 明・「七人の侍」のリメイクを盛り上げた。TVのCMにもよく使われ、西部劇のスタンダ−ドナンバ−と言えよう。

 考えるに日本の監督で音楽を一番大事にしたのが黒沢ではないだろうか。まず早坂文雄、佐藤 勝、次いで武満 徹、そして後年は池辺 晋一郎を起用、彼等が重厚な作品を音の面から支え、黒沢芸術の一翼を担ったのである。

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