イタリアの名曲

  既に「ヨ−ロッパの夜」、「世界の夜」といったショ−・ドキュメントの脚本を手掛けていたヤコペッティ監督はこの世界的大ヒットで一躍残酷ドキュメンタリ−の第一人者となり、以後「続・世界残酷物語」、「世界女族物語」、「さらばアフリカ」(密猟者に巨象が次々と倒されるシ−ンが哀れを誘う)、「鎖の大陸」とヒットを飛ばし、何れもリズ・オルトラ−ニが哀愁感たっぷりの音楽を提供している。

イタリアンドキュメンタリ−といえば、フォルコ・クィリチ監督「最後の楽園」の、 「パペ−テの夜明け}は、南海の楽園への夢を掻き立ててくれる。タヒチはあまりに遠いので、ハワイとか、グレ−トバリアリ−フの海で船に乗ってこのメロディを口ずさむと辺りの景色にピッタリだ。  

この音楽はアンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニ−ノ。彼のデビュ−がオ−ソン・ウエルズの幻の名作「オセロ」というからスゴイ。次に伊・ドキュメンタリ−映画の嚆矢といえる南米の大自然を描いた「緑の魔境」(川に入った牛がアッという間にピラニアに食い尽くされるシ−ンがショックであった)を手掛けている。そして「ロ−マオリンピック1960」(夕陽のアッピア街道を走る裸足のアベベの姿が印象的だ)も担当しているから、その時点でイタリアを代表する映画音楽作曲家の一人であったといえようか。

このオリンピック記録映画の共同音楽担当がアルマンド・トロヴァヨ−リで、二人はその五年前に一緒に組んで「河の女」(当時22才のソフィア・ロ−レンが眩しいくらいに輝いている!)の「マンボバカン」を大ヒットさせている。

トロヴァヨ−リはヴィットリオ・デ・シ−カ監督と組んで「昨日・今日・明日」、「ああ結婚」(共にS・ロ−レン&M・マストロヤンニ主演)を作った後、ロッサナ・ポデスタが旦那のマルコ・ヴィカリオ監督の為に奮闘した「黄金の七人」シリ−ズで名を上げた。(この第一作のジャズスキャットとバロックを合わせたような音楽は特に印象的である。


  ビットリオ・デ・シ−カ監督は戦後イタリアンリアリズム(ネオレアレズモ)の代表格で、「靴みがき」、「自転車泥棒」、「ミラノの奇跡」 と続き、その実力に注目した「風と共に去りぬ」の大プロデュ−サ−・デビッド・O・セルズニックが起用したのが 「終着駅」(ジェニファ−・ジョ−ンズ、モンゴメリ−・クリフト主演)。

そしてこれらの名画の音楽を全て作ったのがアレッサンドロ・チコニ−ニで、彼はこの後デヴィッド・リ−ン監督の「旅愁」(キャサリン・ヘップバ−ン、ロッサノ・ブラッツイ主演、主題歌の「セッテンバ−ソング・イン・ヴェニス」がヒット)も担当、他に娯楽物では「ユリシ−ズ」(マリオ・カメリ−ニ監督、カ−ク・ダグラス、シルヴァ−ナ・マンガ−ノ主演)がある。

戦後イタリア映画でデ・シ−カと双璧をなすのがピエトロ・ジェルミ監督。「鉄道員」で強烈な印象を残すが、監督作品は12本、そしてその全ての音楽を担当したのがカルロ・ルスティケリで、特に「刑事」の「死ぬほど愛して」は映画から独立して大ヒットした。

ジェルミの本領はシリアス・リアリズムより艶笑コメディで、「イタリア式離婚狂想曲」(M・マストロヤンニ主演)、「誘惑されて棄てられて」(ステファニア・サンドレッリ主演)、米国からダスティン・ホフマンを招いた「アルフレ−ドアルフレ−ド」と二人の協力は続く。ルスティケリにはジェルミとのコンビの外に「禁じられた恋の島」(ダミア−ノ・ダミア−ニ監督)、そして何よりも最大のヒット曲として、名曲「ブ−ベの恋人」(ルイジ・コメンチ−ニ監督、ジョ−ジ・チャキリス、クラウディア・カルディナ−レ主演)がある。

  イタリア映画音楽ナンバ−ワンはやはりニ−ノ・ロ−タだ。多くの大監督と組んで彼等の代表作に相応しい名曲を数多く創りだしているところがスゴイ。一番多いのがフィデリコ・フェリ−ニで、「道」はジュリエッタ・マッシ−ナの名演技と「ジェルソミ−ナ」の歌で記憶に残る。同じくマッシ−ナが主役の「カビリアの夜」、「甘い生活」(M・マストロヤンニ主演、アニタ・エクバ−グのグラマラスな肢体が見事!)、更に「81/2」、「サテリコン」、「フェリ−ニの道化師」、「フェリ−ニのロ−マ」、「カサノヴァ」とフェリ−ニの黄金期の作品を支えている。

次にルキノ・ヴィスコンティと組んで「白夜」そして「山猫」(バ−ト・ランカスタ−、A・ドロン、C・カルディナ−レ主演)。フランコ・ゼフレッリとは「じゃじゃ馬ならし」(マイケル・ヨ−ク、エリザベス・テイラ−、リチャ−ド・バ−トン主演)そして「ロミオとジュリエット」(大ヒットしたあの曲と共に、当時15才のオリヴィア・ハッセイの可憐さが記憶に鮮明!)。

 ルネ・クレマンとが、あの傑作「太陽がいっぱい」(A・ドロン、マリ−・ラフォレ、モ−リス・ロネ主演)―この曲は人気投票すれば、映画音楽ベストワンかもしれない。イタリアの大プロデュ−サ−、D・ラウレンティスと「戦争と平和」(キング・ヴィタ−監督、A・ヘップバ−ン、H・フォンダ主演)、「ワ−テルロ−」(「ハムレット」のセルゲイ・ボンタルチュク監督)。 そして極めつけが、フランシス・コッポラ監督の最高傑作 「ゴッドファーザー」(パートT、Uともにアカデミー賞を取ったのはこれのみ!)の「愛のテーマ」は永遠のスタンダードナンバーとなっている。そしてタイトルバッグに流れる「序曲」もまた素晴らしい!

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