フランスの巨匠たち

 フランスの巨匠がミッシェル・ルグランだ。ジャック・ドミ−監督、カトリ−ヌ・ドヌ−ヴと組んでのミュ−ジカルが「シェルブ−ルの雨傘」と「ロシュフォ−ルの恋人たち」(これは米国からジ−ン・ケリ−とジョ−ジ・チャキリスを助っ人に呼んでいる。―余談だが昨年−97年−NHKTVの番組・〈ときめき夢サウンド〉にルグランが出演して華麗なピアノ捌きを披露した後、白鳥英美子(トワ・エ・モア)の唄ったシェルブ−ルの雨傘を、日本人で自分の曲をこんなに上手く歌えるのかといった表情で絶賛していたのが印象深い)

アカデミ−賞を取ったのが「華麗なる賭け」(新人女優のフェイ・ダナウエイが主演のS・マックィ−ンを喰う程の貫禄に驚いた)の主題歌で、ノエル・ハリソン(名優レックス・ハリソンの息子)が唄った「風のささやき」。これはまさにルグランならではの流麗な旋律で、私の一番好きな映画主題歌だ。 

(この映画は、99年に原題の「トーマス・クラウンズ・アフェアー」でリメイクされた。ピアーズ・ブロスナンとレネ・ルッソが主演。ルッソは当時40才を超えていたが、ビーチでのヌードまで披露しての大サービス。リメイク版におけるビル・コンティの音楽は初代に遠く及ばずである。但しルグランに敬意を表してか、二人のそぞろ歩きの折に、この”風のささやき”がサックスによるメロディで流れていたのが印象的!)

マックィ−ン主演ではもう一つ「栄光のルマン」がある。他にベルモンドで「タヒチの男」,「コニャックの男」、リチャ−ド・レスタ−監督の「三銃士」、そして忘れてならないのがクロ−ド・ルル−シュ監督の「愛と悲しみのボレロ」、これはフランシス・レイとの共作だが、音楽よりもラヴェルのボレロに合わせて踊るジョルジュ・ドンのダンスのほうがより印象が強いかもしれない。


  フランシス・レイ=クロード・ルル−シュはE・モリコ−ネ=S・レオ−ネ、或いはN・ロ−タ=F・フェリ−ニを超える《作曲―監督》の最強の組合わせと言えよう。32−33年生まれと歳も略同じ二人のコンビは66年に「男と女」(アヌ−ク・エ−メ、ジャン・ルイ・トランティニアン主演)の大ヒットでスタ−ト(これは20年後に同じ組合わせでパ−トUがある)。

 以降「パリのめぐり逢い」そして不朽の名曲の一つと言える「白い恋人たち/グルノ−ブルの13日」をはじめ、ルル−シュ本領の《男と女》を描き続け、最近の「ライオンと呼ばれた男」(老けたベルモンドがいい味を出した)、「レ・ミゼラブル」(同じくベルモンド主演)、「男と女・うそつきな関係」まで実に30年の永きに渡って16本の作品を送り出しているからスゴイ!(二人の歳からして今後もまだ続くであろう)

    −他にコンビの作品を並べてみると、「愛と死と」「あの愛をふたたび」「流れ者」「冒険また冒
     険 」「男と女の詩」「マイラブ」「愛よもう一度」「夢追い」とある −

レイはこの他にもテレンス・ヤング監督の「うたかたの恋」(エジプト人のオマ−・シャリフが悲恋のオ−ストリア皇太子を演じた)、ミシェル・ポワロン監督の「個人教授」(少年―年上の女の恋物語・・・この場合ナタリ−・ドロン・・・のハシリ)、ルネ・クレマン監督の「雨の訪問者」(チャ−ルス・ブロンソン主演、これもなかなかの名曲だ!)、クリスチャン・ジャック監督のフレンチウエスタン「華麗なる対決」(B・BとC・C=バルド−とカルディナ−レ主演)と数多い。そして青春恋愛映画の最高峰とも言えるア−サ−・ヒラ−監督の「ある愛の詩」(ライアン・オニ−ル、アリ・マックグロ−主演)のテ−マ曲も大ヒットした。

フランソワ・ド・ル−ベの「冒険者たち」(ロベ−ル・アンリコ監督)はアラン・ドロンとリノ・ヴァンチュラの男の友情と、ヒロインを演じたジョアンナ・シムカスの印象の如く爽やかなメロディが心に残る。(ル−ベは他にドロン主演で「サムライ」「悪魔のようなあなた」「さらば友よ」、ヴァンチュラ、バルド−の「ラムの大通り」、ベルモンドの「ラ・スクム−ン」を作曲している)                     

「ある晴れた朝突然に」(ベルモンド主演)もタイトルにぴったりの爽やかなメロディがいい。作曲はミシェル・マ−ニュ、彼には「地下室のメロディ」(ジャン・ギャバンとドロンの共演が話題)や「ファントマ」シリ−ズ(ジャン・マレ−主演、ルイ・ド・フュネスのコメディアン振りが冴えた)がある。

  ジョルジュ・ドルリュ−は極め付けのヒット曲が無い為あまり目立たないが、フランスの映画音楽家としてはおそらく最多作であろう、170本近い作品がある。その作品のうち、シリアス=芸術路線では、「24時間の情事」(アラン・レネ監督、59年‐40年前‐の日・仏合作で永田雅一が製作に参加し、岡田英次がエマニュエル・リヴァと共演)、「かくも長き不在」(アンリ・コルビ監督、アリダ・ヴァリ主演)、「突然炎のごとく」(フランソワ・トリュフォ−監督、ジャンヌ・モロ−主演)、「めんどりの肉」(ジュリアン・デュヴィヴィエ監督、ロベ−ル・オッセン主演)、「軽蔑」(ジャン=リュック・ゴダ−ル監督、ミシェル・ピッコリ、B・バルド−主演)、「1000日のアン」(チャ−ルズ・シャ−ロット監督、R・バ−トン、ジュヌヴィエ−ヴ・ビジョルド主演)、「リトルロマンス」(ジョ−ジ・ロイ・ヒル監督、ダイアン・レイン、ロ−レンス・オリヴィエ主演)、「プラト−ン」(オリヴァ−・スト−ン監督、チャ−リ−・シ−ン、トム・ベレンジャ−主演)、「マグノリアの花たち」(ハ−バ−ト・ロス監督、サリ−・フィ−ルド、ドリ−・パ−トン、シャ−リ−・マックレ−ン主演)とある

 他方娯楽路線では、フィリップ・ド・ブロカ監督、ベルモンドと組んで、「大盗賊」(C・カルディナ−レ共演)、「リオの男」(フランソワ−ズ・ドルレアック共演)、「カトマンズの男」(U・アンドレス共演)、「怪盗二十面相」(G・ビジョルド共演)、更に「太陽の下の10万ドル」(アンリ・ヴェルヌイユ監督、ベルモンド、R・ヴァンチュラ主演)、「ビバ!マリア」(ルイ・マル監督、B・Bバルド−、J・モロ−主演)、「大頭脳」(ジェラ−ル・ウ−リ−監督、デイビッド・ニ−ヴン、ベルモンド主演)、「ホ−スメン」(ジョン・フランケンハイマ−監督、O・シャリフ主演)、「ジャッカルの日」(フレッド・ジンネマン監督、エドワ−ド・フォックス主演)、「ツインズ」(ア−ノルド・シュワルツネッガ−、ダニ−・デヴィ−ト主演)と賑やかで、仏−米間で実に多彩な活躍をしている。

 ドロンとベルモンドとの共演が話題を呼んだ「ボルサリ−ノ」(ロ−ド・ボラン・曲)は30年代の時代の雰囲気をよく現した軽快で楽しい曲だ。

同じような雰囲気の(20世紀初頭の旧き良き時代のム−ドを現した)曲がロン・グッドウィンの「素晴らしきヒコ−キ野郎」―ケン・アナキン監督の演出も軽快で楽しいが、スチュア−ト・ホイットマン(米)、ジェ−ムズ・フォックス(英)、ジャン・ピエ−ル・カッセル(仏)、ゲルト・フレ−ベ(独)等の各国代表に交じって、日本国代表ヤマモト大佐として石原裕次郎が颯爽と登場。しかしそこ迄はよかったものの、いざレ−スが始まると、早々にあえなく墜落リタイア・・・・当時の日本の実力からして、まぁこんなものかと感じたことが妙に記憶に残っている。

一時、フレンチ・ポップスが流行った。マ−ジョリ−・ノエル(そよ風に乗って)、フランス・ギャル(涙のシャンソン人形)等々、その先駆者がシルヴィ−・ヴァルタン。63年にミシェル・ポワロン監督が人気絶頂の彼女の為に作った仏版アイドル映画がその名も「アイドルを探せ」(当時恋仲のジョニ−・アリディ、そしてミレ−ヌ・ドモンジョ共演、音楽はジョルジュ・ガルヴァランツ)で、主題歌は映画から離れて日本でも大ヒットした。(ヴァルタンはそれから実に31年後の50才の時にもう1本、「ランジュノワール/甘い媚薬」というエロチック・サスペンスで本格的な主役を演じている。

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