第五部エンタメ小説と映画

 

 ことほどさように“エンタメ小説”は面白い。であるからして当然の如くにして映画シナリオの宝庫である。では第1部で並べた小説がどのような映画となって登場したかを見てみよう!

 カラーで作品の面白度を表示(=あくまで筆者の独断と偏見による評価)

★★★★★=赤  ★★★★=橙  ★★★=青  ★★=紫 ×× 未観=黒

 原作&映画ともに出来栄えが素晴らしいのは、やはりフォーサイスとクランシーだ。そして数ある中から敢えて一本を選ぶとすれば「ジャッカルの日」ということになろう。

ジャッカルの日=The day of Jackal」★★★★(73年/監督・フレッド・ジンネマン、音楽・ジョルル・ドリュリュー、出演・エドワード・フォックス=ジャッカル、ミシェル・ロンズデイル=ルベル警部、)・・・ジンネマン監督が原作を充分に理解して撮影したと見られ、フォーサイスの特徴であるストーリーの面白さ、リアリティ、サスペンス、格調といったものが余すところなくスクリーン上に表現されている。主人公ジャッカルにマッチョではなく寧ろインテリジェンスを感じさせるフォックスを起用したのも成功の秘訣で、余裕を持って人生を楽しみながら端々とプロの仕事をこなしていく様に、観ている方は、あってはならないこと乍らつい彼に肩入れしてしまいそうになってしまう程だ。ロンズデイルのルベル警部も又適役と言え、本物のプロ対プロの追跡行は大変な緊迫感がある。  

さて、フォーサイスでこの他のものといえば、

「オデッサファイル=The Odessa file」★★★★(74年/監督・ロナルド・ニーム、出演・)ジョン・ヴォイト=ピーター・ミラー、マクシミリアン・シェル=エドアルド・ロシュマン、マリア・シェル=フラウ・ミラー)・・・ポセイドンアドベンチャー(72年)で大成功を収めた余勢をかって(?)ニームが監督したが、やや切れ味に欠け、原作の面白さやサスペンスを生かし切れなかった

「戦争の犬たち=The dogs of war」★★★★(80年/監督・ジョンアーヴィン、出演・クリストファー・ウォーケン=シャノン、トム・ベレンジャー=ドリュー)・・・やや鋭角的で甘めな感じのウォーケンはシャノンのイメージとはちょいと違うのではないか?

「第四の核=The fourth protokol」(86年=日本未公開/監督・ジョン・マッケンジー、出演・マイケル・ケイン=ジョン・プレストン、ピアース・ブロスナン=ヴァレリイ・ペトロフスキー少佐=ジェームズ・エドワード・ロス、ネッド・ビーティ=パヴェル・ペトロヴィッチ・ボリソフ、ジョアンナ・キャシディ=ヴァシリエヴナ、イアン・リチャードソン=ナイジェル・アーヴィン卿)・・・前二作の出来栄えが今ひとつだったために業を煮やしたか(?)、フォーサイスが製作に加わり、脚本と総指揮をとった作品。役者も揃っているのであるが、何故か日本では公開されなかった。5代目ボンドのプロスナンがKGB少佐という悪役をやっている“珍品性”もあり、そのうちビデオで見つけて拝見してみたい。

 フォーサイス映画は第一作の素晴らしさからするとそれ以降の映画は些か“龍頭蛇尾”的であるが、クランシーのライアンシリーズは今やドル箱シリーズとなっている。

「レッドオクトーバーを追え=The hunt for Red October」★★★★(90年/監督・ジョン・マクティアナン、出演・ショーン・コネリー=ラミウス艦長、アレック・ボールドウィン=ジャック・ライアン、サム・ニール=ボロディン副艦長、スコット・グレン=バート艦長、ジェームズ・アール・ジョーンズ=グリーア提督ジェフリー・ジョーンズ=スキップ・タイラー,ゲイツ・マクファーデン=ライアン夫人)・・・役者も揃っているが、「ダイハード」で名を上げた監督&撮影のコンビが緊迫したストーリー作りとシャープな映像で、原作の良さを十分に生かしているといえよう。“チーム・ライアン”ではグーリア提督のジョーンズがいい!  

「パトリオットゲーム=Patriot game」★★★★(92年/監督・フィリップ・ノイス、出演・ハリソン・フォードジャック・ライアン、アン・アーチャー=ライアン夫人、パトリック・バーギン=ケヴィン・オドネル=テロリスト、ショーン・ビーン=ショーン・ミラー=テロリスト、サミュエル・L・ジャクソン=ロビー・ジャクソン、ジェームズ・アール・ジョーンズ=グリーア提督)・・・前作が大ヒットしたので。製作者はぐんと出演料を弾んで、ライアンには当時「スターウオーズ」で人気沸騰のフォードを起用(でも原作のライアンのイメージにはボールドウィンのほうが合ってるけどね!)、ライアン夫人も無名のマクファーデンではなく、アン・アーチャー(これは良妻賢母のイメージにぴったり!)、“チーム・ライアン”の一人、ロビー・ジャクソンにサミュエルと一流のキャスト。テロリストにも迫力ある演技者を揃えて、原作の持つ、ライアン一家が味わう恐怖をよく描き出して又々大ヒット。

「今そこにある危機=Clear and Present Danger」★★★★(94年/監督・フィリップ・ノイス、出演・ハリソン・フォード、ウイレム・デフォー=CIA工作員・ジョン・クラーク、アン・アーチャー、ヨアキム・デ・アルメイダ=フェリックス・コルテス=カルテルの殺し屋、ドナルド・モファット=ベネット合衆国大統領、レイモンド・クルツ=陸軍歩兵ドミンゴ・チャベス、パトリック・ボーショー=コロンビア麻薬カルテルのボス)・・・第2作に続いてノイスが監督、“チーム・ライアン”は同じキャスト。ここで初めて我らがジョン・クラーク登場。ウイレム・デフォーはまさに彼をおいて他に無い!といったぴったしのイメージ。ライアンとクラークがコロンビアの山中に見捨て去られようとしたドミンゴ達を救出に向うシーンは圧巻で、現場第一線を大事にするクランシー(−この点はクランシーを評価!)の意図をよく表現しており、ノイス監督も原作をよく読んでいるんだなあと感じさせる。

「トータル・フィアーズ=The sum of all fears」★★★(02年/フィル・アンデル・ロビンソン、出演・ベン・アフレック=ライアン、モーガン・フリーマン=キャボット長官、リーヴ・シュレイバー=ジョン・クラーク、ジェームズ・クロムウェル=アメリカ大統領、シアラン・ハインズ=ロシア大統領)・・・原作者のクランシーが製作総指揮を執ったので、シナリオは原作を好きなように改編。フォードが近年めっきり老け込んできた故か?3代目ライアンとして人気者のベンを起用。但し、あまりにも若過ぎるので、前作よりももっと昔に時代設定せざるを得なくなり、原作を大幅に変更。これまで原作を忠実に映像化してきただけに、“ライアンおたく”としてはどうにも違和感をぬぐえない。そして主人公が若くなったので、周りの人々を演ずる役者も皆変わってしまい、特にクラーク役のデフォーも交代しちまったのはガッカリだなあ!(太っちょのシュレイバーではクラークの精悍なイメージに全く合わないのだ!) 

 それと、核爆発があったのに近くにいた大統領が無事だったり、その惨事の現場をライアン達が普段着で歩き廻るといった、核の危険についてあまりにも無神経なところはどうにもいただけない。リアリティを重視するクランシーならもうちょっと考えて欲しかった。(この辺りがアメリカの知識人の”核”についての認識のレベルということなんでしょうかねえ?!)

 なお、クランシーの「オプセンター」と「ネットフォース」はテレビ映画として製作されており、NHKで放映された。TVムービーとしては役者も揃えており、なかなかの出来栄えであった。

 ではここらあたりで、昔へ戻って映画化された作品を眺めてみよう。

大御所・アーサーヘイリーでは、

「ホテル=Hotel」(66年/監督・リチャード・クワイン、出演・ロッド・テイラー、カトリヌ・スパーク、カール・マルデン、マーク・オベロン、リチャードコンテ)・・・古すぎて、さすがに見ておりません。カトリーヌ・スパークを除いては、その当時でもかなり渋い連中を集めたなあという感じがする。

「大空港=Airport」(70年/監督・ジョージ・シートン、出演・バート・ランカスター、ディーン・マーティン、モーリン・ステイプルトン、ジーン・セバーグ、ジャクリーン・ビセット、ジョージ・ケネディ、ヴァン・ヘフリン)・・・これも残念ながら見ておりませんが、原作の良さを生かして、航空機パニックもののハシリにして大傑作との評価も高い作品。この成功が切っ掛けとなって、このあと続々と航空機&空港パニック映画が製作された。

 ヘイリーのその他の作品は大型テレビドラマとして製作されたものの、劇場映画はこの2本のみにとどまった。

「マネーチェンジャーズ」★★★(76年)は、監督・ボリス・セーガル、音楽・ヘンリー・マンシーニ、出演・カーク・ダグラス=アレックス・バンダーボルト、クリストファー・プラマー=ロスコー・ヘイワード、スーザン・フラナリー、アン・バクスターと劇場映画なみの豪華ラインアップで、内容もなかなかに面白かった。

「自動車」(78年)は、監督・ジェリー・ロンドン、出演・ロック・ハドソン、リー・レミック、ラルフ・ベラミーで、なんと10時間の大作。この2本はテレビが映画に対抗してウンと力を入れて製作したということかもしれない! 最後の「ストロングメディスン」(86年)は、監督・ガイ・グリーン、出演・パメラ・スー・マーティン、サム・ニール、ベン・クロスと、本来のテレビドラマのスケールになっている。

 ポール・アードマンは経済ものだけに映像化にくいのか、一本も映画(TVも含めて)になっていない! スティーヴン・ハンターも一本もない。そのうちスピルバーグかジェームズ・キャメロンあたりにボブ・リー・スワーガー(或いは父親のアール)を映像化してもらいたいものである。  

⇒大ベストセラー「極大射程」 が07年に「SHOOTER」(邦題は「ザ・シューター/極大射程」)として、アントワーン・フークアという監督によって映画化された。マーク・ウォールバーグ=スワガー、ケイト・マーラ=サラ、ダニー・グローヴァー=敵役・アイザック・ジョンソン大佐・・・という些か地味なキャスティングであるが、ウォールバーグのスワガーは原作のイメージに近く、作品も原作の持ち味をかなり上手く表現していた。★★★ 

 アーチャーも3本がテレビ化されたのみ=「ケインとアベル」(85年)、「めざせダウニング10番街」、「100万ドルを取り返せ!」・・・この中では、5時間を超す大作の「ケインとアベル」がなかなかに面白かった。(監督・バズ・キューリック、出演・ピーター・ストラウス=アベル・ロスノフスキー、サム・ニール=ウイリアム・ケイン、ケイト・マクニール=フロレンティナ・ロスノフスキー)・・・NHKで放映された。

 原作者としてついてないのが、クライブ・カッスラー。苦労して人気作家になって初めて映画化の話が持ち込まれたのがダーク・ピットシリーズの「タイタニックを引揚げろ=Raise the Titanic」★★(80年/監督・ジェリー・ジェームソン、出演・リチャード・ジョーダン=ダーク・ピット、ジェイソン・ロバーズ=サンデッカーNUMA長官、アン・アーチャー=ダナ・アーチボウルド、M・エメット・ウオルシュ=アル・ジョルディーノ)・・・何せ原作は徹底して超ド派手なムード。それをこの映画は逆筋の超ジミな演出に加え、キャストも又超ジミ。ピットもそうなら、相棒のジョルディーノ役の俳優なんて誰も知らない!そのせいで興業成績も散々。怒り心頭に達したカッスラーは以降一切の映像化を禁止してしまったのである!最近になってようやく再び映画化の話が進行中との噂が流れてくるが、いっこうにクランク・イン(=撮影開始)したとのニュースが入ってこない。

次に映画化するなら、原作の出来栄えからして「死のサハラを脱出せよ!」が一押しである。最近ならCGでどのような場面も映像化できるのだから、是非実現してもらいたい。只今現在、ピットとジョルディーノを演じる役者を誰にするか決めかねているのかもしれない。でもジョルディーノをダニー・デビートにするのだけは止めてください!

 ケン・フォレットはこれまでのところ1本。勿論、出世作の「針の目=Eye of the needle」(監督・リチャード・マーカンド、出演・ドナルド・サザランド=フェイバー、ケイト・ネリガン=ルーシー、ステファン・マッケンナ=リュテナント、フィリップ・マーティン・ブラウン=ビリー・パーキン)・・・監督のマーカンドはこの演出の切れの良さを評価されて、「スターウオーズ/ジェダイの復讐」の監督に抜擢されたという。

 あと「レベッカの鍵」「鷲の翼に乗って」「第三双生児」3本がTV映画化されている。私としては、「第三双生児」(・・・遺伝子工学の問題点を鋭く提示している) を、今、社会問題に一番鋭く切り込むことで評価の高い「トラフィック」の監督スティーヴン・ソダーバーグに劇場映画化してもらいたい。主役は勿論、善人と悪人を見事に演じ分けるレオナルド・デカプリオの二役だ!

 映画化された作品が一番多いのがジョン・グリシャムではないか!。なにせアメリカ人が好きな“法廷”もので、内容が実にしっかりとしているから、手堅い興行収入が見込めるのだ。しかも当然のことながら舞台は法廷が中心だから、製作費もぐんと安く上がることも製作側にとっては有難い!ということだろう。

原作の順序とは関係なく、先ず最初に映画化されたのが

「ペリカン文書=the Pelican brief」★★★(93年/製作&監督・アラン・J・パクラ、出演・ジュリア・ロバーツ=ダービー・ショウ、デンゼル・ワシントン=グレイ・グランサム、サム・シェパード=トーマス・ギャラハン教授、ジョン・ハート=FBIのギャビン・クリーク)・・・本作品は“法廷もの”というより“謀略もの”で、アクションシーンも多いことから映画化しやすかったのだろう。果たしてパクラの計算どおりに大ヒット。尤も私なら主人公の聡明&勇敢な女子大生であるショウはジュリアではなくジョディ・フォスターを起用するよね! それはともかくとして、これでグリシャムものは当たる!と注目されたのであろう。その後、次々と映画化されていく。

「ザ・ファーム/法律事務所」★★★★(93年/共同製作&監督・シドニー・ポラック、出演・トム・クルーズ=ミッチ・マクデール、ジーン・ハックマン=アベリー・トーラー、ジーン・トリプルホーン=アヴィー・マクデール、エド・ハリス=ウエイン・タランス、ホリーハンターータミー・ヘムヒル)・・・ポラックとしては製作も兼ねて随分と力を入れて臨んだのであろうが、今ひとつ切れ味を欠いた演出になってしまった。主演のトムはともかくとして、脇のハックマンやホリー・ハンターの使い方(=演じさせ方)が疑問である。

「ザ・クライアント/依頼人=the Client」★★★★(94年/監督・ジョエル・シューマーカー、出演・スーザン・サランドン=弁護士レジーラブ、トミー・リー・ジョーンズ=検事レヴェレンド・ロイ、ブラッド・レンフロ=マーク少年)・・・原作でもレジー弁護士は儲け役であるが、この役にサランドンを起用したのが成功の1つの要因。相手の検事役のトミーもピッタリで、このキャスティングが映画の出来栄えをかなり押し上げているといえなくもない。小品仕立てながら、サスペンス度は高い。

「チェンバー/凍った絆=the Chamber」(96年/監督・ジェームズ・フォーリー、出演・クリス・オドネル=アダム・ホール、ジーン・ハックマン=サム・ケイホールフェイ・ダナウェイ=リー・ボウエン=ケイホール)・・・キャスティングに魅力はあるが、原作=「処刑室」)が唯一、評価出来なかったので、未観。(ビデオでも本作品だけは、敢えて観たいとは思わない!)

「評決のとき=a Time to Kill」★★★(96年/監督・ジョエル・シューマーカー、出演・マシュー・マコノヒー=ジェイク・タイラー、サンドラ・ブロック=エレン・ロアーク、サミュエル・L・ジャクソン=カール・リー・ハイレイ、ケヴィン・スペイシーールーファス・バックレイ、ドナルド・サザーランド=ルシアン・ウイルバンクス、キーファー・サザーランド=フレディ・リー・コッブ、パトリック・マッグハーン=オマー・ヌース判事、アシュレイ・ジャッド=カーラ・ブリガンス)・・・処女作の映画化とあって(?!)グリシャムが製作にも参加し、脇には豪華キャストを揃えたが、それがあまり生かされない出来栄えとなった。本来、人間の愛や絆、そして人種問題と込められたテーマは多いのであるが、それを原作以上に深めることが出来なかった。

「レインメーカー=the Rainmaker」★★★★(97年/監督&脚本・フランシス・F・コッポラ、出演・マット・ディモン=ルディ・ベイラー、ダニー・デヴィート=相棒デック・シフレット、クレア・レインズ=ケリー・ライカー、ジョン・ヴォイト=ヂュラモント弁護士、、ダニーグローヴァー、ミッキー・ローク=ライマン“ブルーサー”ソトーン、ロイ・シャイダー=ウィルフレッド・キーレイ・保険会社社長、メアリー・ケイ・プレイス) ・・・さすがコッポラ!このグリシャム渾身の大長編を、原作のよさを失うことなく、余分なものは省いて見事なシナリオに再構成している。そして考えられる最高かつ最適のキャスティングを行ない、素晴らしい映画に仕立て上げている。(それと私的には、エルマー・バーンスタインが衰えを見せない素敵な音楽を付けているのも又嬉しいことではある)

「相続人=the Gingerbread Man」 《×》 (97年/監督・ロバート・アルトマン、出演・ケネス・プラナー、エンベス・デイヴィッツ、ロバート・ダウニーJr.、ダリル・ハンナ、ロバート・デュヴァル、トム・ベレンジャー、ファムケ・ヤンセン)・・・有能な弁護士がパーティで知り合った女性と一夜をともにしたことからとんでもない事態に陥っていく〜。・・・監督が切れ者のアルトマン、役者も揃えた。そして原作がグリシャムとくれば面白くないわけが無い!と思うのですが、ところがこれが全く面白くない! というのも、出版本ではなく、映画のシナリオの為に書き下ろしたもの。いやあこれぞ猿も木から落ちた!ということでありましょう。 グリシャムさん、映画のことは専門家に任せて、やっぱり本業に専念したほうがよいですよ!

 余談ながら、この映画では、名優デュヴァルが、こんなみっともない役柄を実にみっともなく演じているのが、なんでなの?とまことに不可思議な印象であった。

「ゲットショーティ=Get Shorty」★★(95年/監督・バリー・ゾネンフェルド、出演・ジョン・トラボルタ=チリ、ジーン・ハックマン=ハリー、ダニー・デビート=マイケル・ウィア、レネ・ルッソ=カレン)

・・・原作者エルモア・レナードは映画の脚本を15本以上も手掛けており、つまりエンタメ作家の中では最もハリウッドに精通しているといえよう。そして原作もなんと20本近くも映画化されている。しかし高い評価を受けたり、ヒットした作品は皆無に近いというからこれは七不思議の一つである。

 評価の低い代表作といえるのがこのゲット・ショーティ」(=チビを捕まえろ!)・・・尤もこれは原作がレナードの作品としては例外的につまらないから仕方ないかもしれないが、映像化するに当たってのキャスティングの失敗も大きいのではないか!・・・主人公チリ役のトラボルタはいいとしても、大物・ハックマンでは独立系プロデューサー・ハリーのいい加減さが今一つピンとこないし、人気スター・マイケル役にダニー・デビートでは、原作のイメージと全く違って興ざめもいいところである。(アッ、製作者がダニーでは止むを得ないのかもしれないが、でも、ダニーさん、これじゃあ悪い冗談ですヨ!)

「ジャッキー・ブラウン=Jackie Brown}」97年/監督・クエンティン・タランティーノ、出演・パム・グリア=ジャッキー、ロバート・フォスター=マックス、サミュエル・L・ジャクソン=オディール、マイケル・キートン=レイ、ブリジット・フォンダ=メラニー、ロバート・デ・ニーロ)・・・それではと、奇才・タランティーノが満を持して挑んだのが原題「ラム・パンチ」の本作品。ダニーの作品と違ってさすが登場人物のキャスティングは一人を除いてベストに近い!・・・ところが、これが大コケの作品。その原因はというと、奇才が凝りすぎて、舞台をフロリダからニューヨークに変え、しかも肝心の主人公の中年美人C・A(=キャビン・アテンダント)・ジャッキーを黒人に変更してしまったことにある。私は何も人種差別主義者ではないが、ここはやっぱりふつうの中年男・マックスがぞっこんとなるのは色白のグラマー美人でなくてはならないのだ!これぞ策士、策に溺れるの典型といえようが、かのタランティーノが失敗するとは、今後レナード作品の映画化の成功は不可能に近いといえよう。

 

 

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