序  章

 「・・・金はない、時間はある・・・※」 もうだいぶ前になりますが、破産した岸部シローの自虐的なコマーシャルがありました。その時はニヤリとしながら見ていましたが、時を経て、今自分がそんな境遇と相成りました。

 さて、この条件(※)下で人生を楽しむにはどうすればいいか?・・・IT真っ盛りの現代のショーバイの秘訣はイニシャルフィーを下げて、ランニングフィーで稼ぐと言うこと(=携帯電話がその最たるビジネスモデルです!)ですから、その逆、否、ランニングフィーを限りなくゼロにすればいいわけであります。

 リタイア後は大好きな映画を楽しもう!と、セッセとVTR録画に勤しみ、ビデオテープが山のようにあります。ところがこれが戸棚の奥で眠ったママ。何故かといえば、いつしかデジタル放送時代になり、テレビもワイド画面の液晶に変わり、しかも外付けハードディスクで簡単に録画出来るという便利な世の中になりました。しかもこの画面が実に鮮明でVTRとは比べ物になりません。これなら録画したものでも十分に楽しむことができるのです。

 〜〜というわけで、ランニングコスト・ゼロ(正確には電気代のみ!)で、どれだけ映画を楽しめるか、せっせと録画して頑張ってみましょう!

1、アラビアのロレンス (10点)    ⇒点数は10点満点で評価

製作1962年、公開1963年(207分)、完全版1988年(227分)

製作/サム・スピーゲル、監督/デヴィッド・リーン、音楽/モーリス・ジャール

出演/ピーター・オトゥール(ロレンス)、アレック・ギネス(ファイサル皇太子)、オマー・シャリフ(アリ)、アンソニー・クイン(族長アウダ・アブ・タイ)、ジャック・ホーキンス(英軍司令官)、アンソニー・クイル(ドライデン・・・ロレンスの上官)、ホセ・ファーラー(トルコ軍幹部)

 最初に見たのは63年だから大学1年のとき。大画面に展開する砂漠のシーンに圧倒された記憶が今でも鮮明に残っています。で、48年経って「完全版」を見ると〜〜やっぱり大感動です。雄大なストーリー、よく練ったシナリオ、鮮やかな映像、充実の演技陣、エキゾチシズム溢れるダイナミックな音楽・・・全てが素晴らしい、私にとっては古今東西を通してナンバーワンの映画です。

オープニングでいきなり主人公のオートバイによる事故死〜インタビューで主人公への評価が分かれることの暗示〜場面が変わると、遡ってカイロの英軍指令本部・・・ロレンスがマッチのを炎を吹き消すと〜〜一転して大砂漠・・・このあたりの鮮やかな場面転換でストーリーに引き込まれていきます。超望遠レンズを駆使した、大砂漠の俯瞰と、そこに小さな点のように現れる人間の対比がなんとも言えません。砂漠と言っても砂丘だけでなく、赤茶けた岩山、ガレキの荒野など様々な表情を余すところなく捉えています。砂漠からアカバへの攻撃をワンシーンで撮った大俯瞰、蜃気楼の中から現れる黒装束のアリ、等々いくつもの印象的なシーンは脳裏に焼き付いて残ります。

スペクタクルに終始するだけでなく、ロレンスのヒロイズムと狂気、そしてファイサル、アリ、アウダなどベドウインのリーダーたち登場人物の個性豊かな人間性がじっくりと描き込まれている点も流石だといえます。

 余談ながら、オトゥールが実際のロレンスにそっくりなのは驚かされます。主人公役にこんな素晴らしい新人を抜擢したリーン監督と製作者スピーゲルの慧眼には脱帽するしかありません。

    

 

2、ドライビング・ミス・デイジー  (9点)

製作1989年 公開1990

製作/リチャード・D・ザナック、リリー・フィー・ザナック=姓で分かる通り、「史上最大の作戦」(1962年)で瀕死の20世紀フォックスを救い、後に社長となった大プロデューサーの子供たち=、監督/ブルース・ベレスフォード、音楽/ハンス・ジマー、出演/ジェシカ・タンディ(デイジー)、モーガン・フリーマン(運転手ホーク)、ダン・エイクロイド(息子・ブーリー)

 現市長も教え子のひとりだという元教師で未亡人のデイジーは齢には勝てず、車を庭端の段差から落としかける。心配した息子がベテラン運転手を雇うが、気の強いデイジーはなかなか受け入れようとしない・・・

 見終わって、ほのぼのとした温かい気持ちに包まれる、まさに「佳作」とはこういう作品のことをいうのでありましょう。

 気位の高い老女を演じるジェシカや優しい孝行息子のエイクロイドも秀逸であるが、なんといっても素晴らしいのは、初老の運転手を演じるモーガン・フリーマン。決して妥協することなく、やんわりと自己を主張しながら次第に老女の心を解きほぐしていく“ほのぼのさ”が、心に沁み込んできます。

 因みにジェシカはこの演技で、なんと最年長(80歳)のアカデミー主演女優賞を受賞し、フリーマンはゴールデングローブ男優賞を受けています。

 

3、ひまわり  (6点)

製作&公開1970

製作&監督/ヴィットリオ・デ・シーカ、音楽/ヘンリー・マンシーニ、出演/ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ、リュドミラ・サベリーエワ

 ジョヴァンナと夫はお互い惚れぬいて結婚したが、新婚間もなく夫はロシア戦線へと送られ、敗戦後も帰還しない。妻は一大決心をしてロシアの地を訪れ、夫を探し求めるが、ようやく見出した場には・・・。

 世評では巨匠デ・シーカ監督による“愛の感動作”として、不朽の名作の一編に数えられるようですが、私は同意しがたいものがあります。 つまりシナリオというか、状況設定があまりにも非現実的なのです。

 時代は第二次大戦後、「鉄のカーテン」のソ連なのです。そこへ敵方の敗戦国であったイタリアの一主婦が夫捜しに訪れて広いロシア国内(まあ南部だけとはいえ)を自由に動き回れるなんてことはあり得ません。凍死寸前(なのに凍傷一つ負っていない!)の敵国兵士を救ったのがとびきりの美人(リュドミラなのですから)とは? うら若い美女は一人っきりで生計を立てていたのでしょうか? 周囲の保守的な村人は敵国イタリア人が住まうのを許せたでしょうか? 政府機関がこのイタリア人の就労を認めるハズがありません。さらにはこのイタリア人が故郷に一時帰国するなんてこともおよそ考えられません。

 当時のソ連でも巨匠デ・シーカの存在は分かっていたと見えて、ソ連の宣伝のために国内での撮影を許可したと言うのが、この“ありえない”ストーリーの真相でありましょう。

マストロヤンニが列車から降りたその向うには2基の原発サイロが誇らしく立っていること、地方都市なのに巨大なエスカレーターを備えた立派な駅舎があること、村人が近代的なアパートへ喜々として引っ越ししているシーンがあること・・・等も、まさにソ連側の意図通りで、デ・シーカは期せずして、否、期してソ連の宣伝役をかっていたといえるのではないでしょうか!

 尚、この映画の評判を高めたのは、マンシーニの哀愁感たっぷりのテーマミュージックであります。「ティファニーで朝食を=ムーンリバー」、「シャレード」、「ハタリ=小象の行進」、「酒とバラの日々」、「グレートレース=スイート・ハート・ツリー」などと比べて勝るとも劣らぬ最高傑作で、映画にとって音楽が如何に大事かを示す好例といえましょう。

 

4、 コンペティション  (5点)

 

製作1980年 公開1981年  監督/ジョエル・オリアンスキー、音楽/ラロ・シフリン、出演/リチャード・ドレイファス、 エイミー・アーヴィング、リー・レミック、サム・ワナメーカー

 主人公ポールはピアノで名を挙げるべく精進してきたが、30歳になっても、コンクールで優勝の経験が無い。年齢制限上これが最後のチャンスと、あるコンクールに臨むが、そこで顔なじみの女性ハイディと会い、心惹かれていく。二人は6人による最終選考に残ったが、果たして優勝するのは?・・・。

 当然、ポールの「皇帝」とハイディの「プロコフィエフの3番」がクローズアップされる。二人のピアノさばきはなかなか見事で、かなりの特訓を積んだものと思われる。(演奏は勿論別人のプロ) ピアノ演奏は良しとして、30歳にもなって分別のきかない主人公の言動にはイライラさせられ、“最後のチャンスだから頑張れ!”と感情移入したくても出来ないのが、ドラマとして弱い。脇を固める、指揮者役ワナメーカーとヒロインを指導する女性役のリー・レミックがなかなかいい味を出しているのが救いである。

5、アイアンマン  (6点)

 

製作&公開2008年  監督/ジョン・ファブロー、音楽/ラミン・ジャヴァディ、出演/ロバート・ダウニー・ジュニア、ジェフ・ブリッジス、グウィネス・パルトロウ、テレンス・ハワード

 コミックを実写化したものであるが、所謂アメリカン・コミックの良さ=明朗で、スピーディで、ノー天気で、馬鹿馬鹿しいところをストレートに映像化しており、「バットマン」や「スパイダーマン」と違って意外と楽しめる作品になっていました。

 主人公トニー・スタークがテキトー男のようでいて、その実、新兵器開発を全部自分でやってのけてしまう大変な才能の持ち主で、しかもそれを鼻にかけないあたりが共感を呼びます。(全部執事がおぜん立てするバットマンとは大違い!)。

 それと、キャスティングの妙といったものもあります。先ず主人公トニー・スタークに「トロピックサンダー」でコミカルな面を発揮したロバート・ダウニーを起用したのが正解。登場した所から怪しい部下のオバディア=ブリッジスの怪演ぶりも結構。そして変にベタベタせず、人使いの荒いオーナーに献身的に使えるペッパー・ボッツにパルトロウを持ってきたのも当たっています。(それにしてもパルトロウは知性は感じても、色気はありませんなぁ!・・・因みに私は「恋に落ちたシェークスピア」以降、演技者としての彼女に興味を持っています)

 

6、イブラヒムおじさんとコーランの花たち (6点)

  

製作2003年 公開2004年 監督/フランソワ・デュベイロン、出演/オマー・シャリフ、ピエール・ブーランジェ

 娼婦が屯するパリの裏通りのアパルトマンに離婚した父と二人で住む13歳の少年モモ(ユダヤ人)と、彼を優しく庇護する近所のよろず屋店主イブラヒム(トルコ人)との交流を描いたハート・ウオーミングな佳作。

監督はこの(=心温まる)線を狙って意図した通りの出来栄えとなっているので、全体の「ゆるさ」を批判してもはじまらないのであるが、13歳なのに学校へ行ってるでもなく、コツコツと貯めたお金で昼間っから娼婦のもとへ、そして父親が失踪すると、その蔵書を売り払っては快楽を求め、親切にしてくれるイブラヒムの店では万引きを重ねる・・・いくら見た目は可愛くともこんな振舞の少年にシンパシーは持てないし、イブラヒムが何故モモに深い愛情を示すのか納得できない。父の死後アパートを訪ねた母が我が子を識別できないなんてありえない。(このシーンは不要である)

イブラヒムはコーランの教えを大事にするが、表面をサラリといった感じで、教義の深奥に入りこむわけでもない。イスラム老人とユダヤ少年のかかわり合いと言うからには、一ひねりした展開が出来そうだが肩すかしを喰らった感じである。 70歳を超えたオマー・シャリフが真面目で敬虔なトルコ人を飄々と演じているところが、昔からのシャリフ・ファンの私的には好印象で、その分評価は1点プラスです。

 

7、アレックス・ライダー  (6点)

製作2006年、公開2007年 監督/ジェフリー・サックス、アクション監督/ドニー・イェン、出演/アレックス・ペティファー、ユアン・マクレガー、ミッキー・ローク、ビル・ナイ、ミッシー・パイル

 叔父が任務遂行中に殺害された主人公アレックスはその才能を見込まれ、なんと若干14歳にしてMI6からスパイにスカウトされるや叔父の任務を継いで敵陣へと乗り込む・・・。

 ストーリーは他愛ないが、セットにはかなり金をかけて本格的で、演出もなかなかの切れ味。イギリス流のスパイ活劇として結構楽しめる。冒頭の叔父(=ユアン)の追跡シーンや、主人公のロープアクションは素晴らしく、アクション監督としてドニー・イェンを招聘した効果が出ている。

 新人でいきなり主役に抜擢されたペティファーはこの時16歳ながら(演技はともかくとして)、ルックスもよくアクションは抜群で、抜擢によく応えており、将来はボンド役をやればいいのではないか!(現在のロシア人みたいなダニエル・クレイグよりずっと適役だ。)

 脇をベテランで固めているが、MI6長官役のビル・ナイのおとぼけぶりが秀逸。(大変な“役者”で、これが翌年の「パイレーツ・オブ・カリビアン」のタコ男・デイヴィ・ジョーンズを演じた俳優とはとても信じられない)

 そして、何より強烈な印象を残すのが悪党の秘書を演じるミッシー・パイルの怪演で、その強烈な個性の前にはボスのミッキー・ロークの悪党ぶりが霞んでしまうほどである。

  (ミッシー・パイル・・・素顔も個性的だが、メークするとこれが凄いんだぁ!)

 

8、アビエイター  (8点)

製作2004年、公開2005年 監督/マーティン・スコセッシ、音楽/ハワード・ショア、出演/レオナルド・ディカプリオ(ハワード・ヒューズ)、ケイト・ブランシェット(キャサリン・ヘップバーン)、ケイト・ベッキンセイル(エヴァ・ガードナー)、グウェン・ステファニー(ジーン・ハーロウ)、アレック・ボールドウィン(ホアン・トリップ=パンナム社長)、アラン・アルダ(ブリュースター上院議員)、ジュード。ロウ(エロール・フリン)、ジョン・C・ライリー

 大富豪ハワード・ヒューズの半生を描いた3時間近い大作。骨太のストーリーとともに、豪華絢爛な映画プレビューの有様、華やかな社交界の様子、飛行機事故の迫力ある描写等、「これがハリウッド映画だ!」と主張しているようなシャープな映像はスコセッシならではのもの。但し長丁場だけにストーリーは中盤ちょいとダレるのは否めない。

飛行機操縦と飛行機製作に傾注する一方で映画製作にも力を注ぎ、「地獄の天使」や「ならず者」といった話題作、問題作を手掛け、人気女優と浮名を流す華やかな人生の裏で、母親譲りの潔癖症、そして治療に使用した麻薬中毒からくる奇矯な振舞い等、ヒューズの強烈な個性にディカプリオが真っ正面から取り組んで熱演。

(製作総指揮にディカプリオが名前を連ねているということは彼がこの役を望んでスコセッシと組んだということか?!それなら力も入るわけで、狙ったアカデミー主演男優賞は逸したとはいえ、まぁ、その熱演は認めてあげましょう!・・・)

共演陣にもズラリと芸達者をそろえているが、圧巻はキャサリン・ヘップバーンを演じたケイト・ブランシェット。アメリカ人が最も敬愛する女優はキャサリンであるが、誰しもが彼女を彷彿とさせるブランシェットの名演技に参ったという。

ヒューズとキャサリンが初デートするゴルフ場でのプレイの仕草や会話はキャサリン以上にキャサリンらしい絶妙の演技で特に印象深い。(アカデミー助演女優賞も当然と言えましょう)

          

     

(ヒューズ本人)   (演ずるディカプリオ)  (ブランシェット)  (キャサリン本人)

 

9、オール・ザ・キングスメン  (7点)

製作2006年、公開2007年、監督/スティーヴン・ザイリアン、音楽/ジェームズ・ホーナー、出演/ショーン・ペン、ジュード・ロウ、ケイト・ウインスレット、アンソニー・ホプキンス、マーク・ラファロ

 ロバート・ベン・ウオーレンのピューリッツアー賞受賞作品を映画化。〜ルイジアナ州メーソン市の実直な出納官ウイリー・スタークは小学校建設に絡む汚職を告発してその地位を追われる。地元上流階級出の新聞記者ジャックはウイリーに魅かれ親交を重ねる。やがて小学校の事故が起き、ウイリーは俄然注目の的になり、知事選に立候補。あて馬との評価に反発し、全身全霊を込めた演説で民衆を熱狂させ当選。大衆の知事として実力を高めるがやがて権力の虜になってゆき、悲劇的な結末を迎える・・・。

 現在のハリウッドで一番の演技派ショーンがその実力を遺憾なく発揮し、権力に執りつかれて堕ちていく男を熱演。特に大衆を熱狂させる演説シーンは圧巻。

 但し、もう一人の主人公ジャックが何故最後までウイリーについていくのかがどうにも納得し難いし、又、彼と恋仲だったアン(=ケイト・ウインスレット・・・相変わらず美しい!)がウイリーにあっさりと身を任せるのかも理解できない。そして肝心のウイリーが堕ちていく過程もいまひとつ不鮮明で、よ〜く見つめるとザイアリアンの演出の欠陥が露わになってくる。

 なお、本作は1949年ロバート・オッセン監督による同名作品のリメイクで、当時はウイリー=ブレデリック・クロフォード、ジャック=ジョン・アイアランド、アン=ジョーン・ドルーが演じた。やがて赤狩りの犠牲になるオッセンが脚本を書いただけあって、政治の腐敗に真っ正面から取り組んだ迫力ある出来栄えで、作品賞、主演男優賞、助演女優賞と3部門のオスカーを獲得した。これに対してリメイク版はあらゆる賞とは無縁であった。ショーンとジュード二人の雰囲気と演技は素晴らしいだけに、要は脚本と演出が前作に及ばなかったという事であろう。

 

10、カンゾー先生 (9点)

 

製作、公開1998年 東映映画 、原作/坂口安吾、監督/今村昌平、出演/柄本 明、麻生久美子、松坂慶子、唐十郎、世良公則、伊武雅刀

 太平洋戦争末期、岡山の日比の町医者=患者を誰でも彼でも“肝臓疾患”と診断するので、“カンゾー先生”と言われ、その実町民から慕われている赤城先生と彼を取り巻く人々の、時には真面目な、又時には破天荒な行動を丁寧にそしてユーモラスに描き出した傑作人間喜劇。

 主役の柄本 明にしても彼の生涯最高演技であろうし、他の配役も皆素晴らしい。生臭坊主の唐十郎やモルヒネ中毒の外科医・世良も文句なし。(松阪慶子・女将の色っぽさもいいですよ!) 分けても娼婦の娘に生まれた美少女ソノ子を演じた新人・麻生久美子の瑞々しさは最高!巨匠・今村の演出を信じてまな板の鯉となった思いっきりの良さは圧巻と言える。

 元来私は日活の“名もなく貧しく美しく”路線の代表たる今村や、その弟子である浦山桐郎はキライで、評判となった映画は見たことはなかった。今村作品では本作の一年前の「うなぎ」(役所広司・主演)を初めて見たが、シンキ臭くて面白くなく全く評価していなかった。ところが、この作品には脱帽であります。黒沢明の「8月のラプソディ」と同じく、声高に謳わずとも痛烈な反戦映画になっていろところが、今村の真骨頂とも言えるのではないだろうか!(因みに本作は日活ではなく、東映映画であります」

 

11、恋愛小説家  (8点)

 

                                                        (ヘレン・ハント)

製作1997年、公開1998年、監督/ジェームズ・L・ブルックス、音楽/ハンス・ジマー、出演/ジャック・ニコルソン、ヘレン・ハント、グレッグ・ギニア

 売れっ子恋愛小説作家でありながら、極度の潔癖症(=そういえば、ハワード・ヒューズもそうだった・・・)で、極端な“自己中”で周囲の嫌われ者の主人公が偶々あずかった隣人のワンコ(=この犬の演技が絶品!)に心癒され、行きつけレストランのシングルマザーのウエイトレスに恋心を抱き、次第に善人へと変化していくプロセスを描いた大人のロマンティックコメディ。

 シナリオも素晴らしいが、キャスティングも最高。ニコルソンは声高に主張しなくても、抑えた台詞回しと微妙且つ豊かな表情や目の演技が全てを物語って文句なし。これぞ本物の名優の演技である。そしてヘレン・ハントの素晴らしさ!自立したシングルマザーの強さとその奥底にある心の寂しさを真正面から演じ、更には当時34歳のヌードまで披露しての大サービス。背中のラインの美しさはまるでラファエルの絵画を見ているようでありました。

 

12、ブロンディ/女銀行強盗   (6点)

製作&公開1993年、監督/ラッセル・マルケイ、出演/キム・ベイシンガー、ヴァル・キルマー、テレンス・スタンプ

 ゾクッとするような色気を見せたかと思うと、一転して一途に我が子を思う母親の風情、そしてクールでクレバーな銀行強盗のシャープなアクション・・・キムの為の“ワン(ウー)マン・ショー”的な作品であるが、彼女の魅力(硬質な色気)を全面的に引き出しており、結構切れ味のいい作品に仕上がっている。なにしろ製作から18年経過して初見しても意外に古さを感じさせないのであります。(但し蛇足ながら、日本版タイトルの“ブロンディ”は意味不明⇒ヒロインの名は“マッコイ”なんです!)

 キムはドイツとスウェーデンとチェロキーの血が混じっているということだが、なるほどちょっと不可思議というか独特の美貌の所以はこの混血にありということか! 85年、ミッキー・ロークと競演した「ナイン・ハーフ」(エイドリアン・ライン監督)の官能的な演技で人気沸騰し、トップ女優の道を歩んだが、「ボクシング・ヘレナ」のヒロイン役を途中降板して超巨額の賠償金を請求され女優生命のピンチに見舞われた。しかし衰えぬスタイルと年齢を重ねた美貌でトラブルを跳ね返し(?)97年には「LAコンフィデンシャル」でオスカー(助演女優賞)を獲得し、その後も息の長い女優稼業を続けている。

 

13、天 使 と 悪 魔        (7点)

2009年作品 監督/ロン・ハワード、音楽/ハンス・ジマー、出演/トム・ハンクス、ユアン・マクレガー、アイェレット・ゾラー

 御存じ「ダヴィンチコード」に次ぐ、ダン・ブラウンのベストセラー小説の映像化。「ダヴィンチコード」は小説と同じく大ヒットしたものの、作品評価としてはイマイチだった故か、ハワード監督は脚本を原作からかなり変更して製作。その効果か、原作を無視して見ると、スピーディな展開で結構楽しめる。その内容からして、ヴァチカンが撮影に協力したとは思えないが、ヴァチカンの内部、コンクラーベの様子、舞台となる各教会やパンテオンの内部、ベルニーニの彫刻群など本物そっくりに再現してあり、映像として素晴らしい。(ローマをVIP待遇で特別観光した気分になれます) 特に反物質が爆発した天空のシーンは印象的で、映像の才人ハワード監督の面目躍如である。・・・映像の素晴らしさで+1点です。

原作のストーリーは噴飯ものに近い、いい加減なお話であるが、但し「ウンチク小説」としての意義はある。ところが映画ではスピーディな展開を重視した為、「ウンチク」の中核たるアンビグラム(対称文字遊び)やベルニーニの彫刻によるなぞ解き等の知的遊びが霞んでしまったのは致し方ないところかもしれない。

余談ながらラストで、(原作を変更して)ラングトン教授をヘリに乗せなかったのは正解。(原作通りだと“トンデモシーン”となって全てを台無しにしてしまうからだ。)  

 

14、交渉人/THE MOVIE      (4点)

2010年作品  監督/松田 秀和 出演/米倉涼子、筧 利夫、反町 隆史、津川雅彦、柳葉敏郎、伊武雅刀、陣内孝則、橋爪功、高橋克美

 人気TVドラマ(?)の映画版=脚本、監督とも同じ=で、豪華キャストを配したが、全くヒットしなかったのは作品を見てみると納得できる。シナリオが小手先で捏ね繰り回した感じで全くオソマツで、全体がおよそナンセンスなのだ。

 先ず主人公の交渉人が「交渉」する場面が全くなく、女”ダイハード”張りにやみくもに危険に突入していくだけ。スーパーで人質事件を起こした犯人が逮捕され、こいつが政界の闇に巣食う大物フィクサーだというのに、警察の調べで面が全く割れないというのは不可思議。そしてハイライトたるハイジャック事件を起こしたのは、このフィクサーを釈放させて暗殺するためだったとはもう唖然呆然!こんな手の込んだ騒ぎを起こす前に(フィクサーは世間に知られていない人物なんだから)いくらでもソッと消す機会はあったでしょうに!(あまりにもバカバカしいのでネタバレしちゃいました!・・・スイマセン) 〜ことほど左様にお粗末極まりないストーリーなのです。

 同じタイトルのハリウッドの「交渉人」(1998年、監督/F・ゲイリー・グレイ、出演/サミュエル・L・ジャクソン、ケヴィン・スペイシー)をもう一度よく勉強しなさい。 喝!  

 

15、ドランのキャデラック  (4点)

   

2009年製作、本邦未公開

原作/スティーヴン・キング、監督/ジェフ・ビーズリー、出演/クリスチャン・スレイター、ウェス・ベントリー、エマニュエル・ヴォージェ

 平凡な教師トムの妻は偶然大量殺人の現場を目撃してしまう。証人保護プログラムで守られると思ったものの、殺人を指令したギャングのボス・ドランに殺されてしまう。トムは復讐を誓ったものの、いざとなるとしり込みの連続で、挙句の果てにドジを踏んでドランと手下に甚振(イタブられる始末。屈辱を舐めた後、乾坤一擲、奇想天外な方法で見事復讐を果たす。

 トム(=ウエス)のダメ男ぶりには散々イライラさせられてしまい、途中でイヤになってしまうほど。一方ドラン=スレイターの悪役ぶりはなかなかで、特にラストで殺される直前の悪あがきぶりは秀逸。「悪あがき」の名演技で+1点、ウェスのダメ男ぶりで-2点といったところか。とにかくスレイターの悪役ぶりのみが見どころのB級作品で、輸入されなかったのも納得です。  

 

16、サハラに舞う羽根   5点)

製作2002年、公開2003

監督/シェカール・カブール、音楽/ジェームズ・ホーナー、出演/ヒース・レジャー、ウェス・ベントリー、ケイト・ハドソン、ジャイモン・フンスー

 原作はA・E・W・メイソンの「4枚の羽」で、英文学の古典的名作と言われているらしいが、本作品を見ると、それが信じられないのであります。主人公は将軍を父に持ち、誰からも愛されるエリート士官。なのにスーダンの反乱軍鎮圧に派遣されることが決まると、さっさと除隊してしまう。これでは仲間からも婚約者からも見放されるのは当たり前。その後に自責の念に かられ、“我に七難八苦を与えたまえ!”とばかりにスーダンの砂漠に赴く。(そんなんだったら初めから行けよ!)

 砂漠を彷徨い危機に陥ると、何故か都合よく、現地人の奴隷出身の傭兵が現れて、これがスーパーマンよろしく主人公を救い出す。(どうして一奴隷がこんなに万能の戦士で、しかもこの”落ちこぼれ”をトコトン助けるのか?)

 反乱軍に包囲され壊滅状態となった英軍から、銃が暴発して盲目となったかつての親友を救い出すが、彼の胸ポケットには元婚約者からその親友に宛てたラブレターが・・・!(砂漠に取り残された敗軍の盲目の将校がどうして無事英国に帰還出来るのか?)・・・等々“突っ込みどころ満載の杜撰なシナリオには呆れてしまう。

 但し、砂漠の中で英軍が反乱軍と戦うシーンは迫力満点で、映像的に素晴らしい。(これで+1点)

 蛇足ながら、この親友役がウエス・ベントリーで、「ドランのキャデラック」のダメ主人公とは全く違う颯爽とした英軍将校ぶりでビックリ。そしてヒロイン(=ケイト・ハドソン・・・ゴルディー・ホーンの娘らしい)がちっとも可愛くないのには興ざめ。  

 

17、大いなる男たち   (7点)

1969年作品 監督/アンドリュー・V・マクラグレン、音楽/ウーゴ・モンテネグロ、出演/ジョン・ウェイン、ロック・ハドソン、ベン・ジョンソン、トニー・アギラ

 南北戦争終結後、北軍のトーマス大佐(=ウェイン)は退役して、生き残った部下と共にひと財産を稼ぎ出すべく野生馬の捕獲に、そして私財を投げ打って参戦した南軍のラングトン大佐(=ハドソン)は一族郎等を率いてにメキシコ皇帝軍に参加すべく、共に南へと向かう。ところが、メキシコではフランス・ナポレオン3世が支援するマクシミリアン皇帝派と自由主義の民族派・フアレス大統領派に分かれて内戦中であり、彼らはその真っ只中へと飛び込んでいくことになる・・・。

トーマス達の“男気”とラングトンの“誇り高き南部魂”が交差する、おおらかな、まさに古き良き時代の西部劇。雄大な大自然の描写、殊に3千頭の野生馬の集団が大地を移動するシーンは圧巻。(今やこのシーンの再現(実写)は不可能であろう。) ストーリーの結末は定石通りとはいえ、ジョン・フォードの後継者とも謂われたマクラグレンは、歴史的事実(=メキシコのレフォルマ戦争)を巧みに取り込んで、その演出なかなかのものであります。  

 

18、炎のランナー  (7点)

1981年製作、1982年公開

監督/ヒュー・ハドソン、音楽/ヴァンゲリス、出演/ベン・クロス(=エイブラムス)、イアン・チャールソン(=リデル)、イアン・ホルム(=ムサビーニ)、ナイジェル・ヘイヴァース(=リンゼイ)、アリス・クリーグ(=シビル)ナイジェル・ダベンボードジョン・ギールグッド

 1917年、ケンブリッジに入学したエイブラムスはユダヤ人としての差別を意識しており、陸上短距離で名誉を得て差別を乗り越えようとしている。アラブの血を引くムサビーニのコーチを受け、大学幹部からは「プロコーチの指導を受けるのはアマチュアの道から外れている」と忠告を受けても意に介さない(=全ては勝利のため!)

 一方スコットランドの宣教師の家に生まれたリデルはラガーとして名声を馳せた後、敬虔な宣教師と名ランナーの両立により布教を推進しようと精力的に活動をしている。やがて二人は1924年のパリ・オリンピックの英国代表に選ばれて・・・

 アカデミー作品賞を受けた傑作との評価が高いが、作品としての深みが感じられない。尤も、伝統と格式を十二分に感じさせられる重厚なキャンパス、当時の学生のファッション振り、そしてパリ・オリンピックの再現などの映像は見事で、又ヴァンゲリスの音楽も傑作と言えよう。

 こうした個所に製作費をつぎ込んだ結果、メインの俳優は当時無名に近い若手を登用。これがハマればよかったのであるが、主役のベン・クロスは柔道の篠原(=全日本監督)を更に馬面にしたような感じの親爺くさい雰囲気で、清新な大学生のイメージとかけ離れており、完全なミスキャストであります。

 

1911人の侍  (6点)

1967年作品(東映) 監督/工藤栄一、出演/夏八木勲(仙石隼人)、里見浩太郎(三田村健四郎)、南原宏治(家老・榊原帯刀)、西村晃(浪人・井戸大十郎)、菅貫太郎(舘林藩主・松平斉厚)、大友柳太朗(舘林藩家老・井戸大十郎)、佐藤慶(老中・水野忠邦)、宮園純子(仙石の妻・織江)、大川栄子(暗殺隊の紅一点・県ぬい・・・可愛い!)、近藤正臣(織江の弟・伊奈喬之助)

 工藤栄一監督の集団時代劇3部作の最終編。「13人の刺客」で大評判を呼び「大殺陣」もヒットして、“三匹目のどぜう”を狙って作った作品。「赤穂浪士」と「七人の侍」をミックスしたようなシナリオで、敢えて白黒映画としたのはクロサワをかなり意識したものであろう。事実ラストの土砂降りの中で泥だらけになりながらの決闘は「七人の侍」の名シーンを彷彿とさせるものがある。

菅の、徳川直系をかさにきた悪辣な殿さま振りは「13人〜」と同様でツボにハマった名演技。佐藤慶の黒幕老中も流石の貫録。柳太朗の立ち回りも流石。後に怪優と言われた南原も意外や正攻法の演技で藩の忠臣を演じている〜〜とくれば、申し分なしかというと、肝心の11人の侍の個性が全くと言っていいほど描かれていない。仙石隼人の一人芝居みたいで、当時大看板であったハズの里見浩太郎の扱いは気の毒なほど。これでかなり(-2)の減点。(「七人の侍」では各人の個性がじっくりと描き込まれていた!)

 なお、蛇足ながら、悪辣な舘林藩主・松平斉厚や、忍藩主・阿部豊後守正由(=斉厚の非道を責めてその場で殺される)は実在の人物であるが、この映画のシナリオとは異なってどちらも不慮の死は遂げていない。 あの世の斉厚は、自分がこんな悪党に描かれて歯ぎしりしてくやしがっているかもしれない。

 

20、小説家を見つけたら  (8点)

2000年製作、2001年公開  監督/ガス・ヴァン・サント、出演/ショーン・コネリー(ウイリアム・フォレスター)、ロブ・ブラウン(ジャマール・ウォレス)、F・マーレイ・エイブラムス(クロフォード教授)、アンナ・パキン(クレア)

 ジャマールはブロンクスに住む16才の高校生。非常な読書家で文才があり、バスケットにも非凡な才能を示す。或る日ジャマールは、バスケコートの近くのアパート上階に住む謎の人物の正体を確かめるべく、仲間にけしかけられて忍び込むが、見つけられてデイバッグを残して慌て逃げ出す。翌日窓から投げられたデイバッグの中を開けると、ノートに書き溜めた文章に赤ペンで丁寧な添削が施されてあった・・・。こうして部屋に籠って暮らす謎の老人とジャマールの付き合いが始まる〜〜 人生の岐路に立った少年と人生の冬を迎えた老作家が出会い、次第に互いを認め、心を通わせ、そして周囲に波紋を巻き起こすプロセスが淡々とそして丁寧に描かれて、爽やかで心温まる作品になっている。

 或る意味では一種のファンタジーともいえる。失踪した飲んだくれを父に持ち、ブロンクスの貧民街に母と暮らしながら、明敏な頭脳と優れた文才、そしてバスケの名選手〜〜なんて少年は非現実的な存在。(加えて言えば、母親は貧民街に住まうにしては上品で身なりも小ざっぱりとしており、余り生活の苦労を感じさせない。 一方、老作家のほうも、たった1作品で不朽の名声を得たとはいえ、その後の悠々たる隠遁生活はどうやって維持できるのであろうか?(何故隠遁したかも不明!)またジャマール少年の周りも、(クロフォード教授を除いては)みんな“いい人”ばかりで、ニューヨークの場末にあるであろう危険、そして冷たさや厳しさは微塵も感じられない。

 しかしこうした“突っ込みどころ”を吹き飛ばしてしまうのは、コネリーの圧倒的な存在感のある貫録の演技と、ロブ・ブラウン(実年齢16才でこれがデビュー作)の瑞々しい透明感のある演技の掛け合いであると言えよう。

 

21、クィーン  (8点)

       

                  (本当にソックリさんです!)

2006年製作、2007年公開、 監督/スティーヴン・フリアーズ、出演/ヘレン・ミレン(エリザベス女王)、マイケル・シーン(トニー・ブレア)、ジェームズ・クロムウェル(フィリップ殿下)、アレックス・ジェニングス(チャールズ)シルヴィア・シムズ(皇太后)

 いやぁ、驚きです。現存する君主をここまで克明に描くとは!(例えば、日本の宮内庁なら絶対に許可しないでしょう) そして素晴らしい出来栄えなのです。女王の手記があったわけでもないのに、その人の心情に迫り、鮮やかにその人物を描き出しています。

 〜〜1997年5月労働党トニー・ブレアが首相に就任。伝統や憲法の改革を主張してきた彼が認証を求めて参内したとき、女王はいい顔をしません。そして8月31日、ダイアナがパリで事故死。女王はダイアナは既に王室を去った人間で、葬儀は私的なものと見做し、一家で休養先に引き籠りコメントも出しません。ダイアナを敬愛する国民は女王の冷淡な態度に怒り、ついには王制廃止の声すら上がります。国家と国民の為に一生を捧げてきた女王は国民の意識とのズレが理解出来無くなっているのです。女王=王室と国民の間を心配したブレアは女王の尊厳を損なわぬよう配慮しながら必死で女王に助言し、事態解決を図ります。やがて女王は国民の前に姿を見せ・・・。

 ウィリアム王子とキャサリン妃の婚儀を見た後でこの映画を見たので一層面白かったです。婚儀を通して黄色いウエアに身を包んだ女王の笑顔が特に印象的でした。(祝賀の歓喜に沸く国民の様子に、王室の安泰を感じて安心されたのかもしれません)

 それにしても、ヘレン・ミレンの、端に容貌が似ているというだけでなく、まさに女王その人になりきった演技は絶品です。(この年のアカデミー賞をはじめ、あらゆる映画賞の主演女優賞を総なめにしたのも納得の演技です)。ブレア首相やフィリップ殿下もよくこんなにそっくりな俳優をキャスティングしたと感心します。

 女王と、首相が立派に描かれている分、その連れ合いは割を食ったと言うか、フィリップ殿下は頑迷なKYとして、また首相夫人はイヤミな市民運動家(=辻本清美と蓮舫をミックスしたような?)として描かれて、ちょっと気の毒な感じがしないでもありません。  

 

22、アドレナリン ブレイク(BAD DAY)  (6点)

2008年製作 本邦未公開 監督&製作/イアン・デヴィッド・ディアス、出演/クレア・グース、ドナ・エアー、セイラ・ハーディング、ロビー・ギー

 イギリス映画とは思えないハードバイオレンスに徹した、或る意味での快作、いや怪作というべきか。〜〜夫と別かれ、タクシードライバーを生業とするヒロイン。何やら怪しげな運び屋を務めている。或る日突然、愛する娘を殺された彼女は復讐の鬼と化し、疑わしき輩を問答無用とばかりに次々と殺害していく。ここに刑期を終えて出獄した犯罪組織の極悪女ボスが絡み、悪徳刑事に弄ばれた女デカがあとを追う・・・。“アラフォー”女3人の個性が際立って、男たちの影が薄いともいえる。まさに、これぞB級エンタテインメント!  

 

23、 ジャンパー   (5点)

製作&公開2008年、 監督/ダグ・リーマン、出演/ヘイデン・クリステンセン(=デヴィッド・ライス)、サミュエル・L・ジャクソン、ジェイミー・ベル、ダイアン・レイン

 主人公デヴィッドは取り立てて能力のない、いじめられっ子の冴えない学生なのだが、或る日偶然、テレポート=瞬間空間移動=能力を持っていることに気づいた。こんな素晴らしい能力を持っているのだから、普通なら人類の為に尽くそうと大活躍するというのが、あたりまえのストーリー。ところが(この脚本のダメなところは)、主人公はその超能力を自らの楽しみだけに使い、なんと、銀行の金庫に瞬間移動して、大金をかすめ取るという体たらく。これで万事OKかというと、そうは問屋が卸しません。「神の摂理に反する能力は撲滅すべし!」と信じて疑わない、狂信的な不倶戴天の敵(=サミュエル・L・ジャクソン)一派が現れて、凄まじいばかりの対決が続く。

 で結局は、万事めでたし、めでたし〜で終わるのですが、主人公はこんなに苛酷な目に会ったというのに一切反省なしで、しかも恋人(=ジェイミー・ベル・・・これがまたブスで可愛げがない!)も彼を諌めるどころか、一緒に楽しんじゃおう!というのだからこれはもう救いがない。こんな役ドコロでは、「スターウオーズ・エピソード2&3」でブレイクしたヘイデンも立つ瀬がありません!

 映像はシャープで素晴らしいのだが、脚本がなってない。ダグ・マーリン監督さん、一体全体どうしたの?(本来なら4点だが、映像のシャープさで、+1点)  

 

24、フロム・ヘル (6点)

2001年製作、2002年公開、監督/アルバート・ヒューズ、アレン・ヒューズ、出演/ジョニー・デップ(フレッド・アバーライン警部)、ヘザー・グレアム(メアリー・ケリー)、ロビー・コルトレーン(ピーター・ゴットレイ)、イアン・ホルム(ウイリアム・ガル卿)

 〜〜1888年のロンドンの場末、ホワイトチャペルで売春婦が次々と殺害される事件が発生。何れも鋭利なナイフで喉を掻き切られ、局部や内臓をえぐり取られるという残忍な犯行で世紀末の世間を震撼させた。これが英国犯罪史上に名高い“切り裂きジャック事件”。5人の売春婦を殺害するやプッツリと犯行は止まり、事件は迷宮入り。今日に至るまで謎に包まれたままで、真犯人をめぐって諸説紛々、今もって議論が絶えないという。

 本作はこの謎に真っ向から挑んだ作品ですが、タイトルからしてホラーっぽく、ゾッとしません。しかし、ジョニー・デップ主演ということで見てみました。すると・・・史実を丁寧に忠実に描いており、特に闇と霧に包まれた19世紀末のロンドンが見事に再現されており秀逸です。又、最近はケレン味たっぷりの演技が目立つデップも、真面目に警部役に取り組んでいまして、作品は意外にもそこそこの出来栄えになっておりました。

 で、犯人はというと〜〜、諸説ある中で、“恐るべき陰謀説”をとっていますが、これはアメリカ映画ならではの大胆さで、イギリス資本なら絶対にありえません。しかしプロセスはかなり説得力があり、よく出来たシナリオと言えましょう。

 実際の事件で最後に惨殺されるのはメアリー・ケリーですが、映画では最後に“ひと捻り”してあり、それがこの悲惨なストーリーのエンディングの救いとなっています。  

 

25大刹陣 (6点)

1964年製作、監督/工藤栄一、脚本/池上金男、撮影/古谷 伸、 出演/里見浩太郎、大坂志郎、平幹二朗、大友柳太朗、大木 実、安部 徹、河原崎長一郎、宗方奈美、三島ゆり子

 延宝6年(1678年)4代将軍・家綱の時代。家綱に世継ぎが無く、大老・酒井忠清は将軍の弟・甲府宰相・綱重を擁立し、自らは執権となって(=鎌倉幕府の北条氏の如く)天下の実権を握ろうと野心を燃やす。これを阻止せんとする軍学者・山鹿素行は浪人らを組織し、なんと綱重暗殺計画を・・・。

 工藤監督の“集団時代劇”第2弾。前作(=13人の刺客)と比べて、出演陣も落ちるが、ストーリーももう一つ冴えない。

 クライマックスの大乱闘は・・・田畑から掘割まで、数十人が泥まみれ・ぬれ鼠となっての大立ち回りをハンディカメラで追い、ドキュメンタリータッチの大迫力で素晴らしいのであるが、肝心の襲撃作戦そのものは山鹿素行が立案したとも思えないお粗末なもの。(案の定、襲撃隊は目的を成就出来ず、唐突に“落ちこぼれ旗本”=平幹二朗が代わって遂げることになるのダ!)そしてそこに至る準備過程や、死を覚悟の特攻隊に志願する連中の心中もよくわからない。

 但し、白黒画面なのに、鮮明な色彩が見えるような抒情的、或いは迫力ある映像が多く、これはビジュアル的には素晴らしい。監督とともに、撮影担当・古谷 伸のカメラワークが秀逸であります。(これで+1点)

 因みに脚本は前作に続いて池上 金男(=作家・池宮彰一郎)。兄将軍・家綱を継ぐとの噂が高かった甲府宰相・綱重が34歳の若さで急逝(怪死?)したという事実だけからこのようなシナリオを“でっち上げた”着想力は素晴らしい。詳細なデータ分析と独特の歴史解釈は彼ならではのもの。この2脚本で名を挙げ、なんと69歳にして作家デビュー。「47人の刺客」は「忠臣蔵」を新解釈で世間をアッと言わせ、忽ちにして人気作家となったが、名を成した後に先を急ぎ過ぎたか?!相次ぐ盗作騒ぎで名誉失墜し、以後“閉門蟄居”の形でひっそりと世を去ったのが何とも惜しまれてならない。  

 

26ポイント・ブランク (8点)

19997年製作、本邦未公開、監督/ジョージ・アーッミテージ、出演/ジョン・キューザック、ジョーン・キューザック=(ジョンの実姉)、ダン・エイクロイド、ミニー・ドライヴァー、アラン・アーキン

 腕っこきで一匹狼の殺し屋(=キューザック)だが、最近いろいろと悩みも多く、精神科医(=アラン・アーキン)に押し掛けてはその医者を悩ませる。(・・・このあたりはデ・ニーロの「アナライズ・ミー」を彷彿させて可笑しい!)

 10年ぶりにハイスクールの同窓会に出席しようと故郷に出掛けると、実家はコンビニになってしまっている。かって恋仲だった女性(=ミニー)は町のミニ放送局でジョッキーで活躍中。で、その田舎町に彼を同盟軍に引き入れようという殺し屋集団のボス(=エイクロイド)や彼を付け狙う殺し屋までも現われて、もう“しっちゃかめっちゃか”の大騒動・・・。

 いやぁ、ハチャメチャのストーリーながら、B級の“快作”です。とにかく最後まで面白い!キャスティングも文句なしです。日本に輸入公開されなかったのが不思議です。ジョン・キューザックが製作まで携わっていますから、彼の一家のワンマンショー(否、ワンファミリー・ショーか!)に違いないのですが、これはワンマンが良いほうに展開した数少ない例と言えましょう!そして全編に流れる80年代のヒットメロディもオジさんおばさんには垂涎モノです。

 

27、地球が静止する日 (4点)

製作&公開・2008年、監督/スコット・デリクソン、出演/キアヌ・リーヴス、ジェニファー・コネリー、ジェイディン・スミス、 キャシー・ベイツ

 「マトリックス」のキアヌ主演だからと期待して見たら裏切られてガッカリ。序盤は謎の宇宙人登場!で、果たしてどうなることやらと興味深々なのですが、中盤からいい加減なストーリーになって、”なんだかなぁ”といった状態となります。地球を静止することができるのか?そして止めたら果たしてどんなことになるのか??・・・タイトルからはそれを期待してしまうのですが、その期待は見事に外されます。

 この宇宙人が地球をどうしようと考えているのかよくわかりません。そして偶然知り合った女性科学者(ジェニファー)が「人類は変われるから、助けて!」と言っただけで、聡明な(ハズの)宇宙人はどうしてそのこと=全人類の変革を信じてしまうのでしょう。遥かな昔から地球と人類を見つめてきたというのに、人類社会の仕組みを理解していないのでしょうか?。〜〜というわけで、”大事態≠ヘ発生しませんから、当然ドラマチックな展開にはなりません。タイトルに偽りありです!

 そして、キャシー・ベイツが演じる米国・国防長官もおよそ知性のかけらも感じられません。未知なる相手に対し、単純攻撃を仕掛けて被害を拡大するだけ。米軍は果たしてこんなバカ組織なのでしょうか?

 キャシーその人の演技にも全く魅力がありません。又ヒロインの継子(まま子)役のジェイディン・スミスも目障り感があるだけで、これなら子役として登場する意味がありません。(ウイル・スミスの息子ということで起用したのでしょうか?) この二人はミスキャストと言えます。

 本作は、巨匠・ロバート・ワイズの傑作SF映画のリメイクらしいのですが、この出来栄えではワイズを冒涜するようなものでしょう。

余談ですが、ヒロインを演ずるジェニファー・コネリーは、見方によっては美しく成長したともいえるのですが、私的には痩せギスになって肌も荒れており、魅力半減です。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の美少女時代が懐かしい!  

 

28、スピリット (5点)

2006年製作&公開、監督/ロニー・ユー、出演/ジェット・リー、中村獅童、スン・リー、ドン・ヨン、原田真人

 所謂マーシャルアーツの力作。当時43歳になったジェット・リーが、自らの肉体によるカンフー演技のベストパフォーマンスはこれが最後との思いを込めた作品。全編から彼の熱い情熱が伝わってきます。最後の相手役に選ばれた獅童も堂々と相対しており、そして香港映画としては日本人としての描き方に(珍しくも))好感が持てます。 尤もストーリーは、リーのカンフーアクションを見せる為の付け足しみたいなもので、やっぱり総合評価としては5点くらいかなぁ!

 余談ですが、獅童はこの演技で2年後に「レッドクリフ」の甘興役に抜擢されたんだと思います。  

 

29 モンタナの風に吹かれて (6点) 原タイトルはthe Horse Whispererだから、素晴らしい翻訳だと思います!

1998年製作&公開

製作・監督・主演/ロバ−ト・レッドフォード、共演/クリスティン・スコット・トーマス、サム・ニール、スカーレット・ヨハンソン

 不幸な事故で、馬が瀕死の重傷を負い一命をとりとめたものの、暴れ馬になってしまい、一人娘も片足を失って、自分の殻に閉じこもってしまった。パリパリのキャリアウーマンで、聡明な母親は娘を直すには先ず馬を元通りにすることだと考え、あるゆる文献を読みあさって、Horse Whispererという職業があることを知り、その中でも最高の男、モンタナの牧場に住むトム・ブッカーを訪ねる。

〜〜説得力のあるイントロで、さぁ、ここから、互いに精神の奥底に深い傷を負った少女と名馬がモンタナの美しい大自然の下で、名人ウイスパラーのカウンセリングによって、再び心の輝きと強い絆を取り戻す感動のストーリー・・・

・・・と思った所が、どっこいそうはならないのであります。娘はそっちのけで、不倫もどきのストーリー展開になってもう唖然呆然。レッドフォードのワンマン映画なんだから、真摯なカウボーイがニューヨークのインテリおばちゃんに好き勝手にされるようなストーリーにしなくてもいいのに。アメリカ映画人の知性派・レッドフォードも老いたり!と言わざるを得ないのが残念!   (7点だが、この残念!で、マイナス1点)

 

30 利   休 (8点)

製作&公開 1989年 松竹映画

監督/勅使河原 宏 、原作/野上彌生子、脚本/赤瀬川源平、音楽/森田富士郎、衣装/和田エミ

出演/三国廉太郎=利休、山崎 努=秀吉、りき(利休の妻)=三田佳子、織田信長=松本幸四郎、徳川家康=中村吉衛門、茶々=山口小夜子、北の政所=岸田今日子、豊臣秀長=田村亮、鳥飼彌兵衛=観世栄夫

 お馴染、秀吉と利休の権力と芸術の戦いを描いた野上女史の名作を、勅使河原監督がおそらく当時最高のスタッフと豪華キャストを結集して、芸術性豊かに描いた大作。画面に出てくる置物とか茶碗とかは皆、天下の名品に違いない。 監督の徹底した芸術への拘りが感じられます。

当時は日本映画界もこれだけの作品を作り出す底力があったんだ!と思い起こさせてくれます。忘れ難いのは、ねねやおふくろさんといっしょになった時に山崎=秀吉が喋る田舎丸出しの名古屋弁。山崎努ってやっぱり大した役者だなあ!と感じ入ります。こればっかりは「江」における岸谷クン=秀吉もかないません。

 

31ワイルド・スピード MAX  (7点)

2009年公開

監督/ジャスティン・リン、出演/ヴィン・ディーゼル、ポール・ウォーカー、ミシェル・ロドリゲス、ジョーアナ・ブリュースター

私はこれを初めて見たが、2001年から続いている人気カーアクション・シリーズの第4作。のっけのドミニカにおけるタンク・トレ−ラーから石油jを強奪するシーンのど迫力で、画面にくぎ付けになります。実写とCG技術が見事に融合してます。

なんといっても製作を兼ねるヴィン・ディーゼルの存在感が凄い。中盤の市内におけるカーレースもスピード感満点だし、メキシコ国境の山中地下に掘られたトンネルでのカーチェイスも素晴らしい。もうストーリーなんかはどうでもいいのであって、細かいことは言いなさんな。頭をカラッポにして楽しめばいいんだ!というのがディーゼルのメッセージでありましょう。  

 

32 ボビーZ     (5点)

公開2007年

監督/ジョン。ハーツフェルド、出演/ポール・ウオーカー=ティム・カーニー、ローレンス・フィッシュバーン=悪徳警官・クルーズ、オリヴィア・ワイルド=ヒロイン・エリザベス

 ドン・ウインズローの傑作小説の映画化。期待して見たのですが、これが超B級映画。事情通に言わせると、主演のポール・ウオーカーはB級専門の主役役者らしい。ストーリーは70%くらい原作を基にしているものの、如何せんシナリオの出来栄えがお粗末で、原作の持つシャープな切れ味やユーモアが漂いません。

  キャストの中でまともなのはフィッシュバーンだけだが、これとても如何にも悪役という面構えで、その後の展開が割れてしまう。何よりヒロイン役のオリヴィアがとんでもないブス、そして本物のボビーZの息子役の子役がメタボでちっとも可愛くない!.そして”瓜二つ”と云う割にはティムとZが全く似ていない==これなら廻りに直ぐバレちゃうじゃないか!〜〜てなことで、突っ込みどころ満載で本当は4点なんだけど、大好きなウインズローに免じて+1点を差し上げましょう。  

 

33 サ  ハ   ラ  (7点)

公開2005年

原作/クライブ・カッスラー、監督/ブレック・アイズナー、出演/マシュー・マコノヒー=ダーク・ピット、ペネロペ・クルス=ヒロイン、スティーヴ・ダーン=アル・ジョルディーノ、ウイリアム・H・メイシー=サンデッカー提督

〜〜やっと出ました!ダーク・ピット。私はもう20年来クライブ・カッスラーのダーク・ピットシリーズを愛読しております。

 思い起こせば、1980年というから、もう30年以上前に、最初のダーク・ピット=「レイズ・ザ・タイタニック」が映画化されました。ピット役はリチャード・ジョーダン、提督役は名優ジェイソン・ロバーツ。ストーリーは原作に忠実だったのですが、全編を通じて、どうにも地味で暗い感じ。 原作は奇想天外といってもいいほど自由奔放な大冒険が溢れているのと正反対な仕上がりになっていました。これを見て原作者のカッスラーはもう怒り心頭。金輪際私の原作の映画化は認めないと宣言したのです。

〜〜で、もうダーク・ピットをスクリ−ンで見る機会はないと諦めていたら、それから数十年後に映画化されたではありませんか!。しかも、「死のサハラを脱出せよ!」はシリーズ中最高とピットファンの衆目が一致する大傑作。

主演のマコノヒーはピットのイメージと一寸どころか大いに違うのですが、彼が製作者の一員も兼ねているから仕方ありません。カッスラーに製作を承諾させた、その功を評価しましょう。

で、作品はそれほどITに頼らずに実写で結構いい線をいっておりまして、砂漠でのロケが決まっていましたし、川中でのボートテェイスや、ラストの格闘などのアクションシーンもなかなかの迫力。まぁこれならカッスラーも納得するのではないかという出来栄えになっており、ひと安心した次第です。出来栄え6点に、頑張ったでしょうで+1点です。

 

34 アサルト13 要塞警察 (7点)

公開2006年

監督/ジャン=フランソワ・リシェ、出演/イーサン・ホーク(=ジェイク)、ローレンス・フィッシュバーン(=マリオン)、ブライアン・デネヒー、ガブリエル・バーン、ジョン・レグイザモ、マリア・ベロ

 雪の降りしきる大晦日のデトロイト。ジェイクが勤務する13分署に大雪で立ち往生した囚人護送車が緊急避難。収監した4人の囚人の中には暗黒街の大ボス・マリオン・ビショップの姿があった。深夜に突然武装集団が襲撃してくる。目的は何か?ジェイクは囚人達を檻から出して武器を持たせて対抗するが、多勢に無勢、果たして絶対の危機を脱することができるのか?・・・。

 武装集団の正体と襲撃の目的は早々と明らかとなり、これはもうちょっと引っ張ったほうがサスペンスを増したであろうが、そのあと、どうやってピンチを脱するか?、だれが生き残るか?といった点で先の読めない展開に緊迫感があり、又登場人物のキャラクターがしっかりと描き分けられています。イーサン・ホークがなかなかいい味を出しており、フィッシュバーンも圧倒的な存在感を示しています。キャスティングがツボに嵌っているといえましょう。

 鬼才ジョン・カーペンターの傑作「要塞警察」(76年作品)をフランスの若手監督リシェがリメイクしたものということで、オリジナル作品は知りませんが、本作はなかなか面白い作品に仕上がっていました。 

 蛇足ですが、邦訳タイトルは、ちょっと見には、一体何のことやらさっぱり分かりません。「要塞警察13分署を襲撃せよ!」と謂うことなんでしょうが・・・。  

 

35 ゴールデンスランバ− (5点)

2009年

原作/伊坂幸太郎、監督/中村義洋、出演/堺雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとり、柄本明、貫地谷しほり、永島敏行、大森南朋、竜雷太、伊東四朗、香川照之

 友人が介在した陰謀に巻き込まれ、首相暗殺犯として追われる主人公が、必死の逃亡を図り、学生時代の友人等の助けによって窮地を脱するのであったが・・・

 伊坂の原作は読んでないので、どんな出来栄えだか知りませんが、この映画は酷い。アクション&サスペンスだか、コメディだかよく分かりません。恐らく監督は前者の線を狙ったんでしょうが、それなら細部に亘ってリアリティを積み上げなければ面白さは醸し出せません。才気というか観念だけが突っ走って、足もとが疎かになっており、随所に突っ込みどころ満載で、これでは見ていてあほらしいというか、白けるだけです。

 〜〜パレード中の首相が暗殺されたのに、群衆はパニックにならない。逃亡中なのに、素顔をさらけ出して変装もしない。河原に10年も放置したカローラが、バッテリーを変えただけでちゃんと走る。あっという間に町じゅうのマンホールに花火が仕掛けられる・・・等々。んなわけ無いでしょう! 

 荒唐無稽なストーリーほど、廻りのディテイルにリアリティを持たせるというのが鉄則ですが、日本の演出家はそこのところが分かっていません。予算が無いなら、知恵と工夫=CGを駆使するという認識が無いならば、この分野に挑む資格はないのです。因みにタイトル=ゴールデンスランバーはビートルズの曲ということですが、何故このタイトルなのかもよく分かりません。共演陣が豪華なのは認めましょう。

 

36 ヒトラーの贋札  (7点)

2008年公開    (07年・アカデミー外国語映画賞受賞)

監督/ステファン・ルツォヴィッキー、出演/カール・マルコヴィクス(=サロモン・ソロヴィッチ)、アウグスト・ディール(=ブルガー)、デーヴィト・シュトリーゾフ(=フリードリッヒ少佐)、ドロレス・チャップリン

 ユダヤ人強制収容所内の一角に集められたのは天才贋札作りのソロモンや印刷工たち。フリードリッヒ少佐からポンド、そしてドルの偽札作りを命じられる。命令を拒否すれば即銃殺、しかし成功すればナチスの延命に加担し、多くの同胞の命を奪うことになる。

主人公は“今日の銃殺より明日のガス室送りがましだ!」と理想肌のブルガーの説得に努めつつ、仲間と共に生き抜くため偽札作りに精魂込める・・・、

ナチスの強制収容所ものといえば、陰々滅滅で見ていてくたびれるのが常であるが、これは異色の切り口でなかなか面白い作品に仕上がっていました。ドイツ&オーストリアの合作で役者に馴染みは全く無く、しかも主人公を演じるマルコヴィクスは見るからに小悪党といった感じで全く華が無いのですが、かえってそれがストーリーに緊迫感を醸し出したといえましょう。

生き延びてモンテカルロのカジノホテルに現れ、トランプで勝ったものの、ルーレットで突然狂ったように散財し、偽ドルを使い果たすラスト近くのシーンが主人公の複雑な胸中を示して秀逸です。

因みに、カジノで一夜を共にする女性を演じるのは、チャップリンの孫娘(=チャップリン4人目の妻ウーナ・オニールとの間に出来た息子マイケルの娘)のドロレス・チャップリン。スタッフ&キャスト全てドイツとオーストリアで固めた中でただ一人彼女(アメリカ人?)というのも面白いところです。なかなかの美形です。そういえば、目元がチャップリンに似ているような・・・。

 (ドロレス・チャップリン)

 

37 ROCK YOU! (ロック・ユー!)(6点)

2001年公開

監督/ブライアン・ヘルグランド、出演/ヒース・レジャー(=ウイリアム)、ジャニン・ソサモン(=ジョスリン)、ルーファス・シーウェル(=アダマー伯爵)、ポール・ベタニー(=チョーサー)、マーク・アディ、アラン・テュディック

 14世紀のフランス、イギリスを舞台に、平民の子ウイリアムが貴族の息子と偽り、ジュースティング(馬上槍試合)を通じてのしあがっていくサクセスストーリー。冒頭いきなり観衆がロック調で大合唱するシーンにビックリするが、その後も軽いノリで話が進みロック音楽が違和感を感じさせないのが不思議。悪役は槍試合の強豪アダマー伯ひとりで、あとはみんな“いい人”で、これもまた違和感を感じさせず、なかなかの演出です。この内容には原題A knight ‘s tale=ある騎士のお話=よりも邦訳タイトルのほうがピッタリとします。

 ヒースがひたむきな若者を演じて好印象だし、詩人チョーサー役のポールが秀逸。惜しむらくはヒロイン役のジャニンがあまり可愛くないことで、最近は(といっても本作は10年前だが・・・)どうしてヒロインに美人が少ないんだろうか??・・・。  

38 恋はデジャ・ブ groundhog day (7点)

1993年公開

監督/ハロルド・ライミス、出演/ビル・マーレイ(=フィル)、アンディ・マクダウェル(=リタ)、クリス・エリオット

 毎朝6時になると、全てがリセットされて1日前に戻る。つまり永遠に明日が来ないのだ!・・・TVレポーターのフィルは聖蜀の日groundhog day=2月2日にウッドチャック(大型モルモット)が目覚めて春となる=の行事のレポートのために田舎町を訪れるが、翌朝目覚めると、なんと又2月2日なのだ。(彼だけその意識があって、クルーや町の人たちはその意識が無いというのは理屈に合わないのだが、まぁ、それは置いといて・・・)

 永遠に明日が来ないと分かったら、その人はどういう行動をとるのか?・・・ここからがこの映画の真骨頂で、主人公の思考と行動の変化が誠によく描かれていて面白い作品になっています。

 ビル・マレーはかなりアクの強い役者で、同行したプロデューサー・リタとのロマンスはしっくりときませんが、自称セレブ気取りのイヤミな男が試行錯誤のうえに、次第に純化していくプロセスは説得性があり、「ゴーストバスターズ2」で組んだライミス監督が彼を起用したのは的を得ていると納得です。  

39、迷子の警察音楽隊  (7点)

    

2007年公開

監督/エラン・コリン、出演/サッソン・ガーベイ(トゥフィーク)、ロニ・エルカベッソ(ディナ)、サーレフ・バクリ(カレード)

アレクサンドリアの警察音楽隊がイスラエルに招待されるが、行き先を間違えてしまい、荒涼たる砂漠の町に到着。誠実だが頑固で融通のきかない隊長トゥフィークたちは、親切な食堂の女主人ディナの計らいで、彼女の家などで一夜を過ごすことになり、村のの人々と思わぬ交流を行う。そこはかとなきペーソスとユーモア、そして主人公達の心の襞(ひだ)を丁寧に描写した「佳作」と呼ぶに相応しい、イスラエルとフランスの合作作品。

何もない街道にバスが止まり、やがて動き出すと、そこには8人の楽団員が残され呆然と立っているシーン、カレードが地元の青年とあまり美しくない女性に恋の手ほどきをするシーン等に、軽やかなユーモアとシャープなカメラ・アイを感じて感心したが、演出は淡泊過ぎて物足りない。又折角の音楽隊なのだから、魅惑的なアラブ音楽の演奏シーンがストーリーの中にもっとあってもよかったのにと残念である。ガーベイとエルカベッソは名演技で、役者としても素晴らしい。

40、ストリートファイター (8点)

1975年公開  

監督/ウォルター・ヒル、出演/チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーン、ジル・アイアランド、ストロ−ザー・マーティン

1930年、大恐慌待真っただ中のニューオーリンズにやってきた流れ者が、博打好きでC調で軽薄な手配師(マッチメーカー)と組んで、ナンバーワンファイターとそのボスに挑戦する・・・寡黙な一匹狼のブロンソン、調子のいいコバーン・・・それぞれの持ち味を存分に生かした男の友情と別れを描いた快作で、40年近く経過した後で見ても古さを感じさせない。

これが監督デビュー作とは、流石ウォルター・ヒル!。各シーンに時代背景を丁寧に描写しているところも作品に厚みを加えている。(余談的にいえば、ブロンソンの愛妻ジルを起用しているあたり、気配りも行きとどいているではないか!)

41、踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!  (5点)

2010年公開 

監督/本広 克行、出演/織田祐二、深津絵里、小栗旬、小泉今日子、柳葉敏郎、伊藤淳史、内田有紀、ユースケ・サンタマリア、小泉幸太郎、北村総一朗他々

 湾岸署は新庁舎へ引っ越しすることとなり、係長に昇進した青島刑事は引越し本部長を命じられ大わらわ。そんな最中奇妙な事件が連続し、捜査に追われるうちに、青島らの拳銃が奪われ、殺人事件に使用されることになってしまう。やがて犯人はかつて青島が逮捕した囚人を釈放しなければ、無差別テロを行うと通告してくる。本庁との軋轢に苦しみながら、期限の迫る中で青島ら湾岸署はどう動く・・・。

人気シリーズ、7年ぶりの第3作。超豪華なキャストを揃えたに拘わらず、空前の大ヒットとなった前作に比べもうひとつパッとしない結果に終わったようで、関係者は、青島と室井の絡みが少なかったことなどをその要因に挙げているようだが、それは認識の間違い。

脚本があまりにも芸が無いというか、お粗末なんです。つまり、真犯人がかつて逮捕した犯罪者というのでは面白くもなんともない。シリーズには連続性というか、或る程度のマンネリは不可欠で、青島を取り巻く人々によってそれは満たされているのであるが、敵対する犯人は斬新かつ大胆なキャラクターを生みださなければならない。そこのところを間違えているから、観る者に新たな興奮を巻き起こさないのです。

ハリウッドの製作スタッフならもっと違ったシナリオを準備するでしょう。折角これだけの俳優を揃えながら,もったいない! (青島刑事の右前に、ステキな女性がいるな!と思ったらこれが内田 有紀ちゃんで、この起用は大変よかったです!)  

42、シンレッドライン    (6点)

1999年公開   

 監督/テレンス・マリック、出演/ショーン・ペン、ジム・カヴィーセル、イライアス・コティーズ、ニック・ノルティ、エイドリアン・ブロディ、ジョン・キューザック、ジョン・C・ライリー、光石 研、ジョン・トラボルタ、ジョージ・クルーニー

 太平洋戦争の激戦地となったガダルカナル。上陸した米海軍C中隊はたたきあげの鬼指揮官トール中佐の指揮の下、日本軍が立て篭もるトーチカの丘を攻め立てるが、日本軍の頑強な抵抗で多くの兵士が命を落とす。トールは猛攻を命ずるが、中隊長は「部下を無駄死にさせたくない」!と、命令を拒否する・・・

戦闘シーンはやや平板であるが、激戦下での兵士の心情を丁寧に描き、そのいっぽうで青い空、透明な海、緑濃き山、そして穏やかな島民の生活を美しいキャメラワークで抒情的に描き出し、強烈な反戦アッピールになっている。ハンス・ジマーの抒情的な美しいメロディも印象的だ。

 豪華なキャスト(=トラボルタやクルーニーがチョッと出で、ライリーなんかセリフも殆ど無いのだ!)の中で、鬼指揮官役のニック・ノルティが強烈な存在感を示す一方、トップに名前が挙がるショーン・ペンはベテラン軍曹という“美味しい役どころに拘わらず、いつもの個性が光らず存在感が薄いのは意外である。

 上にも書いたが、戦争大作というには戦闘シーンやドラマとしての演出が平板で、171分はあまりにも冗長に過ぎて見た後に疲労感が残る。抒情性の良さ+1点を加味しても6点がいいところ。

 で、実際のガダルカナル戦はというと・・・米軍が上陸したのは1942年8月7日。日本軍の総兵力は31,404名、うち撤退できたものは10,652名、それ以前に負傷・後送された者740名、死者・行方不明者は約2万名強で、このうち直接の戦闘での戦死者は約5,000名、残り約15,000名は餓死と戦病死だったと推定されている。これに対し、米軍の損害は、戦死1,598名、戦傷4,709名で、日本軍が島から撤退したのは43年2月7日。敗北を覆い隠す為、此の事態は当時の国民には知らされず、撤退した兵士もそのまま南方に留め置かれたという。

43、ジャック・フロスト/パパは雪だるま  (7点)

    

1998年製作(本邦未公開)  

 監督/トロイ・ミラー、出演/マイケル・キートン、ケリー・プレストン、ジョセフ・クロス

 クリスマス・イブの降りしきる雪の中、妻と一人息子が待つ山荘に急ぐ夫は運転を誤り・・・そして1年後、父の遺品のハ−モニカを吹くと、そのメロディに乗って、父の魂が雪だるまに蘇って〜〜アメリカ映画では定番の“クリスマス・ファンタジー”と“ゴーストもの”をミックスしたような作品。

 B級ながら、なかなかいい味わいの作品に仕上がっている。子役がとてもいいし、余り可愛くない素朴な雪だるまの造形がちょうど言い按配で秀逸。拾いものの一編と言えよう。

 (蛇足ながら、妻役のケリー・プレストンはジョン・トラボルタの妻。此処ではあまり存在感を発揮できなかったが、サッパリ系の美女で好感が持てる。)

   

44、レスラー   (7点)

2008年製作、2009年公開

監督/ダーレン・アロノフスキー、出演/ミッキー・ローク、マリサ・ドメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド

80年代に“ザ・ラム”というリングネームでプロレス界のスーパースターだったランディも、老境に入った今はドサ廻りのレスラーとして、トレーラーハウスの家賃にも事欠く有様。努力の末、漸く心を開きはじめた一人娘との約束を反故にして“もとの黙阿弥”となり、心の拠り所としたストリッパーにも冷たくされ、命とりになりかねない心臓病を隠して、かっての黄金カードの再戦に挑んでいく・・・。

 もうスターとしての生命は終わったと見られていたロークが、文字通り体当たりの演技で見事復活を果たした作品。落ちぶれたレスラー・ラムは、どうしても当時のロークの境遇とオーバーラップして、その演技に観衆のシンパシーを掻き立てて止まない。興行成績を危惧する製作者を説き伏せて、ロークを選んだ監督の意図は見事に当たったと言えよう。

 ローク一人にスポットが当たったが、44歳(当時)のスレンダーな裸身を曝け出したマリサ・ドメイの、そのボディだけでなく、子持ちの中年ストリッパーの哀感漂う演技も又見事である。

    

45、トレーニング デイ (6点)

 2001年

監督/アントワン・フークア、出演/デンゼル・ワシントン(=アロンゾ)、イーサン・ホーク(=ジェイク)、スコット・グレン、エヴァ・メンデス

 志願してロス市警麻薬取締課に配属になったジェイクはその初日、麻薬に関して精通するベテラン刑事アロンゾの車に同乗し、彼から捜査の基本からたたき込まれる。新人・ジェイクに対し、アロンゾは捜査貫徹の為には法も無視する、“ミイラ取りがミイラになった”本性を露わにし、ジェイクをその世界に引きずり込もうとする・・・

 終盤までは麻薬捜査の本質を克明に描き出した、良く練った脚本が素晴らしく、デンゼルとイーサンがその演技力を存分に発揮している。(特にアロンゾのセリフは素晴らしい!) 但しラストはややあっけない。もう一捻りあってもいいのではないかと思われるが、結局“悪は栄えず”という原則どおりの処理である。

 悪徳刑事役を演じきったデンゼルが念願のアカデミー主演男優賞を受賞したが、彼の演技力からすればこのくらいは当たり前であり、受賞した本人が「これで?」とビックリしたのではないか!

「アカデミー賞」というのは結構不見識なもので、この年なら、主演男優賞に相応しい演技をしたのは「アイ・アム・サム」のショー・ペンを筆頭に「ビューティフル・マインド」のラッセル・クロウや「アリ」のウイル・スミスあたりではなかろうかと思われるのだが・・・“いい人”の代表みたいなデンゼルの、悪役の意外性が高く評価されたということか!

46、コレリ大尉のマンドリン  (6点)

2001年

監督/ジョン・マッデン、出演/ニコラス・ケイジ、ペネロペ・クルス、ジョン・ハート、クリスチャン・ベイル、イレーネ・パパス、

時は第二次大戦の最中、エーゲ海に浮かぶ風光明美なケファロニア島にドイツとイタリアの軍隊が侵攻。イタリア軍の軍楽隊(?)のリーダーはマンドリンを背負ったコレリ大尉。島には老練な医者と美しい一人娘がおり、彼女の婚約者は反イタリアの戦争に出たまま音信不通。真面目なコレリも女好きのイタリア男の例にもれず、娘に一目惚れ。さぁ、この三角関係の行方は??戦時中のラブ・ロマンスで終わるかと思ったら、終盤、ドイツ軍と反旗を翻したイタリア軍との激烈な戦闘が起き、捕虜となったイタリア兵士が虐殺される。コレリ大尉の運命や如何?

佳作といえるが、いろんなものを詰め込み過ぎて焦点がぼやけたきらいは否めない。ラブロマンスに徹すれば、はじめは毛嫌いしていたコレリを、何故娘が婚約者を捨ててまで選んだのか?その辺りをじっくりと描くこともできたであろうに。本作では娘の心変りが納得出来ないし、これでは婚約者が可哀そうというもんだ。(所詮、女心は理性では理解できない不可解なものと言うべきか!)

或いはラブロマンスを片隅に置けば、島民、ドイツ軍、イタリア軍の相克をじっくりと描いた骨太の」人間ドラマに仕上げることも出来たかもしれない。

ギリシャが舞台に拘わらず、ギリシャ俳優は婚約者の母親を演ずるイレーネ・パパスだけ。ニコラス・ケイジのイタリア人は真面目感が強すぎてもう一つピンとこない。すっぴんメイクのペネロペはまずまずの好感度。何よりも老医師を演ずるジョン・ハートがさすがの演技で全体を締めている。

47、パニッシャー    (5点)

  

2004年

監督/ジョナサン・ヘンズリー、出演/トム・ジェーン、ジョン・トラボルタ、ウイル・パットン、ロイ・シャイダー、レベッカ・ローミン=ステイモス

 FBI潜入捜査官フランクは逮捕劇の最中に黒幕セイントの二男を死なせてしまった報復として、一族を惨殺され、復讐の鬼(“いや、これは復讐ではなく制裁だ!”と言っているが・・・)と化し、セイント一家とその組織に立ち向かう・・・。

 スパイダーマン等を創出してきたマーベルコミックスから誕生したヒーローであるだけに、ストーリーをあまり深く考えずに楽しむのがこのジャンルの観賞ルール。そう思ってみれば、主人公を演ずるトム・ジェーンはマスクもいいし、肉体もなかなかマッチョ(当時35歳)で、この種ヒーロー役としては及第点。 トラボルタのちょいと気取った悪役ももう堂に入ったもの。

ラストを見ればシリーズ化を予想させるが、4年後の「パニッシャー・ウオーゾーン」ではレイ・スティーヴンソンが演じている。素手で悪に立ち向かうだけに、コミックヒーローとしてはもう一つ馬鹿馬鹿しい迫力に欠け、主役の頑張りの割には人気が出ないのかも知れない。  

48、カイジ 人生逆転ゲーム   (5点)

2009年

原作/福本伸行、監督/佐藤東弥、出演/藤原竜也(=伊藤開司)、天海祐希(=遠藤凛子)、香川照之(=利根川幸雄)、山本太郎、松山ケンイチ、佐藤慶(=兵頭和尊)

 自堕落な生活を送っている主人公・開司=カイジが悪徳金融業の女社長・遠藤に借金のかたとして“人生逆転ゲーム”に送り込まれる。そこに待っていたものは・・・

 コミックの映画化というので、頭をカラッポにしてみましたが、まあまあ楽しめました。「人生逆転ゲーム」と謳うワリには、中盤までのゲームはそれほどでもなかったのですが(特に鉄骨渡りゲームのシーンは長すぎた)、最後の「Eカード・ゲーム」における主人公と敵役・利根川の応酬は見応えがあり、それまでのダレをかなり挽回。

尤も遠藤が、カイジが勝つという確たる根拠もなく仲間(利根川)を裏切って、何故カイジを助けるのか。ストリーの一つのキーポイントであるだけに、ちょっと不自然。兵頭も闇社会の巨魁にしては、たったの5億円(!)で我を忘れて激怒するとはみっともない!・・・といったところはちょっと残念な部分。

藤原竜也はテンションの高い熱演ですが、わめき過ぎて時々セリフが聞こえないのが難点。脇を固める天海、香川、佐藤のキャスティングは成功といえましょう。(佐藤慶はこれが遺作となりました)  

 

49、80デイズ  (7点)

2004年

監督/フランク・コラチ、出演/ジャッキー・チェン(=パスパルトゥー)、スティーヴ・クーガン(=フォッグ)、セシル・ドゥ・フランス、ジム・ブロードベント、アーノルド・シュワルツネッガー、キャシー・ベイツ、サモ・ハン・キンポー、オーウェン・ウイルソン

 ご存知ジュール・ベルヌの「80日間世界一周」のジャッキー・チェン・バージョン。そう認識して見れば70年代のシネマのように大らかで明るく馬鹿馬鹿しい面白さがイッパイで、意外と楽しめました。原作を踏まえつつ奔放に改編。ヴィクトリア女王(=キャシー・ベイツ」や印象派をおちょくっているところなんかも大胆です。

しかし、決して大プロヂューサー・マイケルトッドの56年版「80日間世界一周」のリメイクと捉えてはいけません!。あくまでもジャッキーの映画なのです。(製作総指揮も兼ねています)

 120億円の巨費を投じたと宣伝してますが、ホンマカイナ?。“弾丸ツアー”みたいな世界一周ダイジェスト版といった感じで、中国から日本に立ち寄ることなく一気にサンフランシスコに行ってしまうのは気に入りません。

カメオ出演の中ではトルコの王子に扮したシュワルツネッガーに笑えます。これぞシュワちゃんです。ヒロイン・モニク役のセシルはなかなか魅力的。ヒロインだけは56年版(=シャーリー・マックレーン)を越えているかもしれません。

 

50、ラブ アンド クライム (5点)

(2003年・劇場未公開)

監督/エリック・スタイルズ、出演/メラニー・グリフィス、レイチェル・リー・クック、ヒュー・ダンシー、マルコム・マクダウェル

パリで東南美術品の運び屋をしているサラと年下の愛人のジャック。サラは雇い主に内緒で仕事を引き受けた為、窮地に陥る。一方ジャックは彼女の不在中、街中でニューヨークから来た女の子ジェニーと知り合い愛し合うようになっていたが、サラを救うため女の子が務める宝石店から宝石を盗もうとする・・・

 メラニーのアンニュイな魅力とレイチェルの瑞々しく奔放な魅力の間で揺れ動くジャック・・・途中から救いの無い結末が見えてくるだけに、見ていてちっとも楽しみが湧いてこないのはエンタテインメントとして失格。最後のオチだけがちょっとひねりが効いているが、主人公たちの人物造形とともに全体も小粒で、なんでこんな作品を作ろうとしたのかその意図を疑う一編。

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