スペイン狂走曲
(走る、走る!スペイン2000qツアー記)
序 章
「今年の夏はスペインに行きたい!」と春先のある日、女房が言った。(何もヨーロッパのフライパンと言われる処に暑い時期に行かなくても・・・)と喉まで出かかったが、なにせ我が家においては女房のひと声は天の声である。(私にしてもスペインは未だ行ったことがないので・・・それもまあいいか!)と、我がご贔屓(ひいき)の新日本トラベルに照会したところ、例によってテンコ盛り日程(3食+昼寝付き)の8日間コースがあったので、早速申し込む。
予約金を払いこんで手配完了。あとは「このツアーはとにかく体力勝負だから、今から体を鍛えて置くように」と女房に言ってあったが、その後、体力増強どころか、彼女の体調がおかしくなり、病院へ。
場合によっては大手術の可能性も?ということで、とても旅行どころの話ではない・・・という、にわかに暗雲垂れ込めた状況に追い込まれた。――さいわい、精密検査の結果は問題なしということで、暗雲をば鎧袖一触、夫婦ともども先ずは一安心。
これでやっと“スペインモード”に入れるかと思った矢先の6月初めに、今度は「新日本〜」から「8/4は必要催行人数が集まりませんからツアーは中止にします」との連絡が入る。ああ!一難去ってまた一難である。
「どこか、ほかの所にしようか?」
「うぅ〜ん、やっぱりスペインがいい」
(女房はこれまで海外といえば、台湾、香港、韓国、グアム、サイパン、ハワイ、オーストラリアで、一度はヨーロッパへ行ってみたい。でも、イギリス・フランスは年をとっても行けるから、今のうちにスペインあたりへ行ってみたいのだと)
慌てて「エービーロード」で調べると、唯一「日本旅行」で、これと近い内容のツアーがあった。但し関西向けの商品で、出発は関空となっている。しかし、よく読むと関東人には羽田→関空は無料サービスとなっているので、それならまあいいかと早速電話を入れる。
「羽田発は早朝になる場合もありますよ。それに帰りは関空から伊丹に回ってもらうこともありますが、それでもよろしいですか?」と、もう殆んど脅し(?)のような応対であるが、これで怯(ひる)むわけにはいかない。
「結構です」と毅然(!)と答えて予約完了。
〜とまあ、安直なはずのパックツアー手配にもこうして紆余曲折があり、(いやあ、スペインへ行くのも結構オオゴトだなあ!)と痛感した次第である。
で、あらためてボチボチ“スペインモード”へ入り、インターネットで現地情報をチェック。先ず目に飛び込んできたのは「マドリードなどの大都市は危険、危ない。スリ、置き引き、かっぱらいが横行!」
そして「バッグは首掛けすると、そのまま引っ張られるから、かえって危険」、「悪い奴らに囲まれたら、抵抗しないで素直に有り金を差し出すこと」云々等々。
どのホームページを見てもこんな言葉で溢れており、「つい最近もプラド美術館の前で70万円スラれた人がいる」というような実例紹介もある。
おいおい、これは結構タイヘンだぞ、エジプトよりももっと難儀かもしれないよ・・・と言っていると、
出発前に添乗員の真鍋さんという人から電話があって、「貴重品の保管にはくれぐれも注意して下さい。
5月のエジプトのときも事前に添乗員から「暑さ、砂、水、蚊対策をしっかりして下さい」という注意があり、行ってみれば果してそのとおりであったので、真鍋さんの親切に感謝しつつも、危険のダメ押しを受けたみたいで、ズーンと気が重くなる。
女房は「あなた、朝の散歩は絶対にダメですからね。私、もう安全祈願に行っときます」、「そうね、そうしといておくれ」ということで、翌日女房は我が家の初詣コース=地元三神社から池上本門寺までお参りして、道中安全をお願いしてまわってきたということである。
現在日本からスペインへの直行便はない為、欧州のどこかを経由して行く。此の種パックツアーはどういうルートをどの飛行機で行くかは事前に分からないが、今回一週間弱前に届いた旅程表によると、
往き=関空(JAL)→フランクフルト(イベリア航空)→マドリード
帰り=バルセロナ(イベリア)→パリ《オルリー〜ドゴール》(JAL)→関空
出発日、7時羽田集合だというので6時過ぎに家を出る。VISA空港ラウンジで小休止してから登場口へ。離陸ラッシュで50分ほど出発が遅れた為、関空でゆっくりする余裕がなくなる。(でも3階食堂街でしっかりと“きつねうどん”を食べて小腹を満たす)宅急便で送っておいたスーツケースを受け取ると、あたふたと搭乗手続きへ。
添乗員・真鍋さんの周りに集まったツアー参加者は総勢30人。その2/3が女性。若い女性の二人連れが多い。スペインは彼女達を惹きつける何かがあるのかもしれない。今回一人旅はおらず、男性ではどうも私が最年長のようだ。(3人家族2組、我々を含めてカップル7組、女性5組)
12:05定刻で出発。機内はほぼ満員。我が夫婦は中央4人掛け席であったが、偶然横の窓側席が空いていたので、移ろうとするとタッチの差でその後の女性に取られてしまった。残念。と、CA(=キャビン・アテンダント)が「後のほうに少し余裕がありますよ」と教えてくれた。さっそく行ってみると中央席の2席が空いていたので小生のみそちらに移る。(もう、いつも二人一緒じゃないと・・・という歳でもないのだ)JALは前後左右座席間の余裕が少なく窮屈との定評があるが、これで長旅が少しは楽になった。(女房も横が空いたわけだから同感である)
北回り、窓の外は行けども行けどもシベリアの大地が果てしなく続く。私としては十数年振りに目にする景色だ。この間ソ連→ロシアと、その国家体制と社会は大きく激しく変化したが、悠久の大地は何事も無かったかのように荒涼広漠たる光景を広げている。
途中、機内食が2回と、リフレッシュメントとしておにぎり(又はペストリー)が出る。
昼食(夫婦とも和食をチョイス)
鶏きじ焼き丼、鮭マヨネーズフライ、厚焼き玉子、蒲鉾、干切大根旨煮、水無月豆腐、南京そば
和菓子(雪餅)・・・少量多品種であるが、皆上品な味付けで美味しかった。私としてはきのこ類
を豆乳ゼリーで寄せた水無月豆腐が特にグーであった。
夕食(洋食のみ)
ペンネ・ミートソース、カレー風味のマカロニサラダ、グレープフルーツゼリー、フルーツ、
ライロールパン・・・ペンネのミートソースは風味豊かで美味しく頂戴した。
17:25ほぼ定刻でフランクフルト到着。広いアトリウムから入る光で明るい我々の搭乗エリアの2階フードコーナーは広いスペースをマック(関西ではマクドか!)が独占し、大勢の客で賑わっている。この後スペイン各都市でも目抜き通りの角々にはマックの店が目立ち、マック帝国主義(?)を痛感するが、はて狂牛病対策はどうなっているのであろうか?(私が心配しなくてもいいが、藤田 田さんどうでしょうか?)
(フランクフルトの空港内にて)
イベリア航空便は2時間待ちのところ、更に約1時間遅れて20:30にようやく出発。満席。スペインの田舎のしっかり娘といった感じのCAのきびきびとした立ち振る舞いが好ましく感じられる。
2時間半ほどのフライトであるが、国際便とあってしっかり夕食が出る。こちらとしては殆んど動かずであるからもうほぼブロイラー状態であるが、到着後の食事はないので、無理して(?)おなかに詰め込む。 その内容
ラザニア、シュリンプサラダ、ケーキ、チーズ・・・ラザニアは結構美味しい。シュリンプサラダもいけると思ったが女房はマズイとの評価。JALのペンネにこのラザニアで、もうスペインというより、イタリアへ行ったような気分。