三日目 11月2日(日)

 

 なんと!、今日は快晴です。ブッフェで腹ごしらえをしたあとは、先ず総統府へ。事前のHP情報では、本日は3ヶ月に一度の「全館開放日」ということで、楽しみにしていたのですが、正門前に着いてみると、サイクリングの催しをやっているようで、「全館開放」の雰囲気はありません。身振り手振り+メモ書で係員に尋ねても「ノー」のジェスチャー。

    

 私としては納得出来ないが、とにかく開いてないものは仕様がない。切り替えの早いSとEは「じゃあ、天気のいいうちに101へ行こう!」ということで、急遽タクシーを捕まえて101へ。

   

 ショッピングビル入り口はオープンしているものの、9時半過ぎとあって各店舗は当然まだ営業前。広い館内をぐるりと廻って5階へ。しばし広大なアトリウムを見回していたEは、壁際下に目をやって、「スゴイ建築だけど、例えば、床と壁の繋ぎ目に隙間があるだろう。日本のゼネコンの工事だとこんな雑なことはやらないよ」と。流石、専門家の目の付け所は違うなぁ!と感心。

 10時に展望台入り口がオープン。この日の“一番客”でエレベーターへ。“世界最速”が謳い文句だけあって、アッという間に89階の展望フロアに到着。展望エリアに出ると、天気晴朗とあって眺めは抜群。360度の大パノラマを楽しむことができました。(事前の“品行方正”の効き目があったようです!)

    

 

中央の巨大な免振装置に目を奪われたあと、館内の階段を下りて88階にも行けるようになっている。“渡り廊下”はあたかも超高層の空中回廊を歩いているような床面デイスプレイの仕掛けになっており、そこを抜けると88階は1フロア全て珊瑚のショップになっている。

       

展望客は全て自動的に88階のこのショップへと流れる仕組みになっているのであるが、しかし、此処で高価な珊瑚の類を購入する客がいるであろうか?家賃も高いし、夥しい在庫負担だけでも大変だろうしなぁ・・・と他人事ながら心配になってしまう。

片隅にコーヒースタンドを見つけた。Lサイズで120元と、斯種場所にしては安い!、しかも意外にも薫り高くて結構美味しいコーヒーです。外の景色を眺めながら暫し休憩。

 12時を廻ったので、安直に地階の巨大フードコートで昼食をとることにする。(当初は総統府見物のあと、極品軒へ廻る予定であったが、B級、どころかC級路線になってしまった!)

 SとEは行列の出来る人気店(?)の港式鉄板焼。肉又は海鮮に焼野菜山盛りでボリューム満点。私は牡蠣麺線の店で麺線・青菜・厚揚の3点セット(100元と安い!)をトライ。安いけれども肝心の牡蠣麺線は質・量ともショボい。特にカツオ風味の汁は西門町の阿宗麺線(=こちらは牡蠣ではなくモツ入りですが)のそれとは格段の差で、改めて阿宗の人気の秘訣を納得。(もっともうちのカミさんは阿宗麺線を“こんなの、人間の食べものじゃない!”と酷評してましたが・・・)

     

 ちょいと(私だけは)不満の残る昼食を終えると、台北市政府正面ロビーを覘いて、101のベストショットが取れるという市議会前で記念撮影(時間的に逆光になって残念!)をしてから、国父紀念館へ。広場はちびっ子向けの催しで賑わい、手入れの行き届いた前庭の草花が華やかな彩りを添えている。(天国の孫文もこの平和な光景を喜んでいることだろう)

     

 館内で孫文ゆかりの品々を拝見。国父の書は端正で素晴らしく、その人柄を偲ばせる筆跡である。ここでも巨大な孫文像の前で、毎正時に行われる衛兵交替式を眺めたあと、MRTで台大医院前へ。

     

ここから突然の“土産品ツアー”へと変身!(=私が案内すると、“食品買出しツアー”となるが、二人には同調してもらうしかない・・・)

老人たちがのんびりと休憩する二二八広場を横切って、先ずは伍中行でカラスミをお買い上げ。(店のおかみさんからは、「ほたてもあるわよ。北海道産の極上ものよ!」と勧められたけど、それはねぇ〜・・・)

次に近くの城中市場へ。フルーツコーナーに目的の釈迦頭があったので、食べ頃のものを今夜の「夜食用(?)」にとゲット。(マンゴーが無い季節は、この釈迦頭がお目当てなんです!)Eはプラムのようなものを購入。

 その次はタクシーで李製餅家へ。ここはパイナップルケーキで有名(私は、粉っぽくてちっとも美味しいとは思わない)ですが、私の狙いは蛋黄酥(=塩卵黄を紅豆や緑豆の餡とパイ生地で包んだ饅頭)。我が家全員の大好物ですが、カミさんの友人からも“是非!”とリクエストが入っているのです。実証派のSは蛋黄酥と、棗餡月餅を各1個ずつ購入してその場で試食し、「卵饅頭はイマイチだが、月餅はうまい!」との評価。で、SとEは月餅をご購入。私が大量に買い込んだので、大袋を抱えてタクシーでホテルへ一旦帰還。

 小休止の後、台北へ来たからには一度はお参りしとかなくちゃあならない龍山寺へ。境内は日曜日午後とあって老若男女で大賑わい。あまりの雑踏に、日本人客を案内してくれるボランティアも姿を見せないようだ。例の“長〜〜い”お線香を買って、本堂とその裏の各お堂を丁寧にお参りして廻る。

     

 お参りを済ませると。ここから二人と別行動。私は、残りの買い物で、粽(ちまき)を求めて西門町の宏益へ。(駅からかなり距離があるので、流石にそこまで二人を引っ張るわけにはいかないのです) Sは「じゃあ、俺たち二人は、元祖摩天楼の新光三越へ寄って帰るよ」と。

 宏益の粽も我が家の大好物。ちょっと小振りになったような気がしないでもないが、値段は1個=40元と変わりなし。台北も来るたびに物価がじりじりと上昇しているのですが、此処は数年前から値上げ無しで頑張っているのは結構なことです。

 ホテルは台北車地下を出ると直ぐなので、MRTで移動するときは実に便利。荷物を置きに部屋に戻ってもまだ充分時間があるので、私も新光三越を覘いてみることにします。建物(新光保険大楼)そのものは“元祖・摩天楼”といった表現を納得の超高層ビルですが、百貨店部分は地下から12階まで。

正面玄関の二頭のライオンは堂々としていますが、ロケット型のビルなので、1フロアの面積が狭く、天井も低い。従って各フロアのディスプレイや品揃えも貧弱で、これはちょっと意外でした。台南の店舗は堂々の大百貨店という印象でしたが、こちらは時代遅れの二流店舗といった印象です。

 まだ時間があるので、昨年10月に台北車站の2階にオープンした微風広場へ寄ってみます。2800坪の巨大なフードコートです。真新しいだけあって、斬新なデザインのインテリアとディスプレイが目を惹きつけます。

そこに各種飲食店がずらりと出揃い、麺コーナーには、“キッチン・スタジアム”を連想させるような料理人の姿写真の幟を勢ぞろいさせるなど、食のテーマパークといった雰囲気を醸し出しています。折角なので(日本でいうなら麻布茶房みたいな店で)、紅豆豆花を頂きます。その後、帰国時のために、國光客運のバスターミナルの場所を確認してから帰館。

     

                                    (大好物の豆花です!)

さて、“最後の晩餐”は、Sがぜったい此処がいい!」とご推奨の欣葉本店へ。台湾料理の一番人気の店なので、昨日予約を入れておきましたたが、之が正解。広いフロア内は、ものの15分くらいで満席となった。我々が案内された奥の方は日本人専用コーナーなのか?数組の日本人グループで占められている。

商売繁盛で近年改装した結果か、清潔でモダンなインテリアに感心。「台湾料理店」ということで、例えば阿見飯店のような雰囲気を想像しているとイメージが全く異なって、ちょっとビックリである。

  

写真付きのメニューを見ながら、夫々の好みの品をオーダー。先ずはSが「トコブシの葱醤油炒」・・・柔らかくて噛むほどトコブシの旨みが広がリ、トコブシが大好物の私にとって文句なしの絶品です。「大根餅」、「烏賊団子」・・・プリプリのイカ団子の中に鶉の卵黄が入ってます。どちらも素材を生かした上品な味付けです。

紹興酒がススミます。「空芯菜炒」・・・Eは昨夜の天厨菜館でこれが“お気に入り”となり、必須メニューとなりました。ちょいとニンニクが多めですが、Eは「うん、ここのが上だな!」と言いながらパクつきます。

       

              (トコブシ)           (大根餅)          (イカ団子)

 次に「ハタの姿蒸し」・・・これは「時価」とあります。普段B級路線の私はちょっとひるみますが、Eが「いくら?」と尋ねると、テーブ付きのおばちゃんは「1,800元くらい」と。Eは「せっかくだから、いっちゃえ!」とオーダー。

 暫くして出てきたハタは想像していたよりちょっと小振りでしたが、淡白で上品な旨みがなんともいえない絶品です。私は頭の骨までしゃぶっちゃいました。それにしてもここの魚介類はネタが新鮮なのに感心します。

     

                 空芯菜)          (ハタの姿蒸し)       (カニおこわ)

 最後に「カニおこわ」を注文すると、おばちゃんは「12分待ってください。いいですか?」と。・・・じつは1品目は素早くでてきたものの、2品目以降が出るまで随分時間がかかって、「どうなってるの?」と、先刻、Eがちょいとクレームをつけた経緯があったのです・・・

 で、20分近く待って出てきた「おこわ」は、待ったかいがありました。程よく蒸し上がった「おこわ」と「子持ち渡り蟹」のバランスもよく、申し分のない美味しさでした。

 デザートの杏仁豆腐は此処独特の“もちもち感”が個性的な一品です。サービスの「きな粉餅」とお茶を頂いて、終了。出てきた料理が全て申し分なく、大満足の晩餐となりました。

     

 (お茶のポットが洒落てます)

 お後は、例によってウインザーへ直行。Eはなんと3夜連続!となります。Sの中国語とマッサージ嬢の日本語=お互いカタコトの掛け合い漫才を聞きながらの120分コース。3日間のハードスケジュールの疲れがほぐれて生きます・・・。

  すっかりリラックスしてホテルへと帰ってきましたが、このままお休み〜〜というわけにはいかない。明日の朝も過密日程なので、今夜のうちに帰り仕度が必要。買い込んだ品々のパッケージに一苦労。一段落したところで、昼間買ってきた釈迦頭を頬張る。熟しきって柔らかいので、ナイフがなくてもいいのは助かる。クリーミーで上品な甘さが堪えられません。

 (釈迦頭)

 

四日目 11月3日(月)

 

カーテンを開けると、今日はさすがに今にも降り出しそうな暑い雨雲に覆われている。起き上がるとこれから綿密に時間を計算したスケデュールの開始。先ずはブッフェレストランで、ケーキ風パン、フルーツ、コーヒーと軽めの朝食(珍しくも“軽め”なのは訳があります・・・)を済ませ、9時前に出発しタクシーで民主念館へ向かう。

生憎なことに左右の國家戯劇院國家音楽廳は大改装の真っ最中で、更に本殿も、その正面にコンサートの宴の後のような巨大鉄骨の骨組みがあって、壮麗な中華建築を期待して来たものの、これでは興趣をそがれること甚だしい。

陳水扁前政権の末期に、彼が台北市長(国民党)などの猛反対を押し切って、蒋介石を祀り、国民党にとって大陸復帰へのシンボル(と同時に“中国”による台湾統治の象徴でもある)ともいえる中正台湾民主念館と改称したのは、その最後っ屁にして、また、蒋介石一統への最大の皮肉でもあったかもしれない。

尤もMRTの駅名は「中正祀念堂」となっていたので、馬 英九政権になって素早く元に戻したのかと思ったら、御堂入り口上に高く掲げた額には「台湾民主記念館」と明記されてあった。

先の総統選と総選挙で圧勝した馬政権なのに簡単に旧に復することが出来ないのとは一寸意外です。馬総統の深慮遠謀なのか?、はたまた最近急速に支持率が落ちていることが影響しているのか?・・・。

     

蒋介石の巨大な銅像を守る衛兵はおらず、従って交代セレモニーも無いので、奥の展示室をじっくりと拝見。

カナクギ流の小生が言うのもなんですが、国父紀念館の孫文の端正にして格調高い筆跡と比較すると、蒋介石の書はちょっぴり劣るかなあと感じました。

     

 別室に行くと書道展をやってました。係りの女性の求めに応じて、Eはスラスラと署名。やはりなかなかの達筆です。私も求められたので、恥を忍んで筆を取りました。これがホントの“旅の恥は書き捨て”、否、“書き込み”です。

出口に近づくと、なんと外は土砂降りです。仕方が無いので、喫茶室で一休み。「杏仁茶」というお茶にトライ。白濁色で、杏仁の香り高い甘茶です。初めのうちは“なかなか美味しいねえ!”と啜っていましたが、次第に“どろり”としてきて途中から持て余してしまいました。

     

 小降りになったところで、門のところへ飛び出してタクシーを掴まえると目指すは鼎泰豊(本店)。(これが朝食を軽めにした理由です)

10時15分過ぎとあって、待つことなく3階席へと案内される。ミニスカートの若い女性たちが、きびきびと甲斐甲斐しく働いています。まずはEのリクエストで空芯菜。Eは3箇所食べ比べて此処がイチバンだとの評価。続いてお目当ての小籠包==薄皮を咬むと、アツアツのスープの旨みが口の中に広がって、文句なしの美味しさです。野菜餃子はまあまあ。最後の海老炒飯はプリプリの海老とあっさりした味付けのバランスが申し分ありません。

     

  

食べ終わると、タクシーでホテルへ取って返し、チェックアウト時限(=12時)少し前にホテルを後にします。

タクシードライバーは「空港まで1200元で行くヨ」と盛んに勧めますが、バスターミナルで降りて、國光バスで空港へ。50分ほどで到着。免税店へ向かったEと分かれてSと私は台湾土産店へ。Sは「お茶」が買いたかったようですが、タイミングよく、奥から可愛い小姐が「お茶は如何ですか?」・・・誘われるまま椅子に座って数品を飲み比べ。

今回Sは茶芸館でのまったりとしたひと時を希望していましたが、無粋な私と一緒ではその時間が無かったので、ここでちょっとしたその代償。おじさんのバカ話に応えて、小姐は愛想よく相手をしてくれます。「イ農 来」のおばちゃんから、この小姐まで、出会った台北の人たちはみな親切でありました・・・。           (完)

 

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あとがき

新聞によると、1月13日、台湾立法院は、民主記念館の名称を旧に復して、「中正紀念堂」とすることを多数決で決定したとのこと。議会は国民党が圧倒的多数を占めていますから、当然の帰結ですが、馬総統の命令ではなく、議会の決定としたところが、ミソかもしれません。

歴史は変えられないので、私は、陳前総統が名称変更に踏み切ったときに、非蒋介石を推進したいという気持ちはわかるものの、これはちょっと違うのではないかと思っていましたので、民進党が敗れた以上は仕方がないことかと感じます。

ともあれ、少し時間がかかるかもしれませんが、再び”台湾人による台湾人のための政府”が実現することを祈るばかりです。

 

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