ドナルド・プレザンス(DONALD
PLEASENCE)
1919年 イギリス生まれ、1995年没
日本での人気、市場性を重視した故か、日本ロケを敢行した第5作「007は二度死ぬ=You
only live twice」(監督・ルイス・ギルバート、出演・若林映子、浜美枝、丹波哲郎
)は異国情緒に流されて散漫な出来栄えとなったが、霧島火山のお釜の水面の下が実はスペクターのロケット基地であるという奇想天外な発想とか、ホテル・ニューオオタニを悪の一派、大里工業の本社に仕立てたとか、思わずニヤリとさせらるとともに、ロケハンの眼の付け所の良さには感心させられた。
これ迄スペクターの首領・ブロフェルドは、白猫を抱いた腕の周りとか声のみで、顔は出さずというまるでキリスト並みの扱いであったが(イエス様ごめんなさい!)、本作品で初めてその全身像が明らかとなった。果たして如何なる人物かと固唾を呑んで見つめれば・・・、な、なんとドナルド・プレザンスではないか!。小柄、スキンヘッドに神経質そうな目付…どう見ても悪の帝国のドンのイメージではないのだ。どうせなら、オーソン・ウエルズとか、他にもジョージ・ラフト、ロッド・スタイガー等適役はいくらでもいただろうに・・・。
プレザンスは54年にデビューしているが、脇役の彼が世に知られるようになったのは、63年「大脱走=The
Great Escape」(監督・ジョン・スタージェス、出演、スチーヴ・マックィーン、ジエームズ・ガーナー、リチャード・アッテンボロー、チャールズ・ブロンソン、ジェイムズ・コバーン)で仲間の偽パスポート造りに精を出す、気弱で神経質な贋作名人・コーリン役であろう。(余談乍ら88年に米のTVムービーに脱走の後日談を描いた「The
Great EscapeU:Untold story」というのがあって、前作の俳優から彼が只一人出演。但しなんとまぁ驚いたことに、捕虜を虐待するゲシュタボの隊長という役回りで登場している。)
95年フランスで76才の生涯を終えるまでに150本程の映画に出ているが、大半がB級で、ちょっとニヒルでクールな持ち味ゆえかトンデモ・ホラー物も多く、従って本邦未公開作が多い。まあA級(?)作品というのを拾っていくと、
・65年「ビッグトレイル=Hallelujah
trail」(監督・ジョン・スタージェス、出演・バート・ランカスター、リー・レミック…バート・ランカスターにしては例外的に珍しいコメディタッチの西部劇だ)、
・66年「ミクロの決死圏=Fantastic
voyage」(監督・リチャード・フライシャー、主演・スティーヴン・ボイド、
ラクエル・ウェルチ…卓抜のアイデアとそれを実現した映像美でSF映画史上ベストテンに入る傑作)、
・70年「ソルジャー・ブルー=Soldier
Blue」(監督・ラルフ・ネルソン、主演・キャンディス・バーゲン、ピーター・ストラウス)、
・76年「ラスト・タイクーン=The
Last Tycoon」(監督・エリア・カザン、出演・ロバート・デ・ニーロ、トニー・カ
・76年「鷲は舞い下りた=The
Eagle has landed」(監督・ジョン・スタージェス、出演・マイケル・ケイン、ドナルド・サザランド、ロバート・デュヴァル)あたりが挙げられる。
数少ない主演作としては、一時流行った殺人鬼ホラー物のハシリ、78年「ハロウイン=Halloween」(共演・ジェイミー・リー・カーチス)…これは低予算乍ら、鬼才・ジョン・カーペンター監督の演出が冴えて大ヒットしてシリーズ化され、95年の第6作まで作られた。プレザンスはドクター・サムエル・ルーミスとして、Bを除く全てに主演。しかしこれが彼の代表作と言われては本人も切ないであろう。
・81年「ニューヨーク1997=Escape from NewYork」(監督・ジョン・カーペンター、出演・カートラッセル、リー・ヴァン・クリーフ、プレザンス、アーネスト・ボ^−グナイン、ハリー・ディーン・スタントン)・・・超凶悪犯の監獄となったマンハッタン島に大統領専用機が墜落。凄腕の犯罪者スネークが向かう・・・。これぞカーペンターワールド!で、主人公スネークを演じたカート・ラッセルの出世作。プレザンスは大統領役。
そして92年「愛と戦火の大地=Dien
Bien Phu」(監督・ピエール・シェーンドルフェル、共演・パトリック・カタリフォ、リュドミラ・ミカエル)…これはヴェトナム独立戦争を描いた仏映画で130分を超える大作だ。
柄がスクリーンよりもむしろブラウン管に合う為か、TV作品も30本近くあるが、刑事コロンボ・シリーズの73年「別れのワイン=Any old port in a storm」(監督・レオ・ペン、主演・ピーター・フォーク)で、ワインを愛するゆえに殺人を犯したワイナリー経営者・エイドリアンを好演。演技者としての彼の良き持ち味が十二分に発揮されており、印象深い。これぞプレザンスの代表作ではなかろうか・・