エド・ハリス
(ED
HARRIS) 本名 Edward
Allen
Harris
1950年 アメリカ, ニュージャージー州生まれ
大柄でガッシリとした肉体の上に、頭髪が後退したエラの張ったデカイ顔が乗っかっており、「イカツイ」を絵に描いたような存在であるが、その演技力は侮れない。(因みに彼はコロンビア大出のインテリである)
前述のジョンと同じく善人と悪人を鮮やかに演じ分ける事ができる。ジョンがクールな演技派とすれば、エドはホットな演技派といえよう。
まず、善人の系譜で印象深いのが、94年「ミルクマネー=Milk
Money」の自然保護学者、トム・フィーラー役。なんともいえない善意と優しさそして子供への愛情を表現して、見る者の心に安らぎを与えてくれる。(監督・リチャード・ベンジャミン、共演メラニー・グリフィス、それに、まだ売り出し前のアン・ヘッシュが、悪漢の愛人の冴えない娼婦役で出ている) この作品はプリティ・ウーマンと同系列の作品であるが、それよりもややリアリティがあって上等の出来栄えといえよう。又、堅物のエド先生の心に仄(ほの)かな恋の灯をともさせる、メラニーの娼婦役もなかなかに魅力的である。続いて信頼感溢れる役処といえば、なんといっても
・95年「アポロ13」(シニーズの項で掲出)のジーン・クランツ地上管制官があげられる。(・・・なんとしてもアポロ13の飛行士達を生還させるのだと、不撓不屈の精神で地上スタッフを引っ張り、死力を尽くす様は感動的であった)
更に遡れば、
・83年「ライトスタッフ=The
Right Stuff」(監督・フィリップ・カウフマン、主演・サム・シェパード、スコット・グレン・・・NASA飛行士達とその家族の物語をドキュメンタリ−タッチで描いた佳作)の宇宙飛行士ジョン・グレン役
・89年「アビス=Abyss」
(監督・ジェームズ・キャメロン、主演・エド、メアリー・エリザベス・マストラントニオ・・・水中生命体=エイリアンのSFXが見事であったのみの、キャメロン監督としては大ファールといった作品、でもよほどこの作品に愛着があったか、93年に結末を変えた完全版を出している!) の原潜救出チームリーダー、ヴァージル・ブリッグマン役
・93年「ザ・ファーム/法律事務所=The
Firm」(監督・シドニー・ポラック、主演・トム・クルーズ、ジーン・ハックマン、ジーン・トリプルホーン・・・名手ポラックも、グリシャムの原作に負けたか、演出の切れ悪く、肝心のサスペンス度今一つであった) のFBI捜査官、ウェイン・タランス役あたりが挙げられよう。
こうした善人を好演するから、一旦悪役に廻った時のホットな切れ味が又一段と冴えるのだといえよう。その悪役で出色なのが
・95年「理由=Just
Cause」(監督・アーネ・グリムシャー、主演・ショーン・コネリー、ローレンス・フィッシバーン,ケイト・キャプショー)の死刑囚、ブライアー・サリヴァン役で、恐怖の連続殺人魔になりきった狂気の演技は、観る者の背筋を凍らせるような凄まじいばかりの迫力がある。 更に、
・95年「ニクソン=Nixon」
(監督・オリヴァー・ストーン、主演・アンソニー・ホプキンス・・・私ならニクソンにはジャック・ニコルソンのほうがより適役だと思うがなあ・・・)の、ウオーターゲイトビル侵入実行犯、ハワード・ハント役。尤もこれは、実在の元CIA工作員であるハントその人が、恐――い存在であるといえよう。
最近では
・96年「ザ・ロック=The
Rock」(監督・マイケル・ベイ、主演・ショーン・コネリー、ニコラス・ケイジ)のフランシス・ハメル将軍役・・・国の為に殉じた兵士やその家族の犠牲を省みない国家権力に鉄槌を下す為、シスコスコとその市民を人質にとって究極の賭けに出る、確信犯の軍人を演じて強烈な印象を残している。
彼の俳優人生を振り返ると、
・78年「コーマ=Coma」(監督・マイケル・クラントン、主演・ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド、マイケル・ダグラス、リチャード・ウィドマーク)の患者という、ほんの端役でデビュー。ところが、
・80年「Borderline」(監督・ジェロルド・フリードマン、主演・チャールズ・ブロンソン)を経て、僅か3本目の
・83年「ナイトライダーズ=Knight
riders」(監督・ジョージ・A・ロメロ)で、早くも主役を張っている!
・83年[Under
Fire](監督・ロジャー・スポティスウッド、主演・ニック・ノルティ。ジーン・ハックマン)
・84年「プレイス・イン・ザ・ハート=Place
in the heart」(マルコヴィッチの項で掲出) 尚、余談乍ら、エドは本作品で共演した(=不倫相手という役処)エイミー・マディガンと結婚している。
・84年「Swing
Sift」(監督・ジョナサン・デミ、主演・ゴルディ・ホーン、カート・ラッセル)
・85年「Sweet
dreams」(製作・トニー・カーティス!、監督・カレル・ライス、主演・ジェシカ・ラング、エド)
・85年「Codename Emerald(監督・ジョナサン・サンガー、主演・エド・ハリス、マックス・フォン・シドー、ヘルムート・バーガー、ホルスト・ブップホルツ・・・連合軍とドイツのスパイ・アクション)
・85年「アラモベイ=Alamo
Bay」(監督・ルイ・マル、主演・エイミイ・マディガン、エド)
・87年「The
Last Innocent Man」(監督・ロジャー・スポテスウッド、主演・エド、ロクサーヌ・ハート)
・87年「ウオーカー=Walker」(監督・アレックス・コックス、主演・エド、マーリー・マトリン、ピーター・ボイル)・・・1855年、ニカラグアを50人余りの手勢で制圧したものの、あまりの独裁振りに僅か2年で追放され、最後はホンジュラスで銃殺刑となった、ウイリアム・ウオーカーの数奇な人生をエドが熱演。
・88年To
kill a Priest」(監督・アグニエシュカ・ホランド、主演・クリストファー・ランバート、エド、ティム・ロス)・・・エドは職務に忠実なポーランド秘密警察主任・ステファン役
・89年「ジャックナイフ=Jack
knife」(監督・デヴィッド・ジョーンズ、主演・ロバート・デ・ニーロ、エド、キャシー・ベイカー・・・ヴェトナム戦争の影を引きずる3人の葛藤劇。
・90年「パリス トラウト=Paris Trout」(監督・スティーヴン・ガイレンハール、主演・デニス・ホッパー、エド、バーバラ・ハーシー)・・・ここではパリス=ホッパーの狂気の演技(=後述)が出色で、エドは弁護士役。
・90年「ステート・オブ・グレイス=State
of grace」(監督・フィル・ジョアノー、主演・ショーン・ペン、エド、ゲイリー・オールドマン)・・・エドは自己の保身の為なら実の弟も殺してしまう、アイリッシュギャング組織の非情な(そして実は小心な)リーダー役。
・92年「摩天楼を夢みて=Glengarry
Glen Loss」(監督・ジェームズ・フォーリー、主演・アル・パチーノ、ジャック・レモン、アレック・ボールドウィン、エド、アラン・アーキン、ケヴィン・スペイシー、ジョナサン・プライス)・・・芸達者な役者達を揃えて、ニューヨークの不動産セールスマンの攻めぎあいを描く。
・93年「ニードフル・シングス=needful
Things」(監督・フレイザー・C・ヘストン、主演・マックス・フォン・シドー、エド)・・・スティーヴン・キング原作のホラー、エドは謎の老人(=シドー)に対する保安官役。( 尚余談乍ら、フレイザー監督はチャールトン・ヘストンの息子で、遥か昔の「十戒」に幼いモーゼ役として出ている。今や全米ガン(=銃)協会の会長で、コチコチの保守=タカ派として鳴らすヘストンも結構親バカであった訳だ・・・。)
・94年「チャイナムーン=China
Moon」(監督・ジョン・ベイリー、主演・エド、マデリーン・ストウ)・・・ここではストウの悪女ぶりがなかなかのもの。
・96年「Eye
for an Eye」(監督・ジョン・シュレシンジャー、主演・サリー・フィールド、エド、キーファー・サザランド)
・97年「目撃=Absolute
Power」(製作・監督・主演クリント・イーストウッド、共演・ジーン・ハックマン、エド
・98年「グッドナイト・ムーン=Stepmom」(監督・クリス・コロンバス、主演・ジュリア・ロバーツ、スーザン・サランドン、エド)・・・エドは先妻と新妻の間で・・・という役
・99年「トゥルーマン・ショー=The
Trueman Show」(監督・ピーター・ウイアー、主演・ジム・キャリー、エド・・・エドは奢りと狂気のTVプロデューサー役。)
と、ほのぼの善人からアクの強い人物まで演じ分けて、八面六臂の大活躍を続けている。