フェルナンド・サンチョ FERNANDO SANCHO                 

1916年 スペイン・アラゴン州生まれ  1990年マドリードにて逝去

 マカロニの悪役といえば忘れてならないのがこの人。太っちょで傍若無人な山賊の大将といえば、彼の極めつけの役どころ。極悪非道のワルでありながら、どことなく憎めないのも又彼の持ち味。名前のとおりスペイン人で、スペイン映画で生涯を通したが、そんな彼がマカロニで名を馳せたのは、マカロニウエスタンのほとんどがスペインで製作されたことによる。

 1944年にデビュー以降、46年間でなんと200本を超える映画に出演。スペイン映画以外にもサミュエル・ブロンストン製作の「キング・オブ・キングス」(=狂人役)や「北京の55日」(=ベルギーの大臣)、あるいは「アラビアのロレンス」(=アラブ民族衣装を着たロレンスをしょっ引く、トルコ軍の軍曹)・・・と、大作の端役なんかにも出演しており、その個性的な風貌で業界で少しは知られた存在であったと推測される。

 マカロニウエスタンにおいては、ごくごく初期の段階から登用されており、出演数は優に40本を越えている。おそらくマカロニ最多出演記録保持者に違いない!(面白いのは多くで”サンチョ”という役名で登場することだ。)、そしてその最初が〜〜

・64年「ミネソタ無頼=Minnesota Clay」(監督・セルジオ・コルブッチ、出演・キャメロン・ミッチェル、ジョルジュ・リヴィエール)・・・ミッチェル演ずる殆ど盲目という主人公が暗闇の中で敵と対峙し、マカロニ版座頭市と話題を呼んだ作品。サンチョはメサの町を支配せんとする山賊オルチス役。

・65年「さすらいの一匹狼=Per Il Gusto Di Uccidere」(監督・トニーノ・ヴァレリー、出演・クレイグ・ヒル、ジョージ・マーティン)・・・移送金を護衛する賞金稼ぎランキー・フェローの活躍。サンチョはやっぱり、銀行を襲う盗賊の頭・サンチェスという役処。

・65年「ワイアット・アープ=Gunmen of the Rio Grande」(監督・トゥリオ・デミケリ、出演・ガイ・マディスン、マドレーヌ・ルボウ、サンチョ)・・・酒場の女主人の依頼でリオ・グランデの町にやってきたアープが悪党どもを退治する。サンチョは山賊の親分パンチョという役柄。ところがこのパンチョは強い者に憧れを抱き、アープの味方をするというから、極悪非道とはちょいと趣を変えている。クレジット順も第2位と、強烈な悪党ぶりに人気が出てきたことを窺わせている。

・65年「夕陽の用心棒=una Pistola per Ringo」(監督・ドゥッチオ・テッサリ、出演・モンゴメリー・ウッド=ジュリアーノ・ジェンマ、サンチョ、ニエヴェス・ナヴァーーロ、ジョージ・マーティン)・・・ハリウッド風にM・Wの名前で出たジェンマの記念すべきマカロニ初主演作で、身のこなしも軽やかに、銀行強盗をはたらき追われた挙句、農園の一族を人質にして立て篭もった野盗一味を退治する早討ちリンゴを颯爽と演じている。で、サンチョはというと、この盗賊団の親分。粗野で、上腕部に銃弾が入ってもなんともないという(!)タフネス振りで、傍若無人な悪玉の面目躍如。超色っぽい情婦が人質の牧場主と仲良くなっても、ネチネチと嫉妬せず、ひたすら脱出、そしてリンゴとの闘いに熱を上げる真面目な(?)悪党振りがいい。

・65年「L'uomo che viene da Canyon city」(監督・アルフォンソ・バルカザール、出演・ロバート・ウッズ、サンチョ)

・65年「I due sergenti  del generale Custer」(監督・ジョルジオ・シモネリ、出演・フランコ・フランキ、シシオ・イングラシア、サンチョ)

・65年「Due mafiosi nel Far West} (監督・ジョルジオ・シモネリ、出演・フランコ・フランキ、シシオ・イングラシア、サンチョ)

・66年「Sette pistole per i MacGregor」(監督・フランコ・ジラルディ、出演・ロバート・ウッズ、サンチョ、アガタ・フローリ)

・66年「Per il gusto di uccidere」(監督・トニーノ・ヴァレリー、出演・クレイグ・ヒル、ジョージ・マーティン、サンチョ)

・66年「L'uomo dalla pistola d'oro」(監督・アルフォンソ・バルカザール、出演・カール・モヘネー、ルイス・ダヴィラ、サンチョ)

・66年「La resa del conti 」(監督・セルジオ・ソリーマ、出演・リー・ヴァン・クリーフ、トーマス・ミリアン、サンチョ)

・66年「Sette magnifiche pistole」(監督・ロモロ・グエリエリ、出演・ショーン・フリン、サンチョ、アイダ・ガリ)

・66年「Sette doralli sul rosso」(監督・アルベルト・カルドーネ、出演・アンソニー・ステファン、エリサ・モンテス、サンチョ)

・66年「Dinamite Jim」(監督・アルフォンソ・バルカザール、出演・ルイス・ダヴィラ、サンチョ)

 =以上原題表示は本邦未公開作品(以下同じ)=

・66年「禿鷹のえさ=7 Guns for MacGregors」(監督・フランコ・ジラルディ、出演・ロバート・ウッズ、サンチョ、アガタ・フローリー)・・・メキシコ国境近くで牧場を営む老マクレガーの7人の息子は皆うでっぷしが強く、一家を狙った山賊一味をコテンパンにやっつけるというストーリー。

・66年「地獄から来たプロガンマン=Seven dollars to kill」(監督・アルバート・カーディフ、出演・アンソニー・ステファン、サンチョ、ジェリー・ウイルソン)・・・幌馬車隊のガイドをしている留守中に山賊一味に妻を殺され幼い息子をさらわれたジョニーは、仇を探して西部をさまよい、20年が経過。そしてウイッシュビルの町で運命の対決をする。・・・サンチョは、やはり山賊の親分・サンチョ役。

・66年「荒野の10万ドル=100,000 dollari per Ringo」(監督・アルベルト・デ・マルティーノ、出演・リチャー・ハリソン、サンチョ、エレオノーラ・ビアンキ)・・・悪党一味が勢力を張るメキシコ国境を舞台に、早射ちの流れ者リンゴが、賞金稼ぎを仲間にして、悪党一味に牧場を奪われた男の遺児を助け、一味と対決する。・・・サンチョはなんと珍しや、主人公に味方する賞金稼ぎ役。

・66年「殺し屋がやって来た}=the Man who came to kill」(監督・アルフォンソ・バルカザール、出演・カール・メーナー、ルイス・ダヴィラ、グロリア・ミランド、サンチョ)・・・お尋ね者と賞金稼ぎがバルドサスの町で保安官とその助手になり、悪徳町長の尖兵を果たす凶暴なパブロ(=サンチョ)一味と闘う〜〜という、ちょっとひねったストーリーで、サンチョは凶悪振りを存分に発揮!

・66年「南から来た用心棒=Arizona Colt」(監督・ミケーレ・ルーポ、出演・ジュリアーノ・ジェンマ、コリンヌ・マルシャン、サンチョ)・・・盗賊「皆殺し団」の首領ゴードン(=サンチョ)は国境に近い牢獄を襲い囚人達を手下に補充。唯一人これを拒否した用心棒家業のアリゾナ・コルト(=ジェンマ)はやがてブラックストーンヒルの街でゴードン等と対決する・・・いつもちょっと抜けたところのある悪党を演じるサンチョが、ここでは極悪非道の残虐極まりないボスといった役どころ。

・66年「続・荒野の1ドル銀貨=IL Ritorno di Ringo」(監督・ドゥッチオ・テッサリ、出演・ジュリアーノ・ジェンマ、サンチョ、ジョージ・マーティン、ロレッラ・デ・ルーカ・・・ジェンマの出世作の続編的(?)作品で、何が「的」かというと、舞台が同じく南北戦争後の西部ということ。〜戦争後帰ってみると、懐かしの故郷がメキシコの夜盗に支配され、全てを失った男・リンゴの壮絶な復習譚。サンチョは勿論盗賊の親玉エステバン役。

・67年「Wanted Johnny Texas} (監督・エミーモ・サルヴィ、出演・ジェイムス・ニューマン、サンチョ、モニカ・ブラガー)

・67年「Clint el solitario」(監督・アルフォンソ・バルカザール、出演・ジョージ・マーティン、マリアンヌ・コッフォ、サンチョ)

・67年「Voltati .... ti uccido」(監督・アルフォンソ・ブレソイア、出演・リチャード・ワイラー、サンチョ、エレオノラ・ビアンキ)

・67年「Killer Kid」(監督・レオポルド・サヴォーナ、出演・アントニオ・デ・テッフェ、ルイサ・バラト、サンチョ)

・67年「un Hombre y un colt」(監督・トゥリオ・デ・ミケーリ、出演・クラウディオ・ウンダーリ、サンチョ)

・67年「二匹の流れ星=10,000 Dollari per un Massacro」(監督・ロモロ・グエリエリ、出演・ゲイリー・ハドソン、ロレダーナ・ヌアシク、サンチョ)

・67年「地獄のガンマン=Odio per Odio」(監督・ドメニコ・パオレラ、出演・アントニオ・サバト、ジョン・アイアランド、サンチョ、ナヂア・マルコーニ)・・・サバトとアイアランドの二人芝居で、ここでのサンチョは悪の親玉でもなく、影が薄い

・67年「西部のリトル・リタ〜踊る大銃撃戦〜=Rita nel West」(監督・フェルナンド・バルディ、出演・リタ・パヴォーネ、テレンス・ヒル、ルチオ・ダルラ、サンチョ)・・・これぞ珍品、なんとマカロニ・ミュージカルなのダァ〜!

・68年「復讐のガンマン=the Big Gundown」(監督・セルジオ・ソリーマ、出演・リー・ヴァン・クリーフ、トーマス・ミリアン、サンチョ、ニエヴェス・ナヴァロ)・・・リーの項で掲出。これもリーとトーマスの二人芝居で、サグラ大佐役のサンチョは大悪党でもなく、存在感に乏しい。

・68年「Tuto per tuto」(監督・ウンベルト・レンジ、出演・ジョン・アイアランド、マーク・ダモン、サンチョ)・68年「Se incontori Sartana prega per la tua morte」(監督・ジャンフランンコ・パロリーニ、出演・ジャンニ・ガルコ、クラウス・キンスキー、サンチョ)

・68年「Requiem para el gringo」(監督・エウゼニオ・マーテイン、出演ラン・ジェフリーズ、フェミ・ベナスル、サンチョ)

・68年「Hasta la ultima gota de sangre」(監督・アルベルト・カルドーネ、出演・モンゴメリー・フォード、ダナ・ギア、サンチョ)

・68年「Cicio perdona ・・・Iono!」(監督・マルチェロ・ジオルシオリーニ、出演・フランコ・フランキ、シシオ・イングラシーア、サンチョ)

・68年「Carogne si nasce」(監督・アルフォンソ・ブレシア、出演・グレン・サクソン、ゴードン・ミッチェル、サンチョ)

・70年「Farajidos implacables」(監督・アルベルト・カルドーネ、出演・ブレット・ハイゼイ、ゲルマーノ・ロンゴ、サンチョ)

・70年「la Diligencia de los condenados」(監督・ジュアン・ボッシュ、出演・リチャード・ハリソン、サンチョ)

・71年「abre tu fosa ,amigo,llega Sabata」(監督・ジュアン・ボッシュ、出演・リチャード・ハリソン、サンチョ)

・71年「el Mas fabuloso golpe del Far-West」(監督・ホセ・アントニオ・デ・ラ・ローマ、出演・マーク・エドワーズ、サンチョ)

・72年「los Buitres cavaran tu fosa」(カントク・ジュアン・ボッシュ、出演・クレイグ・ヒル、サンチョ)

・72年「la Caza del oro」(監督・ジュアン・ボッシュ、出演・タニア・アルバラード、アンソニー・ステファン、サンチョ)

・72年「los Fabulosos de Trinidad」(監督・イグナシオ・イクイーノ、出演・リチャード・ハリソン、サンチョ)

・72年「il Ritorno di Clint il solitario」(監督・アルフォンソ・バルカザール、出演・ジョージ・マーティン、クラウス・キンスキー、マリナ・マラファッチィ、サンチョ)

・72年「Tutti fratelli nel west...per parte di padre」(監督・セルジオ・グリエコ、出演・アントニオ・サバト、サンチョ)

・72年「Lo credevano uno stinco di santo」(監督・ジュアン・ボッシュ、出演・アンソニー・ステファン、ダニエル・マーティン、タニア・アルヴァラード、サンチョ)

・72年「una Cuerda al amanecer 」(監督・マニュエル・エステバ、出演・ピエール・ブリス、スティーヴン・テッド、サンチョ)

・72年「」(監督・アルフォンソ・バルカザール、出演・ジョージ・マーティン、ヴィットリオ・リチェルミイ、サンチョ)

・73年「Storia di karate ,pagni e fagioli 」(監督・トニーノ・リッチ、出演・ディーン・リード、クリス・フエルタ、サンチョ)

・74年「il Figlio di Zorro」(監督・ジャンフランコ・バルダネーロ、出演・アルベルト・デラクア、サンチョ)

・75年「il Mio nome e Scopone e faccio sempre cappotto」(監督・ジュアン・ボッシュ、出演・アンソニー・ステファン、サンチョ)

  記録で分かる限り、この作品が、実に50本近くに上った彼のマカロニウエスタン作品の最後を飾る(?)作品。〜〜まさにマカロニの生きた歴史であったわけであるが、ウエスタンの他にアクション活劇やコメディも多い。そういえば太っちょのサンチョは悪役を演じていても何処と無くユーモラスで、同時代の日本の名悪役、「うるへえ、野郎ども、たたっ斬っちまえ!」の上田吉二郎と相通じるところがある。いやまあ、それにしてもスゴイ出演数。65年=15本、66年=14本、67年=11本、68年=10本・・・東映チャンバラ映画全盛時代(「第二東映」なんてのまであった!)の悪役・吉田義夫や原 健策だってこんなには出てなかったゾ!とあらためて脱帽&最敬礼!

 こうしてマカロニブームの去った後も母国に腰を据えて、なお30本以上の作品で活躍をした。最後の作品が「ホラーもの」で、

・89年「la Luna negra」(監督・イマノル・ウリベ、出演・リディア・ボッシュ、フェルナンド・ギレン、ホセ・コロナド、サンチョ)という作品。

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